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■「GALVA INVASION」第8ターン 全体イベントシナリオ 後半パート リプレイ

●常識を超えた患者達

 陽清掛りつけの病院。そこへ涼村シンジ(ja0931)は人間ドック。
 身体検査の時のお騒がせな一騒動の後、採血やレントゲンなど一通りこなし医者に検査結果を聞くと、なぜか押し黙る医者。
「‥‥あなたの身体はもしかしたら難病に侵されているかもしれません。時間的な余裕がありましたら入院して精密検査をする事をお勧めしますが」
 ありがたく片方のベッドは空きの二人部屋で寝転んでいると防護服に身を包んだ集団が現れシンジをくくりつけて輸送して行く。
「シーツは焼却。消毒液噴霧急いで下さい」
「申し訳ありません、あなたには伝染病の疑いがあります。精密検査が終了するまでこちらの隔離病錬で過ごしていただく事になります」
 と説明する防護服の男。
 本当に病棟なのかと疑うほど頑丈な扉の中、シンジに入る通信。
 相手は真紅忠志(ja2281)だった。
「いやあ。レントゲン取ったら絶対安静を言い渡されましたよ〜」
 潜入組は2人して隔離病棟に。

●サプライズ準備

 ここはとあるイベントホール。陽清のライヴに参加する事になったザ・モンスターズの面々が、かっちりとメイクを終えてスタッフと打ち合わせを開始する。照明の合わせもあるので衣装や化粧はこの時点で決めておかないとならないのだ。‥‥まあ、ドラム担当のブラッドピジョンの事を考えると非常に好都合な訳であるが。
「あー、えっと、こちらの新曲は確認していただけましたー?」
 吸血鬼モチーフの衣装に身を包んだキーボード担当Kisara(如月・達哉(ja1314)、中身は立派な男の子)がヘッドマイクを通して舞台監督へ質問する。即座に片耳へ
「確認済みでーす」
 とのお言葉が返ってきた。ならば陽清と共に合わせる練習も出来る。彼が用意したのはデュエット曲で、本番まで歌のリハ無しは流石に無謀だ。Kisaraはほっと息をつく。
 2曲ばかり音出しをしていたところへ、スタッフの声が上がる。
「陽清さん入りまーす!」
「おはようございまーす!」
 話を聞けば医者に行っていて到着が遅れたらしい。アーマー風の衣装を着けたRi‐yeこと酉家・甲(ja1809)が声をかけた。
「おはようございます。私達の曲を本物の陽清さんに歌ってもらえるなんて‥‥感激です!」
「こちらこそ。まさかご本人達の演奏で歌えるなんて! 新曲も素敵な曲でしたー。今回のライヴ、よろしくお願いします!」
 硬く交わされる握手。他のメンバー達とも握手を交わし、ライヴのリハーサルが始まる。

「お疲れ様でしたーっ!」
「本番でもよろしくお願いしまーっすっ!」
 ほぼリアルと同じリハーサルに若干の修正を含めて数時間。濃密な時間を過ごした陽清は汗を拭き拭き帰路へつく。彼女がライヴ会場となるホールを後にした事を確認すると、スタッフ他一同急いで新たなリハーサルの準備が始まる。モンスターズのマスコットとして参加している波男(ja2108)が残っているスタッフ達にねぎらいの声をかけた。
「サプライズも大変ですね。お疲れ様です」
 当日の観客だけでなく、陽清にも秘密のゲストがいるのだと言う。汗を拭き水分を補給し、一息ついたモンスターズの面々の前に現れたのは‥‥
「おはようございまーっす! 武曲罠兎(ja1374)です、よろしくおねがいしまーっす♪」
「‥‥あ、え、おはようございまーす!」
 罠兎が舞台監督達と打ち合わせしている間。
(‥‥ジャスティス‥‥ですよね〜?)
(ジャスティス‥‥ですねぇ‥‥)
 舞台後方、ドラムセット付近でピジョンと波男がひそひそ話。
(我々が見張っている以上、おかしな事は出来ないと思いますが‥‥)
(一応警戒はしておくに越したことないでしょうね)
 あっさり正体の割れてしまった罠兎。これが、表裏共に有名どころの辛いところである。更に罠兎の目論見は彼女の予想外な所で外れて行く。
「んー、流石に陽清さんの曲だけでメドレーは難しいですねぇ。罠兎さんの曲と陽清さんの曲をメドレーでつなぐのは拙いですか?」
 西洋甲冑モドキの意見に女吸血鬼と演出監督が賛成する。基本的に陽清の現在の持ち歌はほぼ全て歌わなければいけないのだ、メドレーにするほど曲の余裕はない。本来歌う予定の数曲を削り罠兎の曲と組み合わせ、十二分ほどのメドレーにして行く。楽器隊の真剣な打ち合わせ姿に本来の目的を口に出せなくなった罠兎。いや、まさかバックバンドがジョーカーばかりだとは思ってもみなかったと言うのもあるのだが。
(‥‥むうう、陽清の応用力を見ようと思って飛び入りしたのに、コレじゃ普通のメドレーじゃないですかー! それにドラム担当、よく見ればブラッドピジョンそのものだし。って事は他のメンバーも全員ジョーカー?!)
 思った事を顔に出さず営業スマイルを続けるその姿。アイドルとして立派な姿である。
 そんなこんなでサプライズの準備をしながら、この日の夜は更けて行った。

●偽者? 本物? それが問題だ。

「ううむ‥‥。 現時点で陽蔓殿が本物かどうか判断するのは難しいか‥‥」
 軽く腕組みをしつつ、寒来・玲那(ja1555)は溜め息混じりにもらした。
 とすると、と意識を切り替えた松戸大雅(ja1828)もまた、難しい顔だ。
「やっぱそーなるとドンキーの発言権を抑えるべきやねぇ。具体的にどーするかやけど‥‥」
 だが、これに対する玲那の返答はごくアッサリとしたものだった。
「何、簡単なことだ。ドンキーのマスコミ宣伝はほぼ陽清殿が委ねておる。そこを抑えればいい」
「いやぁ。それが難しいゆーてんのよ? そうなると陽清はんをなんとかして抑えるぐらいしか‥‥」
 手が無いんやない? 大雅がぼやく前に玲那が意味ありげに笑った。
「あるいは。お主が陽清殿以上のスターになることだな」
「いいっ!! あんた‥‥。 そんな簡単にゆーて‥‥」
 その言葉に大雅は思わず素っ頓狂な声を上げてから。
「‥‥。ま、それも悪くないかもねぇ‥‥」
 満更でもなさそうにそう、呟いた。
(‥‥。おだてやすい奴じゃのぅ‥‥)
 そんな大雅を見つめ、玲那はただ口の端を釣り上げたのだった。


●征け! チーム『ハンズ』

 視界の通らぬ密林地帯。
 一度、その地を訪れ立ち回ったワイルドカード達だが、変身した臨戦態勢で再度その地へと足を踏み入れていた。
「ガキンチョも、ゲリラも殺すな、ね。ま、その方針に従っておきますか」
 少年兵の救出、そしてゲリラの捕縛を目的に立ち上げられたチーム『ハンズ』
 ジャスティスの有志により設立されたそのチーム、唯一のジョーカー陣営からの参加者である霧の朧(ja2139)が誰にも聞こえぬよう、小さく呟く。
「協力に感謝する。以前捕らえた相手から、ある程度の情報は聞き出しているから、前ほどは手こずりはしない」
 そんな彼に声をかけたのは、今回チームを発足させたデスペラード(ja0136
 発起人である彼を中心とし、集まった面々はそれぞれの役割を確認。
 情報面でのサポート要員、戦闘面での突撃要員、少年兵の保護要員と役割を分担し、確実に成功させるべく歩を進める。
「なるほど、ジャスティスは少年兵救出に力を割くか。まあ、それが俺にとって有益なら手を貸すが‥‥」
 そんな光景を陰に隠れて見守っていたのはG=ヒドラ(ja1823
 利害さえ合えばジャスティスとの共闘も視野に入れた彼にとって、今はまだ手を出すときではない。
 複数存在するゲリラの中で当たりを引き当て、その上で最も有益な行動を起こす、それこそが彼の目的でもあるのだ。
 チームとして機能するジャスティス、個人で動くジョーカー。
 それぞれの思惑が渦巻く中、再度密林へ銃声が響く事となる。

「がお、ファナ達、強いけれど、敵違う‥‥」
 銃口を向け迫る少年兵を前にパラダリス(ja1764)が必死に訴えるも、その訴えを聞かず少年兵は引き金を引く。
 その行動は洗脳かそれとも狂信からか、一切の迷い無く放たれた銃弾がパラダリスの体を傷つけるも彼女は即座に肉体再生。
 力の差を見せつけ、武器を破壊し戦意を喪失させようと動く彼女を援護すべくさらに幻影戦忍・影法師(ja1023)も突撃。
 翳した盾で全ての攻撃を防ぎつつ肉薄、少年兵の持つ武器を一刀両断し、動揺した他の少年にはパラダリスが接触し武器を強引に奪い取る。
 圧倒的な力の差。それを目の当たりにし少年兵達に動揺が走り、空気が変わる。
 だが、その動揺を感じつつも指揮する男は戦闘の手を緩めぬよう少年兵へと命令を下し、自身は下がろうと試みるも直後、体の自由を奪われその場へと倒れ伏す。
「そう簡単に逃げれると思わないで欲しいですね。それと、罠は全て解除させていただきましたよ」
 異様なオーラを漂わせつつ、木々の合間から姿を現した朱雀(ja0906)。
 チームメンバーからは離れつつ、様々な機器を用い罠の探知、そして解除を行っていた彼女の行動は相手の動きを封じ込める一手。
「投降致すなら、無為に斬り捨ては致さぬ。なれど交戦し、童達を巻き込むつもりであらば、容赦なく斬り捨てさせて頂く!」
 更に退路を絶たれ、動揺する男達へ放たれたのは影法師の宣言。
 必死で逃亡の手段を模索する相手ではあったが、その前に広がる光景は少年兵の武器を狙い、確実に無力化して行くアストレアン(ja1155)を始めとしたチーム『ハンズ』の活躍でしかない。

●メッセンジャー

 崩れた壁。その先に有る石板。零下近いひんやりとした空気の中に立つ北条秀隆(ja2329)。
「‥‥どうやって設置したんだ。これ」
 高さはざっと20m、幅は30mはあるであろうか。付近の洞穴のサイズは1mそこそこ。それがもう何百mも続いているのだ。まるで、大仏を創ってから大仏殿を建立したような感だ。
「これは‥‥」
 石版に刻まれた人物の姿は、どこと無く沢木姉妹にそっくり。西洋風を思わせる甲冑を纏ったその人物の左に、盾を捧げる乙女。右には剣を捧げる丈夫(ますらお)が立つ。
「ふむ」
 彼が、巨大な石版に触れたその時。
「待っていた。三つのしもべを統べる乙女を‥‥」
 秀隆はおいおいと言う顔をしながら
「ま、乗りかけた船、下船までは大人しくしておきましょうか」
 心に呼びかける声に耳を澄ませる。
――――――――――――――――――――
 乙女よ。
 汝の父が遺し力を享くや否や。
 決断せよ。汝何れに組するか。

 ああ、時は疾く満ちた。
 虹の宮に旅立つ子よ。

 白の娘と黒の息子。汝何れを選ぶや。
 中空の君に向かう時。
 人の道と獣の道。汝何れと組みせんか。

 虹の宮に生い立つ子よ。
 ああ、時は疾く数えられる。

 選択せよ。汝何を選ばんや。
 汝が父の承けし力を遺すや否や。
 乙女よ。
――――――――――――――――――――
 秀隆は五十路を過ぎた一個の男児である。
 恐らく、これは備えられた仕掛け。相手を判別することも出来ない只のメッセンジャーだ。
 本来これは、陽蔓が受けるべき啓示であろう。

「‥‥ふぅ。やっと到着か。なんとか迷わず辿り着けたな」
 秀隆の報告に、急遽駆けつけた霞沢賢一(ja1794)。
「北条さん‥‥」
 彼は、巨大な石版の前に倒れている秀隆を発見したのであった。

●ドンキークエスト開発室

「そういえば例の大会。随分盛り上がったみたいですねぇ。開発って本部でやってるんですか?」
 さり気なさを装い問うた獅子戸竜子(ja1338)に、長老の称号を持つ下級幹部の男性はキョトンと目を見開いた。長老と言っても年は若い。ドンキー教団においては、カソリックで言えば司祭に当たる程度の地位だ。
「なんだ。興味があるのか? そうだな‥‥。1度見ておいたほうがいいかもな」
 その言葉に、竜子は内心を押し隠し、残念そうな顔を作った。
「とはいっても私は警護の仕事もありますし‥‥。持ち場を離れるわけにも‥‥」
「心配するな。他のものに代わってもらえばいい。場所は‥‥」
 そんな竜子に幹部の男は、胸を叩いてみせた。
(随分あっさり教えてくれたね。今までの功績もあってか。私のことを疑う人はもういないかな?)
 軽く頭を下げながら、竜子は内心でだけ、笑みをこぼした。

「へぇ‥‥。ここが開発室かぁ‥‥」
 訪れた件の開発室では、クラリッサ・アイリーン(ja2377)がシステムと格闘していた。
「えっと‥‥。ここのプログラムは‥‥。これでいいんですか?」
「そうだ。間違えないようにな。ミスすると大変なことになるぞ」
 半分脅すような幹部に、竜子は尋ねた。
「大変なことって‥‥。どんなことですか?」
「え? あぁ‥‥。ゲームがフリーズしたり‥‥。ネットワーク環境だからな。他のプレイヤーにも迷惑になる」
「‥‥わかりました。慎重に作業します」
 成る程、と頷く竜子に、クラリッサもまた真剣な眼差しで請け負い。
 幹部は
「くれぐれも気を付けるように」
 と念を押して行った。
 残された開発室、僅かな時間を惜しむように。
「‥‥始めてみる顔だね。大丈夫。敵じゃないよ」
「竜子さん‥‥。ですね。話はきいていましたが‥‥。上手くやっているみたいですね」
 竜子とクラリッサは意思を交わした。
「おかげさまでね。どう、あんたのほうではこのゲームに関する裏情報は手に入れた?」
「せっかくですがまだ‥‥。でも怪しい情報は聞いていますので。データを渡しておきますね。彼らは今、空き回線を自動的に探して、快適なサーバアクセスする部分のプログラムと、ドンキークエストの追加コマンド『クラウド・キル』の実装を行っているそうです」
「ありがとう。それじゃあ、お互いに気をつけてね」
 接触は微かに。
 すれ違いざまデータを受け取り、竜子は何事もなかったかのように、開発室を後にするのだった。

●ハプニング

 陽清引退? ドンキー脱会? 中継での爆弾発言に、激震が走った。
 実は、陽清の留守の間に陽清に変装した大雅の仕業である。
「よし、そんじゃ戻るで!!」
「上手くいったようだな。さて、これからどう動くか‥‥」
 ニヤリ、と笑んだ大雅に、玲那もまた同じように微笑した。
 と、近づいてくる足音に気付いた大雅が、背後を振りかえった。
 その瞳は果たして、そこに予想通りの人物を見出した。
「‥‥。あ。陽清はん」
「ちょ‥‥。なんですか!! 今の放送!!」
「‥‥。お主、逃げ出したのではなかったのか?」
 動揺しまくりの陽清に、玲那は白々しく問うた。
 ご丁寧に小首さえ傾げる、芸の細かさだ。
 だが陽清はそんな様子にも気付かず、焦りまくった口調で喚いた。
「あれは私じゃありません!! それに‥‥。 口調もおかしかったじゃないですか!?」
「そ、そう? ウチ、全然気がつかへんかったわぁー‥‥。あはははは‥‥」
 玲那ほど内心を隠せない大雅は、辛うじて乾いた笑いを立てた。
 やはり空々しかったが、興奮した陽清はやはり気付かず。
 それでも、ひとしきり騒いで多少頭が冷えたらしい。
「とにかく。もう1度放送を流してもらいます。‥‥。でも。さっきの人、誰だったんだろ‥‥。???」
 首を捻りつつ、スタッフの元に向かう陽清。
「ふむ。やはりあの口調は偽者だと世間でもわかっているようだな」
「やかましいわ!!」
 こっそりと玲那に怒鳴ってから、大雅は耳を澄ませ
「でも」
 と続けた。
「‥‥結果は上手いこといっとるで。ほら、ドッキリ放送で切り抜けたが、周りが騒ぎ出しとる」
「‥‥そうだな。次は陽清殿を連れ出すタイミングか‥‥」
 応え、玲那は考え込むように、呟くのであった。

●噂をすれば

「ふぅ‥‥。ただの散歩といえど、気は抜けないわね‥‥」
 公園のベンチでようやく一息吐くセイレ・セーレ(ja2264)。
 アカツキの散歩に出てきたものの、ちょこまかと動きまわるアクティブなアカツキを追って走り通しの一同はもうくたくただった。
「どこにアカツキ君を狙ってる奴がいるか‥‥。わかったもんじゃないですからね‥‥」
 セイレの横で烏鳩(ja0226)もぐったりとしている。今ここで元気なのは父親の一人である織部・真白(ja0650)くらいだろうか。
「だめだよー、アカツキ君。あんまりわがまま言うと、クビシメールのおじさんがやって来るぞ〜?」
 オリヴィエは膝の上で無邪気にナスの杖を振りまわすアカツキをそう言って脅してみせる。
「くくく‥‥。お望みどおり、やってきてやったぜ」
 噂をすれば影。アカツキと一同の前にクビシメール(ja1364)が忽然と姿を露わす。
「‥‥いつの間に!?」
 突然の登場にカタリーナ=クリューガー(ja2032)は咄嗟にアカツキを庇うように立ちはだかると戦闘姿勢を取った。
「落ち着いてくれ。奴は俺が呼んだんだ」
 アレクセイ(jz0043)がグラナートを諌める。
「しかし‥‥。こいつは過去にアカツキ君の命を狙ってきた‥‥。そんな奴にいったい‥‥?」
 アレクセイの言葉にエリーカ・ヘルナイト(ja2226)も戸惑い気味だ。
「教育係を頼まれたんだよ。アカツキ君の直属のな」
「ほ‥‥。本当ですか!? アレクセイ様!?」
 クビシメールの言葉に驚愕する一同。シュリ(ja1100)も目を白黒させながらアレクセイに訊ねた。
「本当だ。奴の影響でアカツキが力を引き出しているのは間違いない。‥‥大丈夫。そのためにもお前達がいるんだからな」
 そう言ってニッコリ笑うアレクセイ。
「‥‥了解。アカツキ君に‥‥ 手出しはさせません‥‥」
 その言葉にカタリーナも納得したのかようやく警戒を解いて矛を収める。
「アカツキ君は過去にコイツを退けてるわけだしねぇ‥‥。悪い影響じゃないとは思うけど‥‥」
 セイレはどこか納得しきれず首を傾げつつ唸る。
「ま‥‥。まぁ。みんな。奴から目を離さないように気をつけましょう!!」
 仕切り直しと言わんばかりに烏鳩はニッコリほほ笑んだ。
 そんな彼等の様子を見てクビシメールはニヤリと笑う。その笑みの裏で何を考えているのかは誰にも分からない。

●傀儡(くぐつ)

「くっ、これはいったい?」
 少年兵の保護を行い、倒したゲリラから情報を聞き出そうとした瞬間、その異変は発生していた。
 6名の男が縛り上げられたロープを引き千切り、虚ろな眼をしつつも反撃に転ずると言う異変が。
 少年兵の心を解そうとしていたオムライザー(ja2035)や銀河刑事ゼダン(ja2165)、そして朱雀も異変に気付き迎撃体制。が、それよりも早くゲリラ達は行動を開始していた。
 密林での戦闘に慣れず、ましてや無力化した少年兵を庇っての戦闘。
 咄嗟にPKバリアーで霧の朧が少年を守り、飛び掛った男へはゼダンが跳躍、強烈な蹴りを放つ。だが、それで止めるには不十分だ。
 吹き飛びながら空中で体勢を整え、そして樹木を蹴って空中へ。
 三次元の動きでワイルドカードを翻弄し、自在に立ち回る男達を相手に『ハンズ』の面々は苦戦を強いられることとなった。
「しま‥‥っ!?」
 驚愕し、膝を折るのは朱雀。
 然るべき場所で司法の裁きを、と言う目的の元、殺傷能力のない武器で相手を止めようと動いたのが間違いか。
 左右と上空から同時に、そして木々の影を利用した動きによって翻弄する動き。なんだ奴らは!
 そして、並みの人間ならば即座に倒れるような威力を持つ手刀に晒されれば、歴戦を経たワイルドカードとは言え圧倒されるのは必定であった。
 押し負けた朱雀を庇いつつ、そして少年兵を中心とした円陣を組み上げ防護体勢を整える『ハンズ』の面々。
「シャァッァァァァ!?」
 だが、その防御体勢をも食い破ろうと突撃する3名の男が跳躍、一気に距離を詰めてくるが横合いから放たれた銃弾が一人の男を吹き飛ばし‥‥その攻撃に反応した残る2人が飛び退き、周囲を警戒する。
 不意の一撃、それを放ったのは一人、内定を進めていたG=ヒドラである。
「なるほど、こちらのゲリラが正解かジャスティス、協力しよう。情報は俺も必要だからな」
 もう一つあったゲリラの一派からはまともな情報は聞きだせず。
 『ハンズ』が捕縛した面々も特に情報を握っていないと判断、調査を敢行しようとした際に見えた異変に気付き、彼はこの場所へ姿を現していたのだ。
 異様な変化を遂げ、虚ろな目付きでありながら人外の力を身に着けた男達に自身が捜し求めるものがあるとの確証を持って。
「目的はわからんが、今はこの状況を打破する事が先決だ。申し出はうけよう」
 両手から電撃を発生させ、G=ヒドラの申し出を受け入れるデスペラードが飛び込んできたゲリラを殴り飛ばし言葉を発する。
 既に現状は乱戦、守りながら戦うと言う不利な状況下では、一人でも戦える人材は欲しいチームにとって申し出を断る理由などない。
 人の限界を超えて駆動する男とワイルドカード達による乱戦は、更に激しさを増して行く。

 肉体再生を用い、流れ出る血液を止め男へ組み付くパラダリス。
 強引に押さえ込んだ彼女を援護すべく、アストレアンが構えた銃の引き金を引き熱線を照射、男にダメージを蓄積させるが、まるで怯む様子は無い。
 いくら蓄積させても、体が動けなくなるまで無理矢理に動かし続ける、そう言う『何か』が仕掛けられたのは誰の眼にも明らかであったが、だからと言って手を抜くことは出来ない。
 相手がワイルドカードではないゲリラであっても、である。
「僕が敵の気を引くのです!! その間になんとか接近して下さい!!」
 突進する男と交差、そしてそのまま弾き飛ばされるオムライザー。
 体勢を立て直し、防御力にモノを言わせ再度突撃する彼は男へと組み付き、その拳を繰り出して行く。
 組み合ってからの格闘では、流石に並みの人間であるゲリラには勝ち目は無い。
 何とか振りほどこうと何度も何度も拳を繰り出し、オムライザーを殴りつけるがそれよりも強力な拳が腹部へと叩き込まれ、体力の限界を迎えた男は失神、その動きを止めていた。
「チッ、少しばかり無理があるな‥‥」
 守りながら戦っていた霧の朧ではあるが、その不利は彼も把握。
「ですけど、そうも言ってられませんよ?」
 同時に子供を守るべく、謙譲の盾を翳していた幻光戦士・織夢(ja1679)が返す。
 2人が攻勢にでれば、恐らくはこの男達を押し返し、撃退する事は容易になるだろう。
 しかし、それは即ち今守っている、戦意をなくした少年兵達を危険に晒す事であり、そして何より自分達をようやく信用し始めている少年兵の期待を裏切る行為である。
 機を見て、何度も飛び掛る男を盾で防ぎ、拳を繰り出す織夢とひたすらに守りに徹する霧の朧。
 その2人を援護しようとゼダンも跳躍。
 迎撃すべく飛び上がった男の手刀とゼダンの蹴りが空中で交差し、双方着地と同時に振り返る。
 ゼダンのスーツには、真一文字に刻まれた手刀の傷跡が。
 対する男はほぼ無傷、生気の無い眼をゼダンに向け、再度飛び掛ろうとするもその瞬間膝を突きうつ伏せに倒れ、動きを止める。
「あのゲリラ達は必ず倒す‥‥。君達は必ず自由にする! 俺達は君達の味方だってこと‥‥。それは絶対に真実だ」
 一瞬の間に繰り広げられた攻防、そして守るべき子供へと見栄を切るゼダンだが、受けた傷は浅くは無い。
 極力、弱みを見せずに再度前へと出る彼と共に、残る面々も攻勢へと加わるが男達の抵抗も今だ激しい。
 このままでは、不毛な消耗戦の上に男達から情報を聞き出す事も不可能か、と皆が考える中、更なる兵力がその地へと投入されていた。
「くっ‥‥こいつら。ピジョンが言ってた『奴』の傀儡(くぐつ)か!」
 自分の攻撃行動で、体が傷ついてもお構いなし。恐怖と言うものが全く感じられない奇妙な症状を見せ、能力を向上させた男達。
 新たな乱入者であるキルブレード(ja1056)へ狙いを定め、飛び掛る一人の男だがその攻撃が繰り出される直前、虚空へ一筋の剣閃が走る。
 その閃光が消えれば男は腕を振りかざした体勢のまま、キルブレードの横を駆け抜け突撃の勢いそのままに倒れこむ。
 この段階で、男達の半数が戦闘不能。
 何らかの指示が与えられたのか、残る男達は倒れた男を始末するよう狙いをワイルドカードから変更し、かつて同胞であった者達へその凶刃を剥けて行くも、それが果たされることは無い。
 少年兵を狙うと言う目的が外れたが故に、守りに徹していた面々が遠方から攻勢に転じ、様々な光線、銃弾が戦場を舞う。
 その射撃攻撃を避けたが故に生じた致命的な隙に便乗、デスペラード、影法師、そしてテレポートで距離を詰めた織夢が肉薄。それぞれが武器を、そして拳を振るう。
 蓄積していたダメージは相当なもの。
 その上で繰り出された3者の攻撃にゲリラ達は耐え切れず膝を折り、そして意識を完全に手放す。
 これが、密林内部で繰り広げられた戦闘、閉幕の合図であった。

●大きくなる子

「みんなー、お帰りー‥‥。って!! えぇ!! ソイツは‥‥!?」
 散歩から帰って来た一同を出迎えるアニエスエース(ja1071)。しかしその背後に立つ意外な人物を目の当たりにして驚愕する。
「‥‥厄介なことを頼まれてな。今後はより一層警戒を強めないとだめになった」
 涼しい顔をしているクビシメールをエリーカはじっとりと睨んだ。
「だめだよー。まだナスはお預けでーす!!」
 真白はクビシメールを特に警戒しているそぶりは無く、ナスナス言いながらセイレの周囲をまとわりつくアカツキを追いかけている。
「あ、だめよ、アカツキ君。こっちは今料理中‥‥。きゃっ!!」
 アカツキは何を考えたのか大きく跳躍するとコンロの上に飛び乗る。その拍子に鍋を煮込む火がアカツキの服に引火してしまう!
「火が‥‥ 危ないっ!!」
 悲鳴気味に叫ぶカタリーナ。
「早く‥‥。早く水を‥‥。えぇ!?」
 シュリに至っては軽く恐慌状態に陥るも、次の瞬間アカツキが取った行動に息を呑む。
 アカツキは素早くコンロから飛び降りると、自ら床を転がって自分の身体を包む火を消してしまったのだ!
「自分で‥‥。転がって消した‥‥?」
「あぁ。ソイツ。その程度の火だったら簡単に消しちまうぞ」
 驚きの光景に唖然とする烏鳩にクビシメールは事もなげに告げる。
「‥‥2週間前だったか。お前が襲撃してきた時だったな。さすがにあれは驚いた」
 アレクセイも特に慌てた様子もない。
「なんと言うことだ‥‥。下手な戦闘員より強くなっているかもしれんな‥‥」
 アカツキの驚くべき身体能力にエリーカは軽い眩暈を覚えてこめかみを押さえた。
「と‥‥。とにかく早く手当てをしないと!!」
 いまいち現状についていけないセイレはおろおろしながらアカツキを拾い上げた。
「ええっと‥‥。薬は‥‥。薬は‥‥!!」
 真白は薬箱を探しにキッチンを飛び出して行った。
「あわてなくても大丈夫だっての。そいつ。治癒能力も上昇してやがんだよ。まったく、腹が立つぜ‥‥」
 混乱する一同を見渡し、クビシメールは苛立たしげにセイレの手から猫の子を摘まむように取り上げた。
 クビシメールがしかめっ面でアカツキの顔を覗きこむと楽しそうにキャッキャと笑った。
「あ‥‥。取り込み中のところ済みません。アレクセイさん。例の件だけど‥‥」
「‥‥あぁ。わかっている。準備をしておいてくれ」
 アニエスエースが申し訳なさげに声を掛けるとアレクセイは神妙な顔で頷く。
「‥‥例の件? 何かありましたっけ?」
 二人の会話にの意味が分からず、烏鳩は首を傾げる。
「2人の脳波を調べさせてもらおうと思ってさ‥‥。何かわかるかもしれないし」
 アレクセイやアカツキが寝ている時に何らかの干渉がないか調べる為だと言う。
「干渉の予兆が分かれば、対応のしようもあるかもしれないし」
 彼女の推測は、試みる価値のあるものであった。
「‥‥ではその間は完全に無防備ですね。大丈夫。アカツキ君は‥‥ 守ります(なでなで)」
 カタリーナはクビシメールの手からアカツキを取り戻すと頭を撫でてやる。
「えぇ。シュリも‥‥。この命にかえてでも2人を守ります」
 さり気無くグラナートからアカツキを受け取ると、心配げに頬ずりをした。
 クビシメールは何か言いかけたが
「無防備の時の警護ってんなら、しゃあねぇか」
 不満そうに
「チッ」
 と舌打ちをした。

●戦い終わって

「やはりみんな警戒していますね。なんとかできませんか?」
 変身をといた雷鳳結依は呆然とする子供達にどうしたら良いのか戸惑う。
「きっとおなかがすいてるレツ。ささ、お菓子をあげるレツよ?」
 用意のお菓子を手渡すオムレッツ。しかし、少年達の表情は固い。警戒の色が見て取れる。
 そんな中で、只一人。怯えながらもすがるような視線を寄越す少年が居た。
 胡蝶・亜都真は気が付いた。
「確かその子‥‥。星君を‥‥」
 他でも無い。彼は星・光一を刺した子だ。
「‥‥傷のことを気にしてくれているんですか? 大丈夫。知らない人達が襲ってきて怖かったんでしょう? 大丈夫です。銃や寝首を掻くならいざ知らず。ナイフじゃ子供に本物の男は殺せませんよ。ほら、こないだの奴は、もう治ってます」
 と、見得を切る光一。笑いながら通訳する有口(jz0035)。
 現状、戦いで傷つき酷い怪我だが、ジャスティスの先進技術で以前の傷は完治。だが、そんな事は露知らぬ少年だ。拝むようなしぐさをしつつ発する言葉。
「おやっさん。この子はなんといってるなんですか?」
 光一の疑問に有口は、真顔で一言。
「仏様のお使い。こう言っておるぞ」
 この子の一家は熱心な仏教徒のようだ。

 南守・小鳥は少年達の前に屈み、
「えっと、ほら!! よければみんなでグループとか作りませんか? 少年のアイドルユニット『ゲリラ48』とか‥‥。あ、有口さん、必要なら私が養子縁組して引き取ります」
 途端に凍る空気。キルブレードは呆れ果て
「こんな土地の子が、アイドルなんて解る訳ないだろ」
「待て。親兄弟を探さすのが先だ」
 肉親との暮らしに戻れるならそれが最優先に決まっている。とマサカズ。
 有口も、
「ふむ。別してオムレッツ君の差し出すお菓子に飛びついて来るような子なら、それもありなんじゃろうが‥‥」
 小鳥ははっと気が付いた。この子達。お菓子が嬉しい年頃なのに、子供らしい反応が出来ないほど心が荒んでる。
「ごめんなさい。今は何よりも精神ケアが大切ですね。この先のフラッシュバックも心配すべきでした」
 気が付くと小鳥の傍から子供達は離れ、代わりにファナ・コウサカに抱きついていた。
「‥‥が、がお?‥‥大丈夫。怖くない、怖くない」
 G=ヒドラは肩を竦め。
「‥‥懐いているようだな。現地の親に近いものを感じたのかも知れんな」
「さて、落ち着き次第遺跡の捜索に向かおうか。重傷者は無理しなくていいぞ」
 今回の作戦リーダー・マサカズが仕切った。

 その頃。件の朽ちた陣地跡。僅かに形跡を留めるセメントの壁は、蒼く苔むして落雁の様に脆くなっていた。
「ここで戦いがあったのか‥‥」
 仲間よりも一足先に、馳河三郎(ja1487)は痕跡も残らぬ現場を検証する。
 既に60余年。鉄は錆び、紙は朽ち、遺されたこの空間もいつ崩落するとも限らない。
「おや?」
 三郎は横たわる一柱の白骨の指の辺りに、一つのバッジを見つけた。
 恐らく銀製。黒ずんだバッジの意匠は、ドンキーのそれに酷似していた。

●黒い集い

 ドンキークエストロケ現場の一つに近い、とある埠頭の倉庫。
「‥‥さて。目的の物は発見できましたか?」
 人気の無い場所へと足を踏み入れ、アリサ・エスクード・須藤(ja0567)は暗闇の中へと問い掛けた。
「あぁ。奥の倉庫に『それらしき箱』があってな。その中身だ」
 その闇の中から白い影‥‥J・J(ja1439)が歩み出ると不敵に笑う。その手を軽く振うと入手経路不明のデータがいくつか転送。そのいずれも厳重なプロテクトを掛けられ、情報そのものにも暗号化の処理がされていた。尤も今は解除されているが。
「‥‥では、撮影の合間を見て運び出しましょうか。物さえ手に入れば長居は無用です」
 そのデータの中からその行動に必要なものを抜き取り、フラウ(ja1801)は最適と思われるプランを練り上げて行く。
「監督だが‥‥脈ありだ。この映画撮影が何か実験をかねているのは間違いない」
「あのエキストラの動物なんかもそうなのかな? 最近の動物役者なんかはちゃんと躾られてるって話だけど?」
 マリル・イェーガー(ja1724)やロシェ(ja0526)らが独自に接触を試みた範囲でも何らかの裏があることは 間違いない。それらの具体的な証拠も情報も見つかりはしなかったが、少なくとも何らかの秘め事を持った現場であることだけは確かだ。
「それを持ち帰って我々のほうで投与してみれば判ると思います。‥‥さて。そろそろ動きますか」
 アリサの元に再度転送されたデータによれば、今がちょうど行動を移す好機だ。
「あぁ。犯行がばれても慌てることはない。堂々と我々の存在をアピールしてやれ」
 J・Jの言葉に各々が頷く。現場にいるのは大半がただの一般人だ。何が起ころうと自分達よりも早く対応することなど出来るはずは無い。
 絶対的な勝利を確信しながらJ・Jは哄笑した。


●真のターゲット

「近くの一般人は全員眠らせたよ。しかしキモいね。慣れない夜行の高速バスで、徹夜でフラフラのファンの奴らか。わざわざお休み爆弾使うまでも無かったな。だが、これで少しはやり易くなったかな?」
 ロシェが、手際よく邪魔を排除。
「見つかったら逆に不自然さは隠せませんけどね‥‥。急ぎましょう」
 フラウは辺りをうかがう。もう、近くに誰も居ない。
「念のため確認したがこいつらが操られていることは今のところないようだな」
 マリルは一般人を担いで目立たぬように物陰に隠して行く。

 一方、その頃。
「お疲れ様で‥‥。あれ? みんな、どうしたの? ちょっと!! その箱はダメだよ!! 中に大事なもの‥‥。ぐっ!!」
 J・J達ジョーカーが目を着けたのは、撮影に呼ばれた動物プロダクション。出くわしたスタッフに、
「すまんな。我々は元々コイツらに用があっただけなんだ」
 J・Jがスパークナックルの一撃。
「見られてしまいましたね‥‥。さっさと済ませて、目を覚ます前に逃げましょうか」
 アリサは手早く、ガルバ細胞を動物達に植え付けて行く。
「ヘレルの長子の誕生。防げ無いものだとしたら、アレクセイ様やアカツキ様を依代にはさせませんわ」
 元より強力過ぎる敵と推定。微塵の遠慮や躊躇いがあっては、絶対に勝てるわけが無い。だが、第三の存在。つまりガルバの細胞から生まれる化け物なら、彼らは遠慮なく戦える。それが、敵や無関係な者なら100万人殺すのも朝飯前だが、身内は何よりも大切にするジョーカーの選択なのだ。

●目的ってなぁに?

「さて、では今回の作戦を再度確認‥‥。しなくてもよさそうですね」
 そう言って日乃元純鈴(ja1908)は不敵な笑みを浮かべる。
「用は映画をめちゃくちゃにしてやればいいんですよね?ふふふ‥‥」
 マリアン・リンドバーグ(ja2189)も仄暗い笑みを浮かべる。実に楽しそうだ。
「今のところ不祥事とかはなさそうだし‥‥。なければ作るしかないよね?」
 南大社・ハミュン(ja1907)も、さらりと恐ろしい事を無邪気に提案している。
「あったとしても一般参加者には簡単に口をわってはくれないわよ‥‥」
 小石川瞳(ja2303)はどうやらスタッフの口を割った方が早いと考えてるようだ。
「ギャラ不要で即採用!! 後悔させてあげないとねー」
 ハウンズは何を後悔させるつもりなのだろうか?
「張り切るのは大いに結構ですが‥‥。みなさん。本来の目的だけは忘れないように‥‥」
 心無しか皆『芸能界』と言う響きに浮かれて目的を間違えてるような気がして、黒乃揚羽(ja2138)は一応釘を刺してみる。
「うん。この映画を通じての洗脳工作を防ぐこと。だよね?」
「理解してくれて助かりました。撮影時間外はとにかく不祥事を探すことに専念してください」
 空風・F(ja2198)は任務を正確に認識していたらしく、純鈴は胸を撫で下ろした。

●虎視眈々

「お疲れさまです」
「お疲れ様です。今のシーン、かっこよかったですよ」
「はは、ありがとう。上手く行ってよかったよ」
 一条・聖(ja2027)と陽清に笑顔で迎えられ、ごんぶと(ja0744)は照れたように笑み。
「陽清さんもすごいです。NGなしで完璧でしたね!!」
「ふふっ、ありがとうございます」
 綿糸・翼人(ja2031)の言葉に、今度は陽清が嬉しそうに笑んだ。
 対蹠的に申し訳なさそうな顔をしたのは、荒世(ja0626)だ。
「さすがにこの甲冑はまだ慣れません‥‥。上手くできなくてすいません」
「そんなことなかったですよ!! 初めてとは思えなかったです!!」
 軽く頭を下げた荒世に、陽清は力を入れて主張した。
「きっといい役者さんになれます!」
 力説する陽清に、荒世は苦笑を噛み殺しつつ礼を述べた。
 と、聖が陽清に声を掛けた。
「あ、陽清さん。向こうで監督が呼んでますよ」
「すいません。ちょっと失礼しますね!!」
 ペコリ、頭を下げ監督の元に向かう陽清。
「‥‥あの陽清さんが陽曼さんかどうかはまったく判別できませんね」
 その陽清の背を眺め、翼人は小さく呟いた。
「結局黒井さんからの連絡を待つしかないと言うわけか」
「いつでも動けるように円盤は待機させています。それまでは警護に専念しましょう」
 ごんぶとに頷き、荒世は皆に告げた。
「そうね。スタッフがおかしな動きをしていないか‥‥」
「おいおい。そんな目で見てると逆に怪しまれるぞ」
 鋭い眼差しを周囲に送った聖を、ごんぶとが笑い混じりにとがめ。
「今は撮影に専念しましょう。確信がないことには動けません」
 そして、翼人がまとめた時丁度、荒世が気付いた。
「お、どうやら撮影再開みたいですよ。行きましょうか」

●撮影現場

――――――――――――――――――――――
「まっすぐ前を見る」
「眼だけで右側を見る」
「顔を右に向ける」
「手を小さく上げる」
――――――――――――――――――――――
 陽清に向かって、監督はこの一連の動作を指示し、撮影する。
 しかしこの動きだけで、見る者にはスクリーンに映し出される登場人物の心の機微が見えるのだ。
 テレビよりもはるかに大きな画面は少しの表情の変化すらアップで映し出す。
 声を上げ動き回る事だけが演技ではない。
「流石、演技力なんて無くてもいいって言い切っちゃう監督さん」
 感心して見守る揚羽。

「‥‥おい。なんだの人形? あんなの使う予定ないぞ。回収してこい」
 セットのど真ん中に見覚えなの無い怪獣の人形が置かれており、監督は首を捻りつつ通りすがりのADに片付けるように指示をする。
「はい!! ‥‥うわっ!! なんだこの人形!?」
 ADが近づくと怪獣は暴れ出し、折角配置した大道具を破壊し始めた。
「うわぁっ!!なんだこのモンスター!!急に暴れだしたぞー!!」
 マリアンが扮するエキストラが怪獣に大げさに驚いて逃げ出して行く。
「ま、まて!! コレは撮影道具じゃない‥‥!!」
 監督は逃げ出したエキストラを咄嗟に引きとめようとするが、マリアンはあっと言う間に姿をくらましてしまった。
 次の瞬間別のセットが爆発し、現場は更なる混乱に陥ってゆく。
「ちょ‥‥。ちょっと!! 何よあれ!? 火薬が置いてあった方向じゃないの!?」
 爆風に煽られた瞳がよろめきながら叫ぶ。
「お‥‥。落ち着いてください!!きっと空気が乾燥していただけ‥‥」
 陽清は混乱を収めようとするが、彼女一人ではどうにもなりそうにない。
 だが次の瞬間、一同は身体に妙な感覚を覚える。脳を揺さぶられるような、眠いような、何とも言えない感覚だ。
 落ち着いて耳を澄ますと、それは微かに音である事が判った。
(催眠音波!?‥‥陽清さんが?‥‥それとも誰か別の人が!?)
 空風は周囲を見回し、この不思議な音の発信源を探ろうとする。
(誰かが事態を抑えようとしているようですね。『サンクチュアリ』を発動させます。援護お願いします!!)
 抗いがたい睡眠衝動に耐えつつ、ハミュンは揚羽に声をかける。
(しかし‥‥。ジャスティスの動きがないな。どこか別のところにいるのか‥‥?)
 揚羽も原因を見つけられず、キョロキョロとするばかりだ。
 現場の混乱ががみるみる終息し、すっかり静かになった頃、音波は収まった。
(とりあえずある程度の不祥事を引き起こすことには成功しました。記事は大丈夫ですか?)
 純鈴は興奮気味にシーリィ・H(ja2163)に訊ねる。
(バッチリ!!経費削減のためのチープな資材なんかも見つけたよー♪)
(と、言うことは。そろそろ退散ですか?)
 予想以上の収穫にマリアンはウキウキしている。
(いえ。現状我々を疑っているものはいません。もう少し潜入を続けましょう)
 音波の事が気になるのか、純鈴は潜入の続行を提案する。
(と言うことは‥‥。この事態の後始末もしないといけないのね‥‥)
 すっかりぐちゃぐちゃになった現場を見回し、瞳は軽く頭痛を覚える。
(この事態を気にもっと穴が見つかるものですよ〜。がんばりましょう!!)
 ハミュンはこの惨状を特に気にしてる様子はない。むしろチャンスだと受け取ったようだ。
(うん。洗脳工作もまだ続くかもだし。油断できないよ)
 空風も同意見らしい。
(それじゃあ私は他のエキストラさんから過去にこういった事態がなかったかきいてみるよ)
 シーリィはそう言って他のエキストラ達が避難している方へと走って行った。
(‥‥ジャスティスが出てこなかったとなれば。奴らも表に出てこれない理由があると言うことか。お互い様だな‥‥)
 揚羽は神妙な表情で呟く。そもそも、出て来なかったからと言って、この現場にジャスティスが隠れている確証がある訳でもないが。

●少年は舞い上がった

「うわ‥‥。うわぁぁぁぁぁ!!」
 少年の悲鳴が響く。
 魔物の凶刃が少年へと振り下ろされ。
 まさにその瞬間、彼方より来る炎の矢が、魔物へと襲いかかった。
「待ちなさい!!罪もなき少年を襲うモンスター‥‥。許すわけにはいきません!!」
 そして、颯爽と現れたる一団。
 凛々しく立つ陽清と聖、甲冑をまとった荒世とごんぶと、慈愛に満ちた眼差しで控える翼人の姿を認め、少年の表情が絶望から希望へと変わった。
「あ‥‥。あなた方は‥‥。伝説の勇者様ご一行!!」
「さぁ少年。ここは私達に任せて逃げなさい」
 荒世の言葉に、だが、少年は動けない。
「どこか怪我をなさいましたか? 治療しますよ?」
 すかさず翼人が少年の傍らに膝をつく。
 その間に、他の仲間は魔物達への攻撃を仕掛けていた。
「さぁさぁ!! あたしの魔法の餌食になりたい奴からかかってきなさい!!」
 聖の魔法と。
「‥‥ふん。この鎧の前にそんな攻撃は通用せんぞ!!」
 盾として仲間を守護するごんぶとと。
「わが剣技、受けてみよ!!」
 自在に剣を操る荒世と。
 そして。
「‥‥さぁ。魔物はもう退治しましたよ。大丈夫ですか?」
 優しい笑顔と共に手を差し伸べた陽清に、今までヘタり込んでいた少年が顔を紅潮させた。
「あ‥‥。ありがとう‥‥。勇者様!! 勇者さまぁぁぁぁぁ!!!」
「きゃ!!‥‥ちょ‥‥。ちょっと‥‥。うわぁぁ!!」
「あぁっ!! 抱きつくなんて台本になかったでしょ!! やめなさいよ!!」
 押し倒される陽清に、慌てて割って入る聖。
「す、すいません!! カットお願いします!! カットカット!!」
「早く抑えるんだ!! 早く早く!!」
 同じく翼人とごんぶとも焦った口調でスタッフ達に指示を出し。
「ううむ‥‥。撮影中も油断はできませんねぇ‥‥」
 騒然とする現場に、荒世はポツリと呟くのだった。

●天然ですか

「‥‥一応確認ですけど。みなさん。今回の目的、わかってますよね?」
 特殊メイクですっかり姿形を変貌させた少女達を見回し、田中五円(ja2336)は少々不安になって来る。
 アイドルオーディションのはずなのに、彼女達の姿はさながらお化け屋敷だった。
「ええっと。この映画の目的を探るんだよね?」
 と、初っ端から疑問形の佐々木日向(ja2375)。
「と言うより。本格的な映画を作るのに一般の公募者ばかり使うのはどうかと思うのですが‥‥」
 リム・フェザー(ja2323)は冷静にコメントを述べてみるが気にするところが微妙にずれている。
「うっす!! あたしみたいなの使っても失敗するに決まってるっす!!」
 緋袴冴子(ja2328)に至っては何も考えて無いのか、自信満々に今から後ろ向きだ。
「いや、そんなことに自信をもたれてもこまるんだけど‥‥。怪しいのはやっぱり監督かな?」
 宮内洋子(ja2332)が冴子に当然の突っ込みをしつつもようやく具体的な意見を出した。
「ではこれから配役のためのオーディションがありますが‥‥。くれぐれも陽清嬢のことは触れないように。怪しまれます」
 ちなみに五円は今回彼女達のマネージャーとして同行しているので、ここから先は彼女達を見守る事しか出来ないのだ。どこまでフォローできるだろうか。
「ドンキーに目をつけられないように目立った行動は控えるのですね?」
「よし!! 目立たないようにがんばるっす!!」
 やる気十分に会場に入って行くリムと冴子だが、その解釈で大丈夫か? と思わずにはいられないのは気のせいだろうか。
「‥‥オーディションなのに。目立たないようにしていいのかなぁ‥‥?」
「‥‥仕方ないといえば仕方ないのかなぁ?」
 どこか腑に落ちない面持ちののまま天然少女二人の後ろを付いて行く日向と洋子だった。

●ミクの突撃インタビュー

「はーい!! ミクでーす!! 今日は今話題の『ドンキークエスト』が映画化されると言うことでゲームを紹介してみたいとおもいまーす!!」
 涼村ミク(ja2101)の元気の良い声と共に、突撃インタビューは始まった。
「ではクエストの優勝メンバー、霞沢賢作さんにお話を伺ってみますねー。すいませーん!!」
「‥‥ん? 取材ってミクちゃんだったのか? そうだったらもっといろいろ‥‥。むぐ‥‥」
 言いかけた霞沢賢作(ja1793)の口に、むぐっとマイクを突っ込み、ミクは満面の笑顔で凄んだ。
(しーっ!! 撮影中ですよ!! 知り合いってことは禁句です!!)
 賢作が了解の意を伝えると、ミクは直ぐにマイクを構え直した。
「んぐ‥‥。あぁ。えっと。‥‥始めましてー!! ミクちゃん今日も可愛いねー!!」
「ありがとうございまーす!! どうですか? やっぱりゲームって楽しいですか?」
「うん。1度やってみると『現実に手がつかなくなるぐらい』はまっちゃうよ。ミクちゃんもやってみる?」
「ふっふっふ。そういわれると思いまして、今日はスタッフさんが作ってくれた攻略本を持ってきたですよ!!」
 打ち合わせ通りのやり取りだ。
 但し、攻略本を作ってくれたのはスタッフではなく『お兄ちゃん』だが。
 お兄ちゃんからの期待に応える為にも、頑張らねば!、気合入りまくりのミクに賢作も楽しそうに応えた。
「お!! それは期待できそうだねぇ!! それじゃあ協力プレイといきますか!!」

(おいおい。顔色が優れないぞ。大丈夫かい?)
 『ドンキークエスト』プレイ開始より、段々と青ざめて行く表情を案じ、賢作はミクに囁いた。
(だ‥‥。大丈夫ですよ。お兄ちゃんにお願いされてることですし‥‥。がんばらないと‥‥)
 とはいえ、意識を引きずり込まれるような感覚は、プレイ時間に比例して強くなって行くようで。
(それに撮影もかねてのことだろ? アイドルが撮影中に倒れたりしたら大問題だぞ)
 賢作の言う事は尤もだ。
 それでも、
「ムネンアトヲタノム」
 ‥‥託された願いが、素直に白旗を上げるのを拒み。
「お疲れさまー!! プレイ中の映像は大体とれたから後は締めの映像だけ撮っておこうか!!」
 その時、スタッフの声が上がった。
「‥‥あっ!! は、はい!!」
(‥‥ふぅ。ナイスタイミング)
 弾かれたように、意識を現実世界に戻したミクに、賢作はホッと安堵の息を吐き。
「‥‥では、今日は話題のゲーム、ドンキークエストの紹介でした!! ありがとうございました!!」
「はい、こちらこそありがとうね、ミクちゃん」
「陽清さーん!! 映画の完成、楽しみにしてますよー!! がんばって下さいねー!!」
 そして、ミクの『お仕事』は無事に終了した。

●何が間違っていたんだろう?

「んー‥‥。君達、なんだかギクシャクしてるねぇ。そんなんで大丈夫?」
 目立たないようにと必死に気配を消そうと黙り込む四人を見て、監督は思わず声をかける。
「す‥‥。すいません。新人なもので。みんな緊張しているようで‥‥」
 五円はあわあわしながら少女達にアピールを促す。
監督「この調子だと本番も不安だからね‥‥。これぐらいの役だったらできる?」
 監督は溜息を吐きながら台本を開いて洋子に渡した。
「よ‥‥。四人組の怪人‥‥。ですか‥‥」
 自分達の格好を考えれば当然の反応。むしろこの状態でも真面目に審査してくれる監督の対応は優しさに溢れていると言っても過言ではないが、洋子は軽くショックを受ける。
(ガーン!? やっぱり真面目にやればよかったー!!)
 台本を横から覗き、その内容に日向もドン引きする。
「か‥‥。怪人でも大丈夫っす!!自分、やります!!」
 と答える冴子だが、流石に声が微かに震えている。
「ドンキークエスト大好きですから‥‥。どんな役でもがんばります!!」
 リムだけは役柄に異存はないようだった。
「監督、みんなやる気は他の役者に負けてはいません。私からもお願いします」
 そんな彼女達を見かねて陽清もフォローに入り、陽清に頼まれては監督も強く出れないのか渋々と言った様子で溜息を吐いた。
「‥‥まぁ。時間も押しているし。首にするつもりはない。がんばってくれよ」
「ありがとうございます!! 陽清さんも‥‥。精一杯努力いたします!!」
 温情に満ちた采配に五円は平身低頭。少女達もつられて頭を下げる。
「えぇ。みんなで素敵な映画を作りましょう!!」
 少女達の出演が無事に決まり、陽清も嬉しそうに喜んだ。
(何はともあれ。首にはならなくてよかったわね。役は‥‥。あれだけど)
 頭を下げつつ洋子は小声で安堵の言葉を漏らす。
(うぅっ‥‥。この写真のメイクじゃ顔すらわからないよぉ‥‥)
 アイドルが出来ると仄かに期待していた分、折角受かったものの日向は軽く落胆する。
(顔が見えなくとも大丈夫っす!!そのほうが監視はし易いっす!!」
 冴子は前向きに考える事にしたようだ。
(ま‥‥。まぁ。何にせよ結果オーライですね。今後の監督の動きに気をつけましょう)
 リムの言葉を胸に刻むように皆頷いた。

●逃げ出したもの

「‥‥どうですか? 実験は上手く行きそうですか?」
 覗き込むフラウ。J・Jは難しい顔で
「‥‥動物に投与したが。何の変化もない。時間が必要なのか‥‥?」
「量が足りない。ってこともないかな?」
「この実験が上手くいけばELOにとっても大きな進展となるのですが‥‥」
 ロシェは首を傾げ、アリサも悩ましい顔。

 結論から言うと、この実験は失敗した。しかし、実は、異変は誰も居ない場所で起こっていたのだ。
 さしたる成果無く戻ったジョーカーの目映ったのは、めちゃくちゃに成った実験室。
「いったい何があったのか!」
 J・Jは監視ビデオを再生する。

 それは、音の無い世界で生まれた。異常な速さで増殖した細胞が、小売のお米の袋くらいの肉塊と成り、さらに3歳児程の大きさの人影に変化した。
 研究室に残して来た残りのカオス細胞に変化が起きて居たのだ。

「なんだ!?」
 最初に気付いたのはマリル。
「‥‥細胞が‥‥。集まりだした!?」
 戦慄くJ・J。
「‥‥なんですかこれは‥‥。人間!?」
 フラウは唖然。呆然とするJ・J。
「逃げられてしまったな‥‥」
 マリルは事実を確認した。ここで産まれた小さな人影は、実験室のドアを粉砕して逃げ出していたのだ。
 そして、ビデオを何度もリピートさせつつ、アリサは呟いた。
「なんでしょう。しかし‥‥。意思を持っているのは間違いなさそうですね」

●被験者はだあれ?

「で、どうやって眠り病のことを調べるかだけど‥‥」
「そう思って‥‥じゃーん!!」
 難しい顔で考え込んだ河原まさご(ja1691)に、涼村ユイ(ja1082)はもったいぶった様子で『それ』を取り出した。
「‥‥えっと。これ、何かな?」
 まさごは困った顔で、何かの機械であるのは確かな『それ』を指差す。見た目だけ見れば新作の子供の玩具とでもいったほうが納得されそうなデザインだった。
「私と岸田博士で作った発明品。夢を映像化するものよ」
「えぇ!! そんなもの作っちゃったの!? 凄いね!!」
 しかし、ユイの言うことが本当であれば、それはとんでもない技術が詰め込まれた一品だ。脳の見ている映像を外部に出力すると言うことは人の考えを読み取ると言うことでもある。まさごにもその凄さは理解できた。‥‥この画期的過ぎるデザインの面では別だが。
 まさごの称賛にユイは、
「ふっふっふ」
 と胸を張った。
「これさえあれば夢でみてるはずのドンキーのことや知恵の書のこと。全部わかるわよ」
 人の脳内に存在する情報は膨大だ。無意識に見ているものも記憶されており、更にそれが脳内で情報整理された状態で圧縮されている。夢を見るのはその過程とも言われており、夢とはただの幻想などではないことをユイは知っている。故にこそこの発明品を完成させたのだ。因みに、同じものをもう一度創ることは無理だろう。
「そ、それじゃあさっそく‥‥って、あれ?」
 すごいすごい、と連発していたまさごだが、いざ取り掛かろうとした時、ふと首を傾げた。
「‥‥何? どうしたの?」
 まさごはそれを抱え、行動を開始しようとして動きを止め、ユイは首を傾げる。
「えっと‥‥その‥‥肝心の『夢を見たことがある人』は‥‥?」
「あ‥‥そういえば。起きた瞬間に忘れちゃうんじゃ‥‥見たことある人も‥‥」
 二人は互いに顔を見合わせ、沈黙する。
 夢を見たかどうかがわからなければ、そもそも意味がない。
「‥‥とりあえず。地道にプレイ経験したことある人に頼んでよっか?」
「それしかないわね‥‥うぅ‥‥」
 まさごの思いついたままの作戦を前に、結局地味な情報収集と同じか、それ以上の苦労を覚悟してユイは項垂れた。

 一方、その頃。
「遅いのう。ユイ君は‥‥」
 巨大な本体機材をジャスティス秘密基地内で組み立てた、岸田・博士は待ちぼうけを食らっていた。
 実はあの機械。主要部分がこちらにあるのである。完成したセンサー部分を持ったまま、ユイが居なくなったので、このままでは調整も出来ない。
 隣では漆原静流(ja0368)がその設営作業を手伝っているが‥‥被検体が到着しなくてはこの装置も無用の長物。
「この装置の移動はできないのかしら?」
「そうじゃ。システム管制の為の演算力、安定稼動出力の確保の為にジャスティスの秘密基地規模の電力供給施設と外部からの干渉妨害が必須じゃな」
「‥‥と言うことは被検体を連れてこなければいけないわよ」
「‥‥そうじゃのう」
「‥‥夢って見たことを覚えている人はいなかったわよね」
「寝言で断片的に内容を察する程度じゃろう」
「‥‥被検体は見つかるのかしら?」
「‥‥期待は出来んかもしれんのう」
 そう言って二人はその日一日中、巨大なディスプレイの前で只管に到着しない被検体を待ち続けた。

 イリスの体験者は不明。しかも、折角の発明品はセンサーと本体離れ離れ。
 どこかで、情報の行き違いがあったことは否めないジャスティスであった。

●ハンター

「何はともあれ。洗脳プログラムの発見‥‥ですね」
「うむ。まずはパソコンにデータを進入されないとダメである」
 破軍魔夜(ja1332)と松戸旦求(ja1103)は、パソコン画面を見つめ、頷き合った。
「とりあえず今のところパソコンに異常なし。真っ更なLinaxを使用しましょう。エミュだと生windowsよりは安全なはずです」
 ドンキークエストはウィンドウズでしか動かない。
「ではドンキークエストをインストールするのである‥‥。まだ反応はなし‥‥」
「インストール時にはまだ発動しないようですね‥‥。やはり起動しないと‥‥」
 魔夜の指先が滑らかに動き、『ドンキークエスト』を起動した。
 二対の瞳が見つめる事、暫し。
 旦求が弾かれたように声を上げ。
「‥‥きた!! やはり音楽が流れる時に洗脳効果が現れるようである!!」
「よし。では音楽ファイルを徹底的に調べましょう!!」
 魔夜もまた、その瞳に獲物を狙う光を宿した。

●ヒズミライヴ

 ライヴ当日。
 客席は色とりどりのモンスターや勇者達で埋め尽くされた。その胸には、主催者が用意した『希望の灯火』。
 ビンチの仲間を助ける、小さな奇跡を起こすペンダントである。
 実際には、ダイオード式キーライト。裏に貼り付けられた32桁の英数は、今日より有効期限1ヶ月のドンキークエストの記念配布アイテムのパスワードである。
「みんな。陽清がピンチになった時。そのライトを付けて応援してね。みんなの力で奇跡を起こすよ」
 マイクを手に観客に説明するAD。

「いやー‥‥すごいですねぇ‥‥」
 モニターで客席を見つめる甲。無理もない、ネットでの生配信や小さなハコでのライヴは経験済みでも、現在時点でトップアイドルのライヴの観客数など考えた事もなかったからだ。貼り付けタイプのファスナーとバーサークモードのボディパーツを身に着けたピジョンブラッドが後ろから覗き込み、更に彼女を緊張させるような事を言う。
「今回のライヴ、映像を映画のエンディングに使うそうですからねぇ。いわばコレも陽清さんとの共演です、皆さんのコスプレも力が入ってますよ」
 ぶるっと身震いする甲。その肩を、波男と達哉の手が叩く。
「大丈夫大丈夫、今日の僕らは刺身のツマだから。ほら、深呼吸深呼吸」
「そうですよ。私達の役割、今日は音楽がメインではないでしょう?」
 言われたとおりに大きく深呼吸をし、甲は手のひらに人の字を三度書いて飲み込む。そして、化粧バッグの中から小さな何かを取り出した。
「んでは。ピジョンさん、お願いしますね」
「任せて下さい。くるっく〜♪」
 と、控え室のドアが開く。前座として先に舞台へ上がるモンスターズの面々に、陽清が挨拶に来たのだ。
「おはようございます! 本番、よろしくお願いします!」
 一人一人と握手をし、挨拶をする少女。白い鳩(ニワトリ風パーツ付)姿のドラムスと握手した瞬間、小さく顔をしかめて手を引いた。
「え、ど、どうしました?」
 手を見れば小さな血玉が出来ている。握手の際に何かが刺さったのだろうか。メンバーはあたふたと救急箱を探すが、陽清は笑って「なんでもない」と一言。
「衣装から何かが出てたんでしょうかねー。ピジョンさんは大丈夫です? 怪我ないように気をつけて下さいねっ☆」
 ぺろりと小さな傷口を舐め、陽清はピジョンを気遣う。隣にいるマネージャーが壁の時計を確認すると、陽清に退室と準備を促した。彼女が去ったのを確認したメンバーは円陣を組み、深呼吸ひとつ。
「それじゃあ、ザ・モンスターズ。行くぞーっ!!」
「「「「「おーっ!!!!!」」」」」
 ELOからの派遣で参加しているバンドメンバーも、今回ばかりは気合が入らざるを得ないようだ。

 全ての照明が消され、真っ暗な闇の中。
『ぶ〜らぁどぴ〜じょん♪ 皆様のアイドルブラッドピジョンが、沢木陽清ライヴ『フェアリーズ』の開幕をお知らせします。ぽっぽ〜♪』
 ライヴの開始を告げる声が、スピーカーから響き渡る。
 かき鳴らされる楽器の音に合わせ、舞台の中央に丸く開いた穴から陽清の姿がせり上がってくると、観客の声援は一気に最高潮まで上がった。

「さて、ここで素敵なゲストの登場です!」
 スケジュール表ではMCの時間とされていた。予定にはない甲の台詞に一瞬ぽかんとなる陽清。わぁっと声の上がった観客達に、振り返れば先輩アイドルの姿。
「みなさんこんにちわ!! 武曲罠兎でーす!!」
 ゲーム内に登場する妖精を模した陽清の衣装、それに良く似た罠兎の衣装。正しくは陽清のキャラのひとつ上位の妖精の衣装なのだが、その姿からも完璧に仕組まれたスケジュールだと陽清は認識する。ぱくぱくと金魚のように口を動かすことしか出来なくなった陽清の肩を、甲がぽんと叩いた。
「と言うわけでー、実は陽清さんにも秘密のサプライズゲストでしたー☆ ごめんね陽清さん、スタッフさん達から見事に口止めされてまして」
「見事すぎますよーっ?! え、リハーサルとかやってたんですか?!」
 テンション高く驚きを表現する陽清。そんな姿を冷静に見つめているのは一見おどけた様子で踊っているウェイブマン。
(‥‥リハの時より肌が紅潮してますね。テンションのせいか、それとも甲さんの作戦のせいか‥‥後者ならいいんですが)
 彼の思惑を知ってか知らずか。ぴょんぴょんと跳ね回る陽清に甲がメドレーの曲表と歌詞をさらりと見せる。
「ふむふむ、了解ですよー☆」
(‥‥え、今のでメドレーの内容理解したの?!)
 すぐさま曲表を返した陽清に内心で驚く罠兎。本来彼女が試そうとした応用力どころの話ではない。記憶力に適応能力、自分の持ち歌ばかりとはいえ充分にハイレベルなのが見えてとれる。
「それではいってみましょう! 陽清・罠兎メドレーっ!」
 甲のシャウトにピジョンのスティックの音が響く。軽やかなキーボードの音にギターが乗りベースが重なり、ひとつのメロディが紡ぎ出されて行く。そこへ今、二人の歌姫の声が重なった。

 数曲を歌い上げた頃には陽清の肌はだいぶ赤くなっていた。顔は化粧で何とかカバー出来ているが、首から下の露出部分はやはりごまかせない。波男がスタッフにこっそり連絡を入れ、そこから甲と陽清に情報が入る。一度陽清を舞台袖に戻し、モンスターズで一曲演奏する間に休息を取ってもらおうと言う事になった。衣装に隠すように仕込まれたイヤホン越しに演者一同に話が回る。
「皆さんありがとうございます!! 今日は‥‥」
 よろける陽清。
 観客席から悲鳴が上がる。
「‥‥っと。大丈夫? みんなの熱気にやられちゃったかな?」
 言いかけ、フラリとよろけた陽清を達哉が咄嗟に支えた。
 とはいえ、気付いた観客がざわざわと揺れる。突然、ステージが暗くなった。
「みんなぁ! 『希望の灯火』よ!」
 その声に応じるように、観客席に灯って行く光。ステージから見る観客席は、まるで銀河のようであった。
 口笛の音が、一つのメロディーを奏でる。電飾のバトンをくるりと回し、立つ姿。
「この曲は‥‥」
 罠兎は観客の一人のように音の方を見る。
 甲の視線もそれを追う。
 スポットライトが陽清に注がれ、アカペラの陽清ソロ。マイク無しだ。
――――――――――――――――――――――――
♪いつもよりも青い空 今日は冒険日和だね
 準備もバッチリ どこかへと出かけよう

  見慣れた街角 いつものお店
  狭い路地裏 街の大通り
  なんだか不思議 わくわくの予感

 さあ行こうよ 自分にとってのFrontier
 夢 希望 恋 いっぱい詰まってる
 とっても不思議 ドキドキの場所
 一歩を踏み出し 冒険しよう
――――――――――――――――――――――――
 慌てて、モンスターズは演奏を開始した。
 ピジョンがドラムを入れると、初めて陽清はマイクを使う。
 こうして、二番の歌詞からフル演奏。
――――――――――――――――――――――――
♪昨日よりは高い空 今日も冒険日和だね
 仲間とガッチリ 肩組んで出かけよう

  一駅バス停 ずらしてご覧
  道も一筋 外し歩こうよ
  なんだか素敵 わくわくの予感

 さあ行こうよ 自分にとってのFrontier
 歌 鼓動 愛 いっぱい誘ってる
 とっても素敵 ドキドキの場所
 一歩を踏み出し 冒険しよう

♪いつもよりも光る空 今日は冒険日和だね
 さあ行けドッキリ 期待して出かけよう

  子供の瞳で 駆けてく小道
  横断歩道は 谷の吊り橋ね
  なんだかピンチ わくわくの予感

 さあ行こうよ 自分にとってのFrontier
 風 光 笑み いっぱい歌ってる
 とってもピンチ ドキドキの場所
 一歩を踏み出し 冒険しよう
―――――――――――――――――――――――
 それが余りにも自然に為されたので、観客達は皆これが演出だと信じた。

「‥‥ふぅ。みんな!! お疲れ様でしたー!!」
「大成功ですね!! 最高の盛り上がりでした!!」
 ライヴの熱気冷めやらぬ中、ハイタッチを交わす甲と波男。
「あ‥‥。あたし、なんか突然参加させてもらって‥‥。ほんと、ごめんね‥‥」
「ううん。全然オッケーだったよ!! みんながいたからこそ成功したんだよ!!」
 罠兎に首を振る達哉もまた、満足そうな笑顔だった。
 ただ、その中で。
「う‥‥。うん。これもみんなの‥‥。おかげ‥‥」
「‥‥どうしました? 顔色が優れませんよ‥‥?」
 波男が顔を覗き込んだ瞬間、だった。
 陽清がパタリと倒れたのは。
「陽清さん‥‥? 陽清さん!?」
「だ‥‥。誰か救急車を!! 早く!!」
 駆け寄る罠兎、スタッフに声を上げる達哉。
 湧いていた場が一気に緊迫した。
(このタイミングできいてきたか‥‥。ライヴ終了まではもってくれてよかったかな?)
 その中で、甲はどこか酷薄に慌ただしく運ばれて行く陽清を見つめていた。

●アレクセイの夢

「アレクセイには連絡をとったわ。O K よ」
 ディアナ・ターリオン(ja1408)は振り返り、そう告げた。
「では発明品、『酔い度夢記聞』の調整を急ぎまするよ」
 その報告を受け、悲歌・柴生(ja0105)は不敵な笑みを浮かべる。この『酔い度夢記聞』と言う発明は特殊なアルコールを使用したもので、揮発性の高いアルコールを使用しているため、調整が難しい。その上、使用タイミングは夢を見ている状況を確認しなければ意味がないため、調整には非常に手間がかかるようだ。
「ではアレクセイ父子がイリスの夢を見ていると思わしき状況になったらテレパシーで思考読破に入るわ」
 それから全ての準備を整え、ディアナは他の者達に不干渉を告げた。夢で見ている映像は半ば無秩序であり、意識と無意識の混在するもの。そこに外部から声をかけられ集中を乱されれば、正しい情報を正確に読み取ることが難しくなる。情報が少ない以上、不確定要素は出来るだけ排除しておく必要性がある。
「普通の睡眠とは違って目を覚ましにくいのでするよ。質問すればちゃんと答えてくれまする」
 柴生の発明で通常よりも眠りは深い。その上、情報伝達の面でも通常よりも遥かに効率が良くなっている。外部からの質問であっても干渉は容易だろう。
「‥‥イリス‥‥」
 そして、眠っているアレクセイが呟いた。
「夢を見ているのか‥‥はたまたイリスそのものが憑依しているのか‥‥」
「それは試してみないことにはわかりませぬよ。緊急時は叩き起こすことも覚えておくでする」
 ディアナと柴生は互いに顔を見合わせ、それぞれの作業を開始した。
 かくして、以下の記録はジョーカー共有のものとなる。
―――――――――――――――――――――――――――――――
 Q:イリスの真意は何か?
 A:‥‥そこに意思はない‥‥

 Q:その最終目的は何か
 A:‥‥意思なき故に‥‥

 Q:陽蔓の現在の居場所に心当たりがあるか?
 A:‥‥ない‥‥

 Q:イリスの現在の居場所は?
 A:‥‥イリスにも夢にも現実にも形などはない‥‥
   どこにでも存在し、どこにも未だ存在はしない‥‥

 Q:‥‥未だ‥‥?
 A:‥‥イリスは云わば大帝王ポーライの代替品‥‥
   故にそれを顕現させることも不可能ではない‥‥

 Q:‥‥イリスは敵なの?
 A:‥‥イリスに敵意などない‥‥故に敵も存在し得ない‥‥
―――――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、
「良く解らないでありまする〜」
 柴生はこぼす。
「まだ、とてもジャスティスとの取引に使えるレベルじゃないわね」
 ディアナはがっくりと肩を落とした。

●夜の病棟

「‥‥上手く潜入できたの。さて、まずは見取り図の確認を‥‥」
「追っ手が来ないウチに急いでお願い!! 見つかっても出来る限りガードするわ」
 ピジョン提供の見取り図を広げたモローアッチ教授(ja2284)に、希海あやめ(ja2389)は焦りをにじませ懇願した。
 時間が経てば経つほど、仲間達を危険に晒さねばならない‥‥それを危惧して。
 勿論、教授達は何があっても守るつもりでは、いるが。
「そうあわてるな。万一見つかっても変装はしている」
 潜入するに当たって皆、医者や看護婦に変装しているのだ。
 ただ白衣はどうにかなったが、看護婦衣装だけはこの病院と同じ物とは言い難いので行動には注意が必要だ。
「すぐに無関係者とは気がつかれまい」
 あやめの決意を好ましく思いつつ、ルート・アルゴ(ja2295)が宥めた時。
 黒田嶺司(ja0698)が鋭い眼差しでもって、誰何の声を上げた。
「‥‥待て。そこに誰かいるな? 出て来い!!」
 廊下の辻から姿を現したのは先に病院へ潜入調査に当たっていた黒井・華麗だった。
「‥‥陽蔓さんの居場所はすでに判っています。この先の無菌室」

「黒井さん!! そういえば貴方は先に潜入していたんでしたね‥‥」
 警戒を解きながら深井・蓮華(ja1832)は、黒井・華麗の告げた内容に僅かに眉根を寄せた。
「場所がわかっているのはありがたい。しかし‥‥陽清でなく陽曼か」
 同じ疑問を抱いたらしいモローアッチ教授。黒井の言葉に一旦見取り図を閉じると考え込む。今回の目的は陽清。その彼女が居ないのであれば作戦の根本から立て直さなければならないだろう。優先するのは陽蔓の方だが、安全な救出は、陽清の強奪よりも難しい。なんとなれば、後者は別に無傷で無くとも良いからである。
「どうやらジャスティスも動いているようです。陽清さんのほうに行くのは今は得策ではありません」
「では今は陽曼側に向かうべきか‥‥ 警備のほうはどうなっているかわかるか?」
 黒井・華麗の答えに、ルートはそう切り替え、更に尋ねた。
「大体は‥‥ただ、ジャスティスの動きは流石に把握出来ていませんが」
「大丈夫!! ジャスティスに見つかってもあたしが蹴散らしてあげるわ!!」
「あまり派手な動きをするな。逃亡時ならともかく今敵に見つかるとまずい」
 グッと拳に力を込めるやる気を見せるあやめを嶺司が諌める。
「では警備、およびジャスティスに気をつけて進みましょうか」
 蓮華はいざと言う時のためにチューイング爆弾を取りだすと、先頭に立って進み始める。
 その後ろを他のメンバー達が、共に無菌室へと続いて行った。

●夢の記憶

 日本。季節はすでに秋の色をまとい始めている。そんな中、ドロシー・ホーク(ja2304)は水シャワーを浴びていた。身に塩を摺りこみ、冷水で洗い流す。彼女なりの方法で身を清めているようだ。シャワールームから出て身体をぬぐい、新しい木綿のスリーパーに身を包む。下着を身に着けないのはなるべく自然に近い形に近づく為。先に用意してあった香に火を点し、深く吸い込む。音楽はごく小さな音で、瞑想の妨げにならぬ程度。薄暗い部屋の中で、彼女はクッションに腰を落とす。再度深く息をつき、目を閉じた。
「始まりました」
 モニタールームで研究者が観測を始める。同室しての観察は瞑想の妨げになると、別室での観測となった。ドロシーに異変があった際には即座に対処出来るよう、研究者達の詰め所は瞑想部屋のすぐ隣だ。
 事は数日前に遡る。ここしばらくララとラン、陽月(jz0089)達に付き添っていたドロシーは、彼女達に掛かる負担に少々心を痛めていた。少しでも彼女達の重荷を減らせないか。自分に何か出来る事はないか? そう考えた時に辿り着いた答えが『トント老師』であった。彼にコンタクトをとり、更なる修行を希望する。自分のレベルが上がることによって彼女達の手助けが出来るかもしれない。そう考えたのだ。
 深く深く息を吐き、自分の中の奥底へ入り込んで行くドロシー。奥へ、奥へ‥‥ふと、新たな声が聞こえてきた。それは普通であれば聞こえる筈のない声。少しの違和感はあれど、その声は紛れもなくトント老師のものであった。違う点といえば、今まで聞いてきた彼の声よりも若干若く感じた事位であろうか?
『そろそろだと思っていた。‥‥覚悟は良いな?』
 声もなく頷くドロシー。
『では。道をつなごう』
 声の気配が消える。そして、新たな光。
 ‥‥ごく淡く、ふわふわと色を変えて行く光。その中に人形のような影。その影が少しずつ、大きくなって行く。人形サイズから人間サイズへ‥‥しかし、その美しさはやはり人形のようで。緩やかに波打つ艶やかな金の髪。濡れた輝きを放つ翡翠色の瞳、その眼を飾る長い睫毛。白いドレスに身を包んだその姿に、ドロシーは眼を奪われる。
「イリス!」
 思わずドロシーはそう呼んだ。
 ふと自分の手を見ると、宝石のような石が三つ。『不発』『虚言』『回復』‥‥。ふと、三つの言葉が頭に浮かんだ。それが、その宝石の名なのだ。
 ドロシーがイリスと呼んだ存在が、こちらを見た。言い知れぬ恐怖がドロシーを襲う。
「危ない! 戻れ!」
 トント老師の声が、ドロシーを元の場所に引き戻した。
「イリス‥‥。宝石‥‥」
 そうだ。私は何度もあの世界に言っている。イリスと関わり、結晶を手にしたのだ。
 細かい部分までは思い出せ無いが、ドロシーは、あの世界での冒険を思い出した。

●箱入り娘

 第一無菌室。公には事情があって、現在使用不能と成っている場所だ。中の様子を様子を伺う影二つ。
「陽曼様。くれぐれも、ここから出てはいけませんよ」
「はい。わかりました」
 看護士の言葉に陽曼は笑顔で頷く。だがその優しげな表情にはどことなく覇気がない。
「確認するようですが。貴方の病気はとっても敏感なものなのです。大気中の菌と触れただけで再発しかねません。窮屈ですが‥‥」
「‥‥ふふっ。そこまで無理しませんよ。安心して下さい」
 陽曼の言葉に看護師は頷くと、病室を出て行く。
「‥‥病気? そうなのか?」
 嶺司の疑問に、黒井・華麗は首を振った。
「いえ。彼女を監禁するだけの口実だと思います。特に異常らしき異常は見られませんし‥‥」
 とはいえ、万が一と言う事もある。
「ふむ。とにかく、この辺りの資料を探ってみるとするか。おそらくカルテに‥‥」
 モローアッチ教授らは、直ちに移動。患者のカルテが納められた病院のカルテ室に忍び、資料を漁る事、暫し。
(‥‥ありました!! 陽曼さんのカルテです!!)
 と、目当てのカルテを見付けたあやめが頭上にそれを掲げてみせる。蓮華はそれを受け取ると、懐中電灯で照らしつつ内容を眺めた。
 カルテ上は肉体的に異常無し。但し心因性の病。
「某名門旧家のお嬢様で、発作的自殺が警戒される要監視な鬱病と言うことになってますね」
 家の体面と本人の保護の為、無菌室が必要な難病と言う形での隔離である。これは現代の座敷牢と言うべきか。
「陽曼を逃がさないために洗脳‥‥。いや、正確には病気と思い込ませた!?」
「なるほどな。自分は病気だと思いこんでいると言うことか‥‥」
「つまり陽曼は無菌室から出ても身体には影響はないのか。ドンキーめ‥‥やってくれる」
 モローアッチ教授は冷静に、嶺司は忌々しげに、この事実を受け止める。
 漂う、何ともやりきれない空気。
 破ったのは、あやめだった。
「そうとわかればこんなところから早く救出してあげましょうよ!! 貴方は騙されてるだけだって!!」
「しかし‥‥。洗脳されているとなると説得は難しい‥‥」
 あやめの言い分は正しい。だが、陽曼の状態を考えると‥‥黒井・華麗は逡巡した。
「あ!! 待って下さい!! いきなり話しかけても‥‥!!」
 蓮華の制止は僅か、間に合わなかった。

●お騒がせします

「さて、ここが陽清さんがいる病室だな」
「えぇ。どうやら定期的な血液検査を行っているとのことですが‥‥」
 シンジに頷く天野つばさ(ja0087)は、言葉を濁し手元の資料を確認するが、その表情はどうも腑に落ちないと言った様子だ。
「病院なんだ。血液検査ぐらい普通じゃないのか?」
 その様子に大十字生(ja2151)は、首を傾げた。
「ううん。こっそり後をつけてたんだけど‥‥。検査室とは別の部屋に向かってたのよ」
「それは‥‥」
 だが、大門光(ja2298)の指摘に、生も気付く。つばさ達が何を懸念しているのか、を。
 果たして、漆原祐(ja0289)が沈痛な面持ちで告げた。レーザースキャンで鼠に化けて手に入れた陽清の資料を眺めつつ。
「やはりあの血液。クローン技術か何かに使用されている可能性は高い‥‥」
 一瞬落ちる、沈黙。
 忠志は頭を切り替えるべく、皆を見回した。
「問題は‥‥ ジョーカーの襲撃ですか」
 自分達が潜入出来たのだ。同じタイミングでジョーカーが潜入していてもおかしくないと忠志は考えている。
「彼らも陽清さんを狙っているはずです。警戒を怠らないようにしましょう」
「念のため逃走経路は確認済みだ。万一には備えておいてくれ」
 秋月・桔梗(ja2093)と十文字ショウ(ja2167)に皆が頷いた、時。
 つばさが人差し指を唇に当てた。
「看護士が出て行きましたよ。接触するなら今です」
 息を殺して看護士の様子を見守るも、看護士はこちらに気付く様子もなく立ち去って行った。完全に気配が消えるのを待ってつばさは合図を出した。
「ではくれぐれもジョーカー。特にクビシメールのような極悪の手合いには気をつけてな‥‥」
 生は言って、病室のドアを開けた。
「大人数で失礼するぞ」
「‥‥あれ? 貴方達は‥‥」
 突然病室に入ってきた来たジャスティス達に陽清は驚いた様子でシーツを握った。
「ごめんね陽清さん。いきなり驚かせちゃったでしょ」
 状況が分からず怯えている陽清に光は出来るだけ柔らかな口調で話し掛けた。
 だが彼女は警戒を強めるばかりだ。それもしょうがないだろう。見知らぬ人間が大勢押し入って来た人間を誰が信用出来ようか。
「あっと‥‥。話せばながくなるんだが。俺達はアンタを助けにきたんだ」
 助けを呼ぶためにナースコールを押そうとする陽清を祐が慌てて静止すると、陽清はナースコールを手にしたまま警戒を露わに訊ねた。
「‥‥助けに? どう言うことなの?」
 穏やかな笑み。情熱を宿らせた素直な瞳。そんな祐の単刀直入に、陽清に困惑が浮かぶ。
「俺もこの施設に検査入院で数日いたんだがな‥‥。看護士の動きがおかしいと思ったことはなかったか?」
 シンジが陽清に訊ねる。実は彼自身隔離、先程まで病棟に居た身だ。
「コイツはちょっと特殊な体質をしてるんだがな。何度も検査を受けさせられたりしたんだよ」
 シンジの言葉を十文字ショウが補足する。
(いや、宇宙人でクローン。地球人基準だと信じられない結果が出てもおかしくない! それにアンタ! 秘宝褌[百式]のせいで検査の時、大騒ぎになっただろ!)
 思わず突っ込みそうになる祐。生来の突っ込み体質を押さえるのに必死。
「僕も検査途中でいきなり強制入院になりましたよ。絶対安静。緊急手術が必要かもしれないとさえ言われました」
 忠志もシンジの言葉を裏書するが‥‥。
「いや、アンタは吸血鬼の血統で改造人間。そもそも常人と違うし、レントゲン見た医師に身体のあちこち金属片が食い込んでると思われたんだってば!」
 今度は、祐。堪えきれずに呟くように突込みが洩れた。幸い、その声が陽清に届く前に他の者の声が遮った。
「‥‥どうです。何か心当たりはありませんか?」
 桔梗の必死な様子に、陽清は少し毒気を抜かれると、ぽつりと返事をした。
「検査‥‥ 毎日血液検査はあったけど‥‥」
 困惑だけだった陽清の顔に、不安が混じった。
 その時だった。
「‥‥!? 今、悲鳴のようなものが聞こえませんでしたか!?」
 聞き取った忠志に、つばさの顔に緊張が走った。
「あちらは確か‥‥第一無菌室‥‥」
 咄嗟に廊下に出て様子を伺う忠志。
「しまった!! ジョーカーに先を越されたか!?」
 シンジ達に躊躇はなかった。即座に病室を飛び出す。
「どうやらちゃんと説明してる暇はなさそうだ!! 待っててくれ。すぐに戻ってくる!!」
 状況が飲み込めずキョロキョロしている陽清に十文字ショウはそう告げると、彼も慌ただしく立ち去って行ってしまった。
「え‥‥ あ‥‥ ちょっと‥‥!?」
 一人取り残された陽清は何が起こっているのかさっぱり把握できず、どこか途方に暮れたように視線をさまよわせていた。

●知恵の書を紐解く時

「敵らしき影もなし‥‥よし」
 指先を伸ばし、視線の先に向けて突きつけ、ライヴス・グランドクロス(ja2194)は周囲の警戒を行っていた。その大仰とも言える動作の前に一般人であれば気圧され、近付こうとも思わないだろう。
「えっと‥‥そんなに神経質にならなくても‥‥」
 そのあまりといえばあまりに大げさな警戒っぷりに陽月は少し困った表情を浮かべた。
「とは言ってもあなた達を狙っている奴らがいるのは事実です。気をつけておかないと‥‥」
 確かに早水絢(ja2363)の言うことは理解出来る。だが、陽月も銀河刑事の端くれ。最低限自分の身を守ることくらいは当然な訳で‥‥。
「あまりゆっくり出来ないかもしれませんけど。何かあれば私達がなんとかします。お任せ下さい」
「うう‥‥」
 自らの全てをかけてでも実行しそうな霞沢絵梨(ja1309)の勢いに陽月は小さく唸る。
「ありがとうございます。ランもみなさんがいてくれて喜んでますよ」
 頼りになる者達の存在にララはランを抱きかかえて微笑む。
「あ、家事ぐらいなら私がやるわよ!! ランちゃんの側にいてあげて!!」
「そうですね。いつジョーカーが狙ってくるともわかりません」
「そんなこといわれるとゆっくりすることも出来ないよ‥‥」
 絢やライヴスの過剰とも思えるその勢いに気圧され、陽月は項垂れた。
「あ、でもランちゃんは眠ってますよ。気持ちよさそう‥‥」
 絵梨の目の前でランは気持ちよさそうに微笑を浮かべながら眠っている。母親の腕に抱かれて安心しているのか、それとも周囲に敵意を持ったものがいないためか、その笑顔は天使のようにも見えた。
「眠れるうちに眠っておいたほうがいいですよ。今は大丈夫そうです」
 周辺の監視結果を受け取り、ライヴスはそう告げた。
「無理しないで休んでおけば? 貴方も仕事で疲れてるんでしょう?」
「そう? それじゃあ‥‥お言葉に甘えて‥‥」
 緊張していたようだったが、それ以上に疲れがたまっていたのだろう。ララにそう答えてすぐに陽月は眠りについた。

「さて‥‥『知恵の書』に関することよね。『蘭さん』から何か話をききればいいんだけど‥‥」
「また彼女が現れるのを待つしかありませんね‥‥」
 絢と絵梨は陽月が完全に眠りについたことを確認すると、その様子を見守る。
「‥‥蘭」
 心配そうに見守るララの前で陽月は深い眠りについている。この状態であれば本人の意識はほぼ完全に眠っているはずだ。
「まだ反応はないですか‥‥。警戒しているのでしょうか?」
 しばらく待っても変化が現れないことにライヴスは首を傾げる。
「複雑よね‥‥。自分の子供が親友の生まれ変わりだなんて‥‥」
「彼女が私達に心を開いてくれればいいのですが‥‥」
「大丈夫‥‥きっと小さな『ラン』が伝えてくれているはず‥‥」
 絢や絵梨の言葉にララはそう答える。不安を抱いていないはずもないが、それ以上に『ラン』も『蘭』も‥‥二人とも信頼している。そこに揺らぎなどあるはずがない。
「あ‥‥。陽月‥‥さん?」
 その直後、ライヴス達の目の前で陽月がゆっくりと起き上がる。その表情は穏やかで‥‥その視線は周りにいる者達を慈しんでいた。
「‥‥ふふ。わかってるわよ、ララ。ここにいる人はみんな信頼出来る人。『私』に優しくしてくれていたもの」
 陽月の口から漏れた声。それは微妙に先ほどまでとは違う。
「蘭‥‥なのね‥‥」
「私にわかることであれば話すわ。なんでも聞いて‥‥?」
 ララの問いに頷き、陽月の身体を借りた『蘭』は穏やかな笑みを浮かべた。

 これで解ったことの殆どが、既になんらかの形で入手していたものであった。また、知恵の書を読むには非常なエネルギーが必要で、使える時間は少ない事もハッキリした。
「質問を整理して、絞らないと効率悪すぎ」
 後で話を聞いた陽月は、吐き捨てるように言い放った。

●助けて!

「は‥‥ 離して下さいっ!!」
「だから、病気など嘘だと言っているだろうが!! 現に部屋から出ても何も発病していない!!」
「大丈夫です!! 信用して下さい!!」
 論より証拠。
 怯える陽曼を病室から引きずり出した嶺司とあやめは、焦れたように言葉を重ねた。
 だが、その事実を理解させようとすればするほど、陽曼の抵抗は強まり。
「落ち着いて下さい!! ちゃんと状況を説明しないことには‥‥」
 状況の悪化を止めようとするルートだったが、近づく足音に気付き表情を険しいものにした。
「ジョーカー!? やはり貴方達も潜入していましたか!!」
「助けて下さい!! この人達が無理やり‥‥!!」
 桔梗を認めた陽曼が、助けを求めた。
「彼女を強引に連れ去ろうとしたのですね。そうはさせませんよ!!」
 助けを求める陽曼を目の当たりにして忠志が嶺司に飛びかかった。
 その一撃を往なし、黒井・華麗はその怒気を真っ向から受け止め反論。
 おかしい。ジョーカーに戦意は無い。場所が病院なだけに、ジャスティス達も一先ず矛を収める。
「貴方達、何も判っていないのね。彼女は洗脳されているのよ」
「証拠のカルテも発見しました。間違いありません」
 だが、十文字ショウには黒井・華麗の反論も、ルートの主張も、俄かには信じられなかった。
「ともかく。貴方達が陽曼さんに何をするかわからない以上、連れ出させるわけにはいきません!!」
 つばさの発言に、
「そうだ。信じられるか!」
 わが意を得たと戦闘態勢に入る生。それを見て無明大使(ja2259)は呆れた声を出した。
「‥‥馬鹿が。判らず屋め。わざわざ入院患者巻き込むとは‥‥それでもジャスティスの積もりか?」
「なんだと‥‥貴様っ!!」
 無明大使の言葉に逆上し、生は悪滅大聖エビルベインに変身。ドラゴンスレイヤーで斬りつけながらエルダースマッシュを放つ。
「待てよ! これ以上騒ぎを大きくするのはまずい!!」
 だが、祐の制止は遅すぎた。エビルべインは聞く耳を持たず一人ジョーカーに襲いかかる。
 無明大使の躱した攻撃が壁にヒット。噴出す気体。
「Σこれは! ヤバイ酸素だ」
 次の瞬間けたたましい警報音に包まれた。
 病院にはもう完全に気付かれてしまっただろう。
 開き直ったエビルべインはなおも陽曼を奪還しようとするが、戦うには余りにも不利な状況に陥っている。
 バラバラとした足音が次第に近づきつつあった。
「だめ‥‥ 手遅れよ!! すでに警備員が向かって来てる‥‥!!」
 彼らは只の一般人。単なる警備会社の人間で、ジャスティスが無闇にやっつけてしまってはいけない存在だ。光はこれがもう限界だと判断した。
「ワシ達の目的は陽曼であってお前達ではない。退散させてもらうぞ!!」
 モローアッチ教授はマントを翻して窓から飛び出して行く。その後を陽曼を抱えた嶺司や他のメンバーが追って出て行く。ジョーカーの鮮やかな撤退だ。
「助けて‥‥ 助けて下さいっ!!」
 陽曼の悲痛な悲鳴を残し。
「待て‥‥ 逃がすかっ!!」
 ジョーカーを追おうとするシンジ。
「ダメだ!! すでに警備がしかれている。奴らの言うとおり一般人を巻き込んで戦闘はできない」
 そんな彼の腕を引いて、悔しげに制止する十文字ショウ。
「今の騒ぎで陽清さんの部屋も警備が配置されているはずです。ここは引くしか‥‥」
 忠志もまた、悔しげに陽曼の使っていたベッドに拳を振り下ろし、苦渋に満ちた決断を口にする。
「ここまできて‥‥ くそっ!! 逃げるぞ!!」
 シンジは病室を飛び出し、警備員を押しのけながら逃げて行く。その後ろを他のメンバー達も追って行く。
「すまない‥‥ 俺のせいで‥‥!!」
 シンジの後に続きながら、項垂れる悪滅大聖エビルベイン。
「今は逃げることに集中して下さい。こちらの警備が手薄です!! ついてきて下さい!!」
 桔梗は苦い思いを振り払うように、皆を叱咤激励しながら先導するのだった。

●陽動組

 さて、お話は少し戻る。こちらのメンバーは陽動なので、既に全員変身済みだ。
「‥‥どうやらわかる範囲に陽曼はいないみたいね」
 紅の亡霊(ja1573)は慎重に気配に気を配りながら背後に待機する仲間達を呼び寄せる。
「よし、では陽動作戦開始じゃ。爆弾を仕掛けるぞい」
 スティンガードラゴネス(ja1952)は腕が鳴るのか、ボキボキと拳を鳴らす。
「我々の目的はあくまで陽動だが、陽曼、もしくは陽清を見つけたら確保するのを忘れるなよ」
「わかってるわよ。さぁ。邪魔者を誘導してらっしゃい」
 ゲパルト(ja0397)が注意を促すと、紅の亡霊はうるさそうに眉根を寄せつつリビングマスコット達に指示を出した。
 リビングマスコット達は頷くと散り散りにいずこかへと散って行った。
「まずは配電盤を破壊しておくかの。‥‥っと、教授殿の妨げにならぬよう、通信設備のみ破壊にするかの」
 壁に埋め込まれた配電盤の扉をこじ開け、スティンガードラゴネスは細工を施してゆく。
「ゆけ! 戦闘員ども!! 資材を根こそぎ奪うのだ!!」
 今後の活動のために釘を刺され、しぶしぶこちらに回ったデモンドール(ja2313)もダークスターから借り受けた戦闘員達に陽動の指示を出す。普段の話し方でパレては事だから、苦労してダークスター風な台詞回しに徹する。
 これはあくまで陽動。モローアッチ達が無事病室の陽蔓を連れだせるようにサポートするのだ。
 警報音が鳴り響き、モローアッチから陽蔓を確保したとの連絡が入った。
 ジャスティスが騒いだせいであっと言う間に病院敷地内は警備員で一杯になってしまう。
「おっと、邪魔はさせんぞい!!」
 スティンガードラゴネスはモローアッチを追おうとする警備員達に煙幕と共に紅の亡霊が連れていた蛇を放った。
「うわぁぁぁ!! 蛇だぁぁぁぁぁぁ!!」
 突然現れた蛇の大群に警備員達は完全にパニック状態に陥っている。
「ふふ。すっかり術にはまっちゃったみたいね」
 その様子を紅の亡霊は満足げに眺める。
「警備員はひきつけることに成功したな。そろそろ引き上げるぞ」
 その健脚を以って警備員達を混乱させ、モローアッチ達の逃走も確認したゲパルトはメンバーに合図をする。
「しかし‥‥。ジャスティスの姿がみえんのぅ。この騒ぎに気が付かないことはないと思うのじゃが‥‥」
 スティンガードラゴネスは首を捻るがそれもそのはず。自爆したジャスティス達は別ルートで既に逃走しているのだから。
 彼達は、まだその事を知らなかった。

●母離れ

 色々慌しい時期だが、現在デファクトのアカツキ傅役となっているクビシメールの希望と言うならば、時間を作らぬ訳には行かないアレクセイであった。
 何の話かと聞いてみれば、
「あんたが望むならよ、今後もガキの保険役になってやっていいぜ‥‥。但し、俺の言う条件も飲んでもらいてえ」
「必ずしも出来るとは言えないが、どんなことだ?」
 聞く耳は有りそうなアレクセイ。
「条件ってのぁ‥‥」
 曰く、彼がアカツキの教育に好ましからざる者と考える連中。すなわち秘密結社『修羅界への扉』の一派をELOの中枢から遠ざけ、アカツキに近寄らせないようにすることであった。
「もうな、あいつらの仲良し偽善者ごっこにはウンザリしてんだ。もしこの要求が『法外だ、飲めねえ』ってんならそれでも構わねえぜ? アレクセイの大将、あんたのガキの面倒は金輪際見ねえだけだからな。他の組織はともかく、修羅界の連中はELOの為にならねえ‥‥俺はそう思うぜ?」
 アレクセイは笑い、
「先ずは公(おおやけ)の話をしよう。ELOはジャッカル様より引き継いだ組織。元より何人の私物化も許す積りは無い。だが‥‥敵対せぬ限り、中立的立場を取るのもジャッカル様以来の原則だ。提言に利あらぱ採用し、害があればこれを拒む。問題はあるか?」
「つまり。やつらが中枢に居座る事を認めた訳じゃ無く、単にメリットがある意見だけを採用しているってことか?」
「そうだ。ELOに不利益をもたらす事など許しはしない。それが何人であってもだ。アカツキもオリヴィエもその例外ではない」
 アレクセイの言葉に、一先ず挙げた拳を下ろすクビシメール。
「納得したか? では、私(わたくし)の話だ。さっきの話では、アカツキに近寄らせないようにしろと言っていたな」
「ああ。腹ん中と出入口貸しただけで偉そうに母親面してやがるインド女も例外じゃねえ」
「つまり、甘やかし過ぎて為に成らんと言うわけだな」
「なんだ。わかってるんじゃねぇか」
 拍子抜け気味のクビシメールに、
「もう、下手な怪人だと、手も無くあのガキに殺されるんじゃねーの」
 アカツキの、能力・体力・生命力をギリギリの線で計りつつ、クビシメールが与えた数々の試練。
 確かにこれによって、アカツキは飛躍的な成長を遂げている。この手際のよさは、アレクセイ配下のキマイランズや森の民すら舌を巻いていた。
「な、そうだろ。ここまで強くなったガキだ。もう母親は邪魔にしかならねぇ。アカツキの為を思うんなら、思案のしどころだぜ」
「赤ん坊に母親は必要だ。だが確かに、そろそろ母親から離す時期が来ているな」
 アレクセイは、アカツキの成長のためクビシメールの提案を承諾した。彼の言うとおり、既に母親べったりでは、拙い段階になっていたからだ。

●これでいいガニ?

「さて、この辺りで間違いないかのぅ?」
 周囲を見回す首領Q(ja2322)に、ワルモン大佐(ja0999)は
「うむ」
 と大きく頷いた。
「請求書の住所はここなのである!!」
「お土産はもってきたが‥‥。 これだけで接触できるかどうかじゃな」
「我輩が特別制を作ってきたのである!! この匂いがあれば奴をおびき寄せることなぞ造作もない!!」
 懐疑的な首領Qとは対照的に、無意味に自信満々なワルモン大佐。
 その様子に首領Qは、つい不安を口にした。
「そう上手く行くかのぅ? ここは製造工場の前でもあるわけじゃ。匂いをかぎ分けることが‥‥」
「何か言ったガニ」
「‥‥。あっさりきたな」
 これには流石のワルモン大佐も、やや茫然とした。
 同じく絶句していた首領Qだったが、そこはそれ。
 一つ咳払いをするとガニガニちゃんに向き合った。
「あー‥‥。ごほん。初めまして、ガニガニちゃん。妾はDS団のQと申す者。そなたを迎えに参った」
 ガニガニは頬を赤らめ
「大胆ガニ。こんな綺麗な人から告白されるとは、生きてて良かった気がするガニ」
 首領Qは、意外と純情な反応に驚きはしたが悪い気はしない。
「それは元々土産として持って来たものだ。欲しければやるぞ」
 ワルモン大佐の言葉に何やら奇妙な動きを見せるガニガニちゃん‥‥。喜んでいるらしい?
 これを好機と首領Qは畳み掛けた。

「ガニガニちゃん。摩訶混沌界、ここにありと示すのは、この混乱の時代を置いて他に無い。この機を逃せば、またしても長き屈辱の日々を耐え忍ばねばならぬ。我らはガニガニちゃんの味方。我らと共に立ち上がっておくれ」
「うむ。味方になるならばブロン液はいくらでも提供しよう」
「ほんとカニ。だったら味方になるガニ」
 ガニガニちゃんの答え? に首領Qの顔が輝いた。
「よし。交渉成立じゃ!! 今後とも宜しく頼むぞよ!!」
 満面の笑みでもって、固い握手を交わす首領Qとガニガニちゃん。
 そんなどこか感動的ですらある光景を見ながら。
「‥‥。なんと言うか。これでよかったのか?」
 ワルモン大佐は一人、首を傾げていた。こいつ、本当に役に立つのだろうか? と言う意味で。

●豆の恨み

「くるっく〜。ま゛〜や〜さんぁぁぁん‥‥ふっふっふっ」
 いかにも沸騰した様子で破軍魔夜の前に立ち塞がるピジョン。
「ふぇ、ど、どどど、どうしました?ピジョンさん」
 その尋常じゃない様子に魔夜は滝のような汗を流しつつ。愛想笑いを浮かべて訊ねてみるが、ピジョンの怒りの理由に心当たりがあるらしくその瞳は明らかに泳いでいる。
「やっぱり、身に覚え、あ・る・ん・で〜す〜ね〜」
「まあまあ落ち着いてピジョン殿」
 そんな二人の様子を見かね、モローアッチ教授は宥めるようにピジョンの肩に手を置いた。
「おお〜、修羅場修羅場〜」
 たまたま通りかかったハミュンは殺伐とした空気に気が付くと、入口から顔を覗かせてワクワクしながら遠巻きに観戦モードで見守り始める。仲裁に入る気は特に無いようだ。
「ぐ、グーテンです、ハミュンさん。助けて」
 魔夜はそんなハミュンを目敏く見つけると、強引に部屋に引きずり込む。
「にゅお〜っ!? 引きずり出されてしまいましたー!? みなさん、こんばんはですよぉ〜」
 ズルズルと引き摺られながらハミュンは皆に挨拶する。
「豆コネクションのほうで対処したからいいようなものの。大豆需要が増えて‥‥品薄に」
 モローアッチが必死に宥め続けているがピジョンの怒りは収まりそうにない。
 普段温厚な彼を一体何がこれほどまでに怒らせているのだろうか? 答えは魔夜が知っていた。
「と言うか、やはりドンキークエストは洗脳プログラムでビンゴでしたか。ピジョンさんが怒るまで成果が上がっていると言うことは」
「あらら。大豆が高騰すると納豆も豆腐も高くなっちゃいますねぇ。貧乏生活の強い味方なのに」
 甲も同意するように溜息を吐く。彼の気持ちを思うと同情を禁じ得ない。ピジョンにとって豆は生きる意味と言っても良いのだから。
「ま゛〜や〜さん〜ん。変なサブリミナル仕組んだのは、あなたですね〜」
「いえ、私が仕込んだのは、ドンキークエストで仕込まれた洗脳プログラムの洗脳の方向性を変えるプログラムなのですよ」
 ハミュンの後ろに逃げ込みながら魔夜は答えた。
「そうか。だそうだ、ピジョン殿。作戦の副産物として寛大になろうではないか」
 モローアッチはなおもピジョンを諌めようとしている。
 ピジョンの気持ちも分かるが、少なくとも魔夜の働きが無ければドンキーの野望の一端を暴く事は出来なかったのだ。
「足りない分は小金持ちな魔夜様が何とかしてくださるのでは?」
「いざと言う時は魔夜殿が責任を持って大豆を奢ってくれるだろうて。小銭が入ったそうだし」
 フラウの言葉にモローアッチも頷く。結果はどうであれ魔夜はピジョンの生きがいを奪ってしまったのだ。ここは犠牲になってもらうしかない。
「‥‥お豆さんに関して容赦はないと思いますよー、ピジョンさん。せめてチョコレートとかなら問題なかったかもしれませんが」
 とはいえ、豆の高騰ぶりときたら店頭と言う店頭から豆が消える程だ。魔夜にはそれ名入りに覚悟してもらう事になるだろう。
「むしろ、ELOの貯蓄大豆を一気に売りさばいて資金を潤滑にしてみるとか?」
 ピジョンの気持ちは解りつつも商売人気質のハミュンには今回の騒ぎは好機ではないかと考えずにはいられない。
「ハミュンさん。そう言うのは既に手遅れですよ。乱高下で、何人もの成金と破産者が出たそうです」
 そんなハミュンに冷静な突っ込みを入れるピジョン。ようやく怒りは収まったらしい。
「‥‥なるほど、洗脳効果が出て、直ぐ対処されたのが複数回あったから、乱高下になったと」
「で、対象を大豆にしたのはなぜですか?」
「‥‥えと、先物取引で最初に思いついたのが穀物や豆類で、穀物だと備蓄があってあまり値上がりしなさそうでしたので、豆類を。‥‥で、豆と言ったら大豆かなと。色んな食品に使われてますし」
 魔夜はパソコンのキーを叩きながらピジョンの話に耳を傾ける。
「投機筋がおかしな商売してました。多分、変な効果が彼らに‥‥」
 ここから話は市場関係に脱線。途中から参入した者の話題提起やらで外れた話題はついに戻らなかった。
 時が過ぎて場もお開き。一人また一人と帰り、残るメンバーが僅かになって漸く、ピジョンは口を開いた。
「とりあえず。福豆の在庫全部で水に流します。ほら、新しいのと入れ替える丁度いい機会じゃないですか〜。確か、覇軍神社には、25年物もあったはずですね〜
「‥‥ぁぅ。りょ、了解しました。福豆の在庫全部ですね。(ぁぅぅ、今、市場からの買い付け厳しいですのにー)」
 ピジョンの要請を魔夜に拒む権利はない。ドンキーのからくりを暴くためとは言え、支払う代償は大きそうだ。
 魔夜はガックリと頭を垂れた。
「に、25年物って。どんな味になっているのか〜?」
「‥‥うまいのかそれ」
 25年物の豆。まったく想像がつかず、モローアッチとハミュンが微妙な表情で顔を見合わせる。しかし魔夜の反応を見るからにそれなりに貴重な物らしいが。
「ありますよ。魔夜さん御歳(おんとし)10歳の『極凶おみくじ』とか、御歳4歳の『スカおみくじ』とかも、時々出てくるそうですからね〜。25年物は絶妙の黴付けで、旨みが増した奴を以前戴いたことが有りますよ〜」
 塞翁が馬と言わんばかりにピジョンは豆を想って頬を緩ませた。
「鰹節ですか?」
 ぼそりと突っ込む甲
「と、とりあえず、倉庫の福豆は後日、ELOの方に発送させていただきますですよ。こ、これ以上昔の恥ずかしい話を出されたら‥‥。だされたら、もう再起不能なのです」
「わ〜い」
 ピジョンの口からこぼれ出る謎のワードの数々に慌てる魔夜。部外者にはさっぱりだが彼女的にはかなり恥ずかしい話らしい。ついに魔夜は床に膝を着きOTL状態。
「ぁぅぅ、福豆用の豆、新しく買い付けないと‥‥消耗品費、今月は高くなりそうなのですよ」
「まあまあ。これでも食べて。元気出して下さいね〜」
 取り出したのはグリンピースのモンブラン。ピジョン謹製の品が、ざっと108個。
「あ、ありがとうございますです‥‥」
 モンブラン好きは私じゃなくて従妹の方なのですけどね‥‥と思いつつも空腹だった事を思い出してパクついてみる。
「みゅみゅみゅみゅ!」
 横から手が出るハミュンは、魔夜の3倍のスピードで平らげて行く。
 ものの10分も掛らずに、モンブランは腹の中。比率はおよそ1:3。
「1個だいたい354kcalです」
 食べ終えた頃にピジョンは魔夜に告げた。
 思わずむせる魔夜。
 別の意味で容赦が無かった。
 成人男子の必要カロリーは2,500位だから、27個食べた魔夜で4日分近いカロリーになる。
「みゅみゅみゅみゅ! 我輩を太らせて食べる積りなのだね!」
 今後のきついダイエットを思ってOTL状態の魔夜の後ろで、ハミュンが天然なボケをかました。

●頭の痛い後始末

 ピジョンが落とし前をつけている頃。ジャスティスの秘密基地でも、頭の痛い後始末が待っていた。
「何とか収めたが‥‥頭が痛いわい」
 有口から見せられた、ネット上の某巨大掲示板。警察やマスコミは、なんとか出来たが、一般人の噂までは止められなかった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
184 名前:名無しさん 投稿日:2010/10/11(月)06:27:23 ID:2lIcTQjT
 うちの近所の病院で暴動が起きたっぽいんだが、
 全国ニュースどころか地方紙の朝刊にも載ってない。どう言う事だ?

185 名前:名無しさん 投稿日:2010/10/11(月)06:59:16 ID:TWnNE0uT
 そういやあそこの病院の隔離病錬から患者が二人消えたらしい。
 そこから一番近い非常口を開けた形跡があったとさ。

186 名前:名無しさん 投稿日:2010/10/11(月)06:59:16 ID:F1C6n0d3
 そいつ、地球上の物とは思えない不思議なウイルスに感染してたらしいなw

186 名前:名無しさん 投稿日:2010/10/11(月)12:49:16 ID:AU76TeXd
 すげーや。そいつ宇宙人かも。

                (中略)

888 名前:名無しさん 投稿日:2010/10/18(月)04:01:33 ID:YllXzqpk
>>187
亀レスだがw
ま、お笑いネタと言うことで。

国連に宇宙人担当大使?Xデーに人類代表 本人全否定
www.asahi.com/international/update/1018/TKY201010180105.html?ref=rss
>国連が宇宙人と最初に接触する担当者を任命――。
>英サンデー・タイムズ紙などがこのほど掲載したこんな記事が話題を呼んだが、
>任命されたと言う当の本人が否定。
>初の「宇宙人担当大使」の人事話は幻に終わった。

889 名前:名無しさん 投稿日:2010/10/18(月)07:05:53 ID:S6PVUp83
>>388
鳩山か?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 幸い、途中から完全にネタ扱いと成って、大した問題になっていないが、頻繁に起こると拙過ぎるタイプのお話である。
「お前達には『適材適所』と言う言葉の意味まで教えんといけんかのう‥‥?」
 苦い顔の有口であった。

●新しい星

 一連の、ジャスティスとジョーカーの動きが一段落した頃。
 地球から見て金星と土星の間に位置する1等星が生まれた。所謂新星では無い。なぜならば、その輝きはほんの2時間ほどで消えてしまったからだ。
 これを受けて、陽月はジャスティス達に情報を告げる。
「夕べ。不思議な新星もどきが有ったけど、木星と太陽を結んだ線を延ばしたアステロイドベルトで爆発が確認されたよ」
「ひょっとして、それ。イグザリオンと名乗るメッセージを発信した小惑星帯の付近ですか?」
 緋袴冴子が身を乗り出す。
 黙って頷く陽月。
「爆発の後、宇宙船の反応を何も感知できなかったことからして、イグザリオンだったら、今は異次元空間にいると推測されるよ」
 あの光は、再生したイグザリオンの産声なのだろうか?


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■プレイング(MVP)


■ja0289 K=9/漆原祐
え・挑戦:
【白い巨塔】
つばさに同行し、陽清が透析を受ける病院に潜入する。

途中でつばさとは別れて姉貴と合流し、前回の経験から同様の施設がある場所の当たりをつけて、レーザースキャンでネズミに化けて通気口からそこへの潜入を試みる。
陽清のメンテナンスを行う以上はそれなりの設備が必要だろうし、それにもし陽清の正体に陽蔓が何らかの形で関わっているのだとしたら、その材料の仕入れ先に陽蔓がいる可能性は高い。
解析関係は姉貴に任せ、こっちは施設を見て回って手がかりになりそうな物を探す。
たとえ僅かな欠片でも、繋ぎ合わせれば全体像が見えてくるかも知れないしな。
シュレッダーにかけられる前のタグや書類などを手当たり次第調べてみる。

敵に見つかったら、騒ぎになるのを避けてとにかく逃げる。
物陰で再度レーザースキャンでネズミに化け、通気口から脱出する。
ダミーボムは最後の手段。使う時は地上の仲間に連絡を入れる。



■ja0567 マザーアリサ/アリサ・エスクード・須藤
【お】黒い集いの野望:挑戦

>目的
今後の行動が一時的であれ黙認されるようこぎ着ける

>動機
無闇に行動して生まれるのは誤解だけ
ならば先にこちらの行動におけるメリットを提示する

>手段
目標はあくまで黙認までこぎつける事
ただ最初から目標値を前提に話を進めると、
そこから引き下げを喰らうため敢えて高い部分から交渉
提示する目標は「ELOを通して関連するJokerに黙認してもらう」
本来の目標は「ELOだけでも黙認してもらい、それを実績とする」

>行動の真実
ヘレルの長子の誕生。
アレクセイでも、アカツキでもなく、第三の存在からの誕生をもくろんでいる。
成功しても、失敗しても、こちらの痛手だけで済む事。
逆に言えば排除はいつでも可能。
ただし成功の可能性は不明。だからこそ今回の実験は必要。
実験と今後の計画を進めるには、どうしても黙認は必要となる。

重要なのは、アレクセイ本心にとって何が最良なのか、訴える事。
詰めは開花【交渉】で。



■ja1314 ネクロエンペラー/如月・達哉
行動:か
方針:挑戦

【目的】
知名度を上げて如月グループの社会進出を目指す。

【行動】
バニーレコーズのアーティスト、モンスターズの一員として参加。
形態は変身状態、女性形態で行動。衣装は女吸血鬼をイメージ。
担当はキーボード。
モンスターズの曲を演奏するけど時間が少しあるようなら新曲も演奏したいね。最近、テクノポップやJポップに興味があってね。ちょっと譜面を書いてみたんだ。

『Frontier』

いつもよりも青い空 今日は冒険日和だね
準備もバッチリ どこかへと出かけよう

見慣れた街角 いつものお店
狭い路地裏 街の大通り
なんだか不思議 わくわくの予感

さあ行こうよ 自分にとってのFrontier
夢 希望 恋 いっぱい詰まってる
とっても不思議 ドキドキの場所
一歩を踏み出し 冒険しよう

なんだが恥ずかしいけどドンキークエストを始める人へのテーマソングっぽく作ってみたよ。あとはテクノポップのインスト曲を披露するよ。



■ja1332 紫微たる紫水晶/破軍魔夜
☆行動
け:ドンキークエスト【挑戦】

☆目的
ドンキークエストの目的がHDDに洗脳プログラムかそれに順ずる物を忍ばせる事なら、それを利用して私達の都合の良い物に書き換えちゃいましょう

☆HDD解析
まず、HDD内のプログラムを全部調べ直し、ファイルが忍ばされたり書き換えられたりしてないかを調べます
ウィルス発動を防ぐ為に、MAC機かLinux機にLAN経由でドンキークエストの入ったPCを調べる形をとります
大抵はWIN機で発動するものですから、多少は安全でしょう

☆ファイル解析
怪しいファイルは徹底的に洗い出し、見つけられた時点でそれを改良できないかを調べます
洗脳プログラムなら、その洗脳の方向性を変える。例えば、毎日、大豆が食べたくなると言った感じにですね。
そして、それをウィルスとして何種か作り、流しましょう

☆ついでの作戦
後は、これが成功なら、大豆の値上がりは決まりますから、先物取引で資金稼ぎを行いましょう
‥‥上手く行けばですが



■ja1364 クビシメール/蛇嶋・絞助
く:アカツキ

>甘い人物じゃ台無しだ。充分強いアカツキに武将教育。
単刀直入、アレクセイの大将(jz0043)に直談判。
「あんたが望むならよ、今後もガキの保険役になってやっていいぜ‥‥
ただし、俺の言う条件も飲んでもらいてえ」

条件ってのぁ‥‥
秘密結社「修羅界への扉」の連中‥‥つまり糞薔薇(ja1035)とその取り巻き連中
(レプリカ馬鹿(ja1071)、アホ巫女(ja1555)、似非騎士(ja2226)、包帯女(ja2027)‥‥
とにかく全員だ)をELOの中枢から遠ざけ、アカツキのガキにも近寄らせねえようにして欲しいんだよ。
もちろん、腹ん中と出入り口貸しただけで偉そうに母親面してやがるインド女(ja1100)も例外じゃねえ。

もうな、あいつらの仲良し偽善者ごっこにはウンザリしてんだ。もしこの要求が「法外だ、飲めねえ」ってんならそれでも構わねえぜ?
アレクセイの大将、あんたのガキの面倒は金輪際見ねえだけだからな。
他の組織はともかく、修羅界の連中はELOの為にならねえ‥‥俺はそう思うぜ?



■ja1809 PoizonerNo.9/酉家・甲
【か:挑戦】
ライヴに参加、陽清さんと競演ですよー☆
そういや映画撮影にも呼ばれてるそうですけど、
ライヴシーンも映画に使われるんでしょうかね?
だったら問題なく出られるんですけど。

ピジョンさんにお願いして
「アルコール入りの極小注射器」を右手に取り込んで貰います。
握手した際刺さるように。
本当に彼女が人工物なら活動の阻害になるでしょうし、
人間だった場合でも後に残りにくいでしょう。
動き回る事によって回るように、時間を見て濃度調整。

そうそう、衣装としてピジョンさんに
バーサーク状態パーツを渡しておきますね。

[発明]
人が聞いて最も癒される周波数を持つ歌声が出る飲み薬を飲んでおく。
陽清が倒れたらパニックになるだろうし、自分の歌と仕込んである中和マシンで
騒ぎを収められるようにしないとー。

さ、バックバンドとしてきちんと役割を果たしましょう。
コーラスも陽清曲演奏も完璧に出来るように。
メインはあくまでも陽清、ですよ?



■ja2031 show・you/綿糸・翼人
い【挑戦】

■戦略
洗脳音波が陽清の中身が持つ能力ならば、音楽関連は陽清が担当するのではないか?
そして病院は単に「偽物が行く必要が有る施設」である可能性が高いのではないか?
すると映画の撮影には陽蔓さんが陽清として現れる可能性も考えられる。
と云う事で、そちらに「ja0744:ごんぶと」「ja0626:荒世」と共に「ja1430:黒井・華麗」の支援で入り込み
陽清(陽蔓?)を「安全に」確保しての離脱を行います。
また必要に応じ、黒井から受けた情報の拡散も行います。

■戦術
変身後に撮影現場に入り込み、必要に応じ(関係者車両として登録済みの)車へ変形する事でやり過ごしつつ
陽蔓さん(陽清?)の確保と撤退を行います。

ブーツの飛行機能は急遽駆けつける場合や、包囲から陽清(陽蔓さん?)を連れて離脱する際に使用します。

■戦闘
緊急時はニトロ醤油爆散を使用し退路を作り出します。

必要なら通信機の洗脳除去を起動。



■ja2108 ウェイブマン/波男
【か】挑戦
>目的
ザ・モンスターズの最終仕上げ

>動機
船頭のわたくしがモンスターズに参加せず誰が船頭を務めるつもりですか

>手段
酉家・甲主催のバンドの進出の際のプロデューサー。そしてマスコット。
陽清側と接触する際はあらゆる言葉であちら側を持ち上げる。
勿論それはバンドのためでもあるけれど、
テレビ業界の人間(?)としてのプライドも関係している。
とにかく双方にとって画となるシーンを多数用意する。
例えば、陽清との競演をバンドメンバーが喜ぶとか、
陽清とのデュエットにこちらが追随していくとか。
陽清のファン向けに彼女を持ち上げるパフォーマンスも指示。

>秘密道具
前回用意してもらっているはずの[抗ドンキー]入りの楽器を持ち込む。
マイクにも仕込んでおく。
楽器はブラフ、持ち込み厳禁とされても、
マイクだけはバンド活動の象徴として無理矢理押し込む。

>非常事態
変身してバンドメンバーと陽清を護る。
陽清護衛は便宜上。



■ja2163 ハウンズ/シーリィ・H
・お
作戦名:蝕

●出演交渉

交渉閃き使用
DQ好きの新人俳優の集まりで、ギャラは不要と電話で売り込み
対象:ja2198、ja2138、ja2303、ja1907、ja2189

●ロケ期間中

ニューロドレスで小さくなって義姉さん(ja1908)と待機
星が生まれる夜ってからには夜が鍵
皆で祈る、誕生とかいう場面を台本からピックアップ。皆に警戒を促す

>不祥事捏造
一度人間時装備に戻り
魔導神官の扇で陽清さんに成りすまし、体調不良な様子の目撃情報を作る
捕まらないように人通り少ない曲がり角で
義姉さんに近くに車で待機してて貰うね

>洗脳及び儀式に発展しそうな場合
おやすみ爆弾を投げて一部中断させる
戦闘員アジテートを使って混乱拡大

●ロケ終了後

コネ[マスコミ関係]使用、ネタを纏めてゴシップ好きの報道に売り込み
経費をケチった故の杜撰っぷりや
陽清さんは病気でも酷使されてる?とかファン心理に訴える物を
猛スピードで浸透してくドンキーに対する警鐘になればという淡い期待と実験



■ja2284 モローアッチ教授/ジェームズ・モローアッチ
【お】ジョーカーの野望【挑戦】

襲撃組:ダークスター殿、・プリンセス・G嬢、エミネ・プルーフ
陽清確保組:わし、アルゴ殿、ウォーロイド、クロームカウント、アビスロータス
(参加者増える可能性アリ)

作戦内容:
1.陽動組が病院内で陽動を行う。
2.その隙に陽清確保組が病院内に潜入して陽清を確保する。
3.確保後、陽動組は確保組を援護共に撤退を開始する。
4.ELOに用意してもらった円盤で撤退する。

行動タイミングは陽清は人工透析に来た時。尚スケジュールは萌に調べてもらうぞ。
病院内では、ピジョン殿提供の見取り図や資料を参考に行動する。例の無菌室も両方探索する予定。
無用の死者は出したくはないが、警備員とかには遠慮は無用。
常に無線機で連絡を取り合い、臨機応変な行動を心がけるぞ。
優先目標は陽清の確保。もし陽蔓嬢を発見したら彼女の確保を最優先とする。両方確保がベスト。

わしはドンキーにとって迷惑な存在になってみせるぞ。




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