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■「GALVA INVASION」第6ターン 全体イベントシナリオ 後半パート リプレイ

●作戦開始

「ハーイ炎さん。ご苦労様」
「ああ、大丈夫だと思うが、万一の時は任せておけ」
 作戦本部の警護に着く獅子堂炎(ja1806)に挨拶し、漆原静流(ja0368)は割り当てられた一室に入る。
 既に都府楼・南(ja1812)が来ており、静流を見るなり、
「さぁ。それじゃあはじめるわよ‥‥」
「えぇ。お手伝いするわね」
 静流はゆっくりとコンソールに就いた。
 刻一刻と入ってくる情報。それらを片っ端から解析するのだ。
「ここ。結構重要よ。もしどこかで不利な戦況になったら、フリーで動いてる味方に連絡して、可能なら援護に当たって貰うよう要請したりと、各戦局も見極めないとね」
 南はそう前置きし、
「ではまず事件が起こっているポイントを‥‥。ちゃんと見ててね」
 静流も心得たもので
「大丈夫よ。見落としはしないわ」
 相棒の頼もしい発言に、南は各地に通信を入れる。
「どんな小さなことでもいい。気がついたら教えてね」
 ガルバ(jz0090)の部下達が現れた地区は特に念入りに。
「‥‥今のところ異常はなさそうね」
 静流の言う通り、まだ情勢は動いていない。
「‥‥そうね。今の内に、もっと既存情報を解析してみるわ」
 南はモニターを静流に任せて情報整理と解析に移った。

●平和なひと時

「可愛らしいですね、赤ちゃんって」
 ララ・シュタイン(jz0037)の元にやってきた姫木さやか(ja0342)はランをあやしながらそう言った。
「一応、私は母親の先輩ですが、実は私の子供達って、あの子らが13歳の時に保護した私のクローンなので、出産及び赤ちゃんからの子育て経験は無いのよね」
 共にランの様子を見ている涼村ユイ(ja1082)はそう言って苦笑する。
 その息子、涼村シンジ(ja0931)を始めとするジャスティス達の見守る中、ララ達は平和な日々を過ごしていた。基地の中でとはいえ、一家の団欒のひと時の微笑ましい光景はジャスティスの面々に自分達が護るべきものを再認識させる。それはララ達一家だけではなく、それを通して映る平和に暮らす人々でもあった。
「この子が烈火さんの娘さんですか。私的には銀河刑事よりもカレー職人としての烈火さんのイメージが強いもので。この子も将来カレー職人を目指したりするのでしょうか?」
 まだ生まれて間もないランの未来を尋ねる雷鳳結依(ja1155)にその場にいた者達から笑いが零れた。

●予言の葉っぱに関わる者

 その頃、沢木陽月(jz0089)と霞沢絵梨(ja1309)は預言の葉事件の調査と収集に当たっていた。
「こちらが現在集められた資料になります。解読に時間が掛かって進展していないのですが‥‥」
「大丈夫です。古代文字は少々心得が‥‥」
 集められた資料を受け取り、絵梨は自らの手で解読を開始する。
「どちらでこのような知識を‥‥?」
「一応巫女なので」
 滞っていた資料の解析をテキパキとこなす絵梨の様子に周囲の学者達から感嘆の声が漏れる。
「この名称はなんでしょう」
 町中で回収作業を行い、集めた最新の資料も併せて調べるうちに予言の葉に関わる資料に妙な共通点を見出した。
 その名をデータベースで検索すると答えはすぐに出た。
 それは、ある新興宗教の存在。ただ、その名称は様々な事件に関与しているが、その行動には一貫性や統率された集団のそれは見出せない。
「立ち上げた真の理由はたった一枚の予言の葉を見つけ出すため‥‥ですか。でも、彼らの行動を見る限り詳細を知っているようには見えませんでしたが‥‥」
 絵梨も町中で何度かその宗派の人間と接した記憶はあった。だが、その何れも大きな目的のためにというよりは探させられているから探しているという雰囲気を持っていた気がする。
「何を企んでいるのかはこの新興宗教のトップに接してみないとわからないのでしょうか」
 絵梨はこの新興宗教の調査に乗り出している者達へ情報を流し、再び資料の山と格闘し始めた。

●会談準備

 ELO海底基地。
「お疲れ様です」
 研究者達にコーヒーを運ぶ皇牙・マコト(ja0103
「ありがとう」
 J・J(ja1439)は、ガルバに致命的欠点を与える研究に勤しんでいた。
「どうですか? 研究は捗っていまするか?」
 悲歌柴生(ja0105)が肩を揉む。
「おうおうおう。そこだそこ! ‥‥なんだもうお仕舞いか。まあいい。‥‥まずまずといったところか。簡単にいかないが解明したときの喜びから研究者はやめれないと言うものだ」
「あ。今のところ異常はないですよ。ちゃんと探りもいれています」
 マコトは柴生の言葉を察し先に答える。
「大変ですね〜。よからぬことを企む奴がいるかも知れないとなると」
「結果のみだけを求める奴はどこにでもいるものだ。けしらかん」
 微妙にJ・Jの会話があってない。
「やはり苦労して答えを求めることが重要なんですね」
 と、マコトの方から会話を合わせた。
「お手伝いできることがあれば手伝いますよ。いつでも声をかけて下さいね」
 柴生は言うが、どうにも話が噛み合っていないJ・Jであった。
 さて、そろそろアレクセイ・イディナローク(jz0043)が設けた、ジョーカー諸氏との会談の時間だ。マコト達は警戒も兼ねて会場へと移動する。不埒者は叩き出すと言う合意は既に出来ていた。

●海底の会談

 ELO海底基地とドッキングしたハルパー。ここが現在、アレクセイの拠点である。
「よう。なんだかんだで久しぶりだな。これ、お土産だ」
 猫目斑尾(ja0397)が、フランス製高級クッキーの缶を横に置く。
「あぁ。ありがとう。しかし俺はやはり‥‥」
 言い掛けるアレクセイの言葉の先を読んで、織部真白(ja0650)はにっこり。
「お酒はないよ。アレクセイさん、酔っ払っちゃうと話ができなくなるからね」
 妻と従卒に英雄無し。流石のアレクセイも真白に掛かっては形無しである。
「武士の習いで失礼する」
 右手に鞘を掴んで一刀を持ち、寒来刃夜斗(ja1056)は参上する。
「今日はすでにご周知のとおり、『森の民避難所』の組織改変の報告に伺いました」
 森の民を支援するジョーカー組織『森の民避難所』としては、組織Sの流れを汲むジョーカー組織DS団の存在が気懸かり。あるいはアレクセイとの全面対決も有り得るかもと、戦時体制へ移行したと説明する綿糸翼人(ja2031)。
「わかっている。立ち話もなんだ。みんな、座ってくれ」
 アレクセイは、面会を求めたその他のジョーカーを円卓に招いた。

 総じて、ジョーカー諸氏との話は上手く行った。これについてはシュリ辺りは随分と心配し、刃夜斗も万一の変事に備えて警戒していたのだが、幸いな事に取り越し苦労。
 元より。アレクセイにジャッカルほどの威令は無くとも、意味も無くケンカを売れる相手では無い。先ず、アレクセイ個人の戦闘能力と指揮能力については、セントラル本星での戦いで実戦証明されている。
 それに加えて、翼人さえもこの時知らされたのだが、兎にも角にも組織Sの流れを汲むDS団の連中すら、彼の依頼で協力していると言う事実が、様子を伺っていた者に侮れぬとの印象を与えたのだ。

 如何にして、アレクセイと仇筋に当たるDS団が協力体制を取ったのか。
 それは数日前に遡る。互いの腹のうちを探るジャブの応酬の後、アレクセイが、DS団の羅刹教授(ja2260)と森の民シンパのアンネ=ローレンシュタイン(ja1345)に依頼の形を取って、抱き込みを謀ったのだ。

「足の引っ張り合いでセントラルめに遅れを取らないために、情報の集約と配信を頼む」
 アンネ=ローレンシュタインは、うきうきしながら、
「ええ、その任務、見事にこなして差し上げますわ」
 と、即答し、羅刹教授は
「それは指令ではなく、依頼と解釈して宜しいな?」
 と、アレクセイを試みる。
「情報をいち早く一手に握る利の、重大さと有利さが判らぬ羅刹教授殿ではあるまい」
(ほう。これは中々‥‥。猫ではなくて狸であったか‥‥)
 羅刹教授は内心喜びつつも、気の無い風を装う。
「ならば上の決裁を仰がねばなりますまい。小生の独断でことを運ぶわけにもいかぬでな。
 恐らく、すぐにでもこちらに戻ってくることになるだろうが‥‥まあご心配めされるな」
 畳み掛けるようにアレクセイは語る。
「その位置を占めるならば、他人から乞われる意味の有利さもお分かりになるだろう」
 ここに於いて羅刹教授も手の打ち所と承諾した。
「言われずとも‥‥もとより、ジャスティスどもは組織Sとキマイランズの恩讐については把握しておらぬはず。ここで対立して付け入る隙を与えるよりは、手を握っておくのも対外的には宜しいでしょうな」

 元より、このような水面下の差し手争いなど、世の者は知らない。
 果たして。彼らの選択は、有象無象のジョーカーにアレクセイもDS団も侮り難しの印象を与えたのだ。

 さて、この日。代行であったブラッドピジョン(jz0036)の依頼を受ける形でELO代表に就任。地球においてもジャッカル後継者の位置に就いた。
 そして、内輪だけの食事会。森の民の子供も何人か居る。

 翼人は問う。
「‥‥ガルバは宇宙商人から得た物資で特殊兵器の開発をしているのではないかと」
 と。アレクセイはこくりと頷き、
「可能性はなくもないな。ここ最近商人が多く居ると言う地に奴らが出向いて‥‥。と、どうした?」
 彼の服の裾を引くちびっ子。隣に座る真白が、椅子から降りて少女の目線までしゃがむ。
「ん? お菓子が欲しいのかな? 食べる?」
 言って、真白はギクッとした。ここに子供達も居ると言うことは‥‥。察してアレクセイが真白に囁く。
「そうだ。一族を分けて来た。万一の場合、どちらかが生き残れば良い。そして、生き残りが復讐する力を持っていることが、一族の安全に繋がる」
「するとあちらはエカテリーナちゃんが?」
 頷くアレクセイ。
 子供達に懐かれ、しがみ付かれた重さによろけた刃夜斗は、
「子供達も元気そうだな。何よりだ」
「アレクセイ。あんたは家庭も持ってる男だ。これから森の民として何かやるべきこととか決まってるのか?」
 斑尾が突っ込むとアレクセイは、
「‥‥今は深くは考えてはいない。ただ子供達には戦だけの道は進ませたくは無いな」
 考えていない筈は無い。キマイランズと言う種に課せられた宿命の決着は、自分の代で終わらせるつもりなのだろう。
 それが読めるだけに刃夜斗は、わざと気付かぬ振りをして、
「そうなのか? よければ俺が剣術を教えてやろうと思っていたんだが?」
「護身用として心得ておくのはいいかもしれません。友人知人の中にもよからぬことを企む輩はいます」
 翼人は一般論的な心得として勧める。この場に敵に回る者は居ないが、得てしてこのような話は外に洩れるものだ。それが要らぬ敵を生み出す種と為る事も有る。
 だから、更に万全を期す真白は言う。
「そう言う考えってどうかな‥‥って。ジョーカーの私が言うのも変かな?」
「少なくとも、ここにいるのは信用出来る者ばかりだ」
 確かに森の民シンパの者だけであるが、アレクセイの言に刃夜斗は、
「‥‥裏切りが当たり前のジョーカーの世界でそんなこといえるアレクセイはすげぇな。お前らも見習えよ」
 と、キマイランズの子供達に諭す。
「悪には悪の志あり。‥‥ってか」
 斑尾はぼそりと口にした。
「で。斑尾さんは今後のことを考えていたりするんですか?」
 翼人の問いに斑尾は、
「俺か? 日々を生きれればいい奴だからなぁ。明日のことは明日になってから考えるさ」
「んー。そういう考えの人って結構早死にするんだよね」
 互いの信頼が無いと口に出来ない言葉だ。
「ははは!! そりゃ違いないな!!」
 それが判るだけに刃夜斗は笑う。
「ジョージ(斑尾)は、全てに於いて速いのよ」
 にやにやと様子を眺めていた烏鳩(ja0226)が、良くわからないフォローをする。
 こうして、身内の食事会は和やかな宴となって行くのであった。

●教団潜入

 教団施設。ジャスティス達は、教団施設へのあまりにも簡単な立ち入り許可に顔を見合わせる。
「‥‥随分あっさりと潜入できたね」
 カルト集団特有の警戒を想定していたKD(ja1640)は、ちょっと拍子抜け。
 真紅忠志(ja2281)などは
「入信希望者とだけで入信させてくれるとなれば‥‥。もし何かあっても内部の警戒は万全なのか‥‥」
 と、逆に心配になって来るほど。
 塩澤白兎(ja0411)は、綺麗所の若い女性信者をニヤニヤ眺めながら、
「それともよっぽど警戒心がないただの間抜けといったところか‥‥」
 様子を探ると言って、一人離れる。
 あらあら白兎さん。また何時もの癖が出てるよ。

「‥‥まぁ。見た感じ警護に穴は多そうね。そうね‥‥それならいっそ‥‥」
 良いことを思いついたと瞳を輝かす獅子戸竜子(ja1338)を、
「‥‥いっそ、どうするんだい?」
 と覗き込むKD。構わず竜子はさっと動くと、
「‥‥ねぇ。よければ私をボディガードとして雇ってくれないかしら? 何かと物騒な世の中だし。こう見えても腕には自信があるのよ」
 言いつつ、汚物を見る目で白兎を睨み、実力アピール。
「お‥‥おい!! いきなり何‥‥いてててて!!!」
 竜子は顔を真赤にして黙りこんでる女信者の尻に手を回すなり、いきなり白兎の腕をねじ上げた。
「こんな感じで。いつ教祖様に不埒な男が近づくかわかったもんじゃないしね。男より腕のたつ女のほうがいいと思わない?」
 さり気無くおさわりしていた白兎も白兎だが、容赦ない竜子。目撃した信者達の反応は悪くない。
 それを横目で眺めつつ、
「なるほど‥‥。内部から様子を直接探ろうということですか」
「でも‥‥。そう簡単にいくかな? ほら、疑ってる」
 様子を伺う忠志とKD。
 長老の名札を付けた、下級幹部らしい信者の一人が竜子に向かい、
「‥‥わかりました。奥の応接間にてお待ちください」
 と言い、先に行く。
「‥‥って、いいのかよ!?」
 竜子に足で踏まれつつ小声の白兎。用心深く竜子は、
「いや、まだわからないよ。不審な輩をまとめて捕まえる作戦かも。油断はできないね」
 忠志は目で合図して、
「‥‥では私達は予定通り行動に移ります。くれぐれも気をつけてくださいね」
 予定の行動を開始した。

 一方、こちらはジョーカー潜入組。
「‥‥潜入は意外と簡単じゃったのぅ」
 未亡人に扮したプリンセス・G(ja1952)は、寧ろ招かれるように教団への入信を勧められた。
 とは言え情報収集はこれからだ。さし当たってどうしようかと。
「何とかして教祖様と接触しないとね。まずはどうしよっか?」
 シーリィ・H(ja2163)が問うと、無明大使(ja2259)は気負うでも無く、
「今俺の配下が情報収集をしている。焦らずともいずれは‥‥」
 さらりと請け負う。
「‥‥いますね。ジャスティスの連中も」
 視線を合わず、さり気無く指差すディアナ・ターリオン(ja1408)にシーリィは聞いた。
「‥‥一応目的は同じだからね。ここは素直に協力しておいたほうがいいのかな?」
 ディアナはころころと笑い。
「‥‥いえ。利用させて頂きましょう」
 察しを着けた無明大使は、
「なるほど、教団内部の機密を探ろうとしている輩がいると情報を流してしまうのだな」
 ディアナの所属する組織とは、あまり仲の良くないプリンセス・Gではあったが、
「ほぅ‥‥それで場所まで案内してもらい、こちらが情報を盗むという策か。悪くはないのぅ」
 こう言う話ならば便乗して良い。話が纏まったので無明大使が確認する。
「‥‥では俺の配下に情報を流させよう。教団内が慌しくなったときがチャンスだ」
 その言葉に皆、戦いを予感する。
「となると戦闘は避けられないかぁ‥‥。うぅ‥‥上手くいくかなぁ‥‥」
 荒事は、ちょっと苦手のシーリィであった。

●ELO会計調査

 ピジョンが頭に置かれたこの1年。ELOは実質放任の状態であった。
「まずは資金源・補給源・前線基地の整理を‥‥」
 フローの掌握と健全化が肝心と考える如月達哉(ja1314)。
「私のほうは内部研究員の見直しをします。私欲のためだけに行っているものがいないか‥‥」
 破軍魔夜(ja1332)は、かなりな予測を以って問題があると見ていた。特に、ジョーカーの博士連中と来たら、研究の為には見境無い者が圧倒的多数なのだ。
「そうだな。無駄な研究に資金をつぎ込ませるわけにはいかない」
 先ずは、他人の失敗例の共有化が必要だと達哉は言う。
 そこへ、最も無駄の多いと思われる人物がやって来た。
「‥‥ガルバコピーの作成案だ。確認してもらえるか?」
 それは勿論J・Jだ。正直、彼の失敗を共有財産とするだけで、どれほどの研究費が浮くか判らない。
 魔夜はプランをじっと読み。
「‥‥ガルバさんの目的を挫く事で、より深い混沌を生じさせると」
「なるほど。万一‥‥。いや、そんなことはあってはならないのだが。それに備えてでもと言う訳だな」
 達哉は、そんなことが可能なのだろうかと思いつつも、備える重要性は理解していた。
 J・Jはさも簡単そうに、
「‥‥盟友より譲り受けた貴重なガルバの血肉がある。俺はこれを研究させてもらうぞ」
「盟友‥‥ね。深くは聞くまい」
 達哉は予算以外にケチを付ける気は無い。いや、そもそも理解するまで関わりたくないと思う。
 魔夜と2人で黙って頷いていると、J・Jの話は豆乳プリンだの巨大豆の製造だの脱線しつつ続き、
「最終的にはクローン、複製技術を研究し、プロジェクトチームを発足するつもりでいる」
 と、いつの間にか終了していた。魔夜も、
「‥‥わかりました。了承しておきましょう」
 と、必要予算が思ったよりも小額で済んだため、決済判を着き。
「そんな予算で大丈夫なんですか?」
 と尋ねると、
「簡単だ。ピジョンが命じた豆コネクションで培った技術が、よもやこんな所で生きようとは‥‥」
 豆の短期改良のために、クローン技術が積み上げられたと言う話を聞いて、
「ピジョンさん。何やってたんですかぁ〜」
 魔夜は頭を抱えた。
「しかし、これが完成しても、必ずしもガルバに通用するとは限らん」
 無駄を畏れては何も出来ないとは言え、なかなか頭の痛いお話である。

 一通り調べ上げるのに1週間。特におかしな不正は無いものの、他人と同じ失敗を繰り返す例が無視できないことが判明。これら失敗の情報を共有化するだけで、かなりの経費節約になることが判明した。
 これ以上は、そう簡単にはわからないものばかり。なので達哉と魔夜は次ぎのステップに移る。
「では俺は武器の調達ルートを探ると同時にジャスティスの動きも調べておくことにするよ」
「ガルバさんが宇宙商人と何か行動しているという噂もありますからね」
「あぁ。調達している物資がわかれば何をしようとしているかも自ずと見えてくるはず‥‥」
「‥‥えぇ。オリヴィエさんには借りがいろいろあります。これを気に恩返ししたいです」
「そうだな。ジャッカル閣下が統治していたあの頃の‥‥。半分ぐらいまでは勢いを取り戻したいものだ」
 達哉は魔夜に手を振ると、G型級円盤に乗りこんだ。

●乙女の戦い

 アステロイドベルト。
 黒薔薇霧華(ja1035)は房陰嘉和(ja2139)を伴て、アレクセイに教えられた地点を目指していた。
 いたってご機嫌斜めの霧華は、
「確かに私は、護衛と費用を負担する交渉者をと言いましたが‥‥。なんでこんなことに為っているんです?」
 きっ、と嘉和を睨む。よもや、自分と彼を除いてジャスティスばかりになるとは思いも依らなかったのだ。
「ここまで来たら、呉越同舟じゃ」
 食えない岸田博士(ja1504)に、
「俺は、知り合いの罠兎さんの護衛としてついて来たんだぜ。安心しな、悪徳商人からはそっちも護ってやっから」
 元気の良い鵜月終夜(ja2131)。そして、
「‥‥見つからないわね」
 この状況の仕掛け人たる武曲罠兎(ja1374)。
「そうじゃのう。こう情報が少ないと接触するだけで一苦労じゃわい」
「全く。なんの下調べもせずに行動を起こすことがどれだけ無謀か。わからなかったのかしら?」
 霧華は無神経なことを言う岸田に嫌味を言うが、桑を指されても槐樹にはピンと来る。
「なんですってぇ!?」
 罠兎はカチン。
「まぁ落ち着けよ。今座標を探ってる。この付近にいることは確かなんだ」
「今のところ怪しい影もなし‥‥。っと。大丈夫だな」
 モニターを見つめる嘉和の目。目視で見張る終夜の声。
 敵対する女性陣の一方で、男達の息はピッタリと合っていた。

「ほら、ぼさっとしてないでキミも探してくれないかしら!?」
 偉そうに指示する罠兎に霧華は、
「な‥‥。なんですか!? 私は商人と接触した時の交渉方法、聞き出す情報等のまとめを‥‥」
「そんなこといってサボる気なんでしょ? 何にもしないんなら降りてもらうわよ!!」
 反発するものの、今は立場が悪い。こんなことなら、費用は折半にすべきだった。
 内に怒りを滾らせる霧華に、岸田は、
「ま‥‥まぁまぁ2人とも。落ち着きなされ‥‥」
 ちょっと冷や汗。こんなところでドンパチやられては自滅間違いなし。
「そうそう。まぁ焦らずにやろうぜ。落ち着いて落ち着いて‥‥」
 嘉和も話題を逸らすのに必死。こんなことで宇宙の塵など真っ平だ。
 霧華は低い静かな声で、
「‥‥集中できませんからあちらに行ってます。接触に成功したら呼んでください」
 移動して行く。
「みんなして兎月さんの警護にまわっているのが気に入らないみたいだな。こういう状況とはいえ」
 終夜はぼそり。
「乙女心とは難しいもんぢゃのぅ‥‥」
 岸田は肩を竦めた。
「いーだ!! ずーっと引き篭ってればいいのよ!!」
 嵩に掛かる罠兎。

 だが30分後。
 トントントン! トントントン! トントントン!
「開けてぇ〜! 霧華さん。私、言い過ぎたわ! ねぇ。お願いだから開けてぇ〜!」
 霧華が篭ったのは、宇宙船の重要設備の一つ。‥‥そう。化粧室だった。
「お偉い罠兎サマ。仰せの通り、私はずーっと引き篭ってますわ」
 帰って来たのは、さっき吐き捨てた自分の言葉。
 ドンドンドン!! ドンドンドン!! ドンドンドン!!
「わ〜ん。ごめんなさい。私、言い過ぎたよ〜」
 逼迫した涙声。こうして見事、霧華は罠兎に詫びを入れさせたのである。

●消えたトントの行方

 跡形も無く姿を消したトント。
「確か、この向こうだと聞いたんですが‥‥」
「話によると、車で簡単に行けた筈なんだけどなぁ」
 ドロシー・ホーク(ja2304)と不動一輝(ja1815)は、道に迷っていた。
「ええ。ここから北に真っ直ぐ‥‥って、私達は東南東に向かってません?」
「あ! 本当だ」
 いつから方向を間違えたのだろう。もう、基点の集落から30時間は走っている。
「平均120km/hだから‥‥どれくらいズレているのか、頭が痛いです」
 いったいここはどこなんだ? とりあえず車を反転させて自らの轍を辿る。
「‥‥深呼吸が必要だな。焦れば焦るほど術中にはまりそうだ」
「敵の策だとしたら‥‥随分秀逸ですね」

 ドロシーの推理はこうである。
 トント老師は姿を消したのではなく、実は『まだ外に出ていない』のでは?
 秘密基地で聞いた話では、トント老師に会いに行った連中が帰ってみると、長老の老師との話は終わっていたと言う。
「そんなことが可能なのか?」
「幻想力を含めた複数の、高位超能力を組み合わせれば、不可能では無いと思います」
 一輝が聞くとドロシーは考えられる方法を提示した。
「それにしても、難儀だぜ。いったいどこで間違ったのやら」
 その言葉にはっとドロシーは気が付いた。
「一族で無い者を拒む結界があるのかも」
「だったら、戻ったほうが良くねぇか」
 一輝の提案で、2人はロッソ(jz0124)の襲撃地点を目指そうと考えた。
「あ、見て!」
 件の集落が前方に見える。

●狩人の群れ

 雰囲気はかなり拙い。まるで中世の魔女狩りだ。殺気立った群集が石造りの建物を取り囲み、その数は増すばかり。
 建物の屋根から様子を伺うアリンナ・ブラントン(ja1874)は、憂いに表情を曇らせて、
「さて‥‥なんとかして件の少年に接触しないとね」
 変身して蹴散らすのは訳も無いが、ジャスティスとして可能ならば、暴徒化しつつある群集とは言え、一般人に怪我人は出したくない。
 秋月・桔梗(ja2093)は首を振り、
「しかしこの人ごみ。あまりにも目立ってしまいます」
 先ず以ってこっそりと連れ出すのは至難の業。
「まずは興奮してる人達を抑えるのが先決かなぁ‥‥」
 河原まさご(ja1691)がエレン・サンダース(jz0034)を見る。
「エレンさん。ここは私のリュートで人々を落ち着かせてから進むのがいいかと」
 村正誉(ja1045)の提案に、エレンは笑いながら忠告する。
「‥‥そうだね。無理に取り押さえるよりそのほうが安全さ。だけど住民に見られちゃお仕舞いだよ。そいつは変身しないと使えないからね」
「判ってますって」
 誉は元気良く答えた。
「それじゃあ、あたしも状況を収めるのを手伝おうかな。他のみんなはなんとか子供の救助をお願いね」
 駆け出す結城夏岳(ja0126)に涼村テス男(ja2030)はポンと胸を叩き、
「おっし!! 坊主を追いかけまわす連中をかき出してでも助け出すぜ!!」
 盛り上がる意気に水を差す訳ではないが、
「‥‥いざとなったらそれも止むを得まいが。俺はなんとか少女との接触を試みる。元を断てばなんとかなるはずだ」
 十文字ショウ(ja2167)は根治が最上である事を確認すると、南守・小鳥(ja0906)は
「‥‥ジョーカーと接触した際は任せてください。なんとかしてみますよ」
 不確定要素への対応を申し出た。
 こうして分担と守備範囲を決定した上で、ジャスティス達は作戦開始。
「‥‥では行動を開始します。みなさん。くれぐれもお気をつけて」
 誉はシストリアンに変身して、アナインシーリュート[精霊]を奏で始めた。

●アンコールワット救援隊

 地下伽藍のレリーフを丸呑みにした巨大なナーガは、有口班のジャスティス達をものともせずに暴れ回っていた。反撃のフォーメーションも恐るべき麗人アスール(jz0122)に突き崩され、戦いは一方的なものになりつつある。
「これはいかんな‥‥撤退すべきかのう‥‥」
 伽藍内に負傷した仲間を退避させながら、有口優也(jz0035)がそんなことを考え始めていた、その時。ナーガの尾が塔を掠め、崩れた先端が、彼ら目掛けて落ちて来た。
「あぶない、じいじ!!」
 風の如く駆け込んだパラダリス(ja1764)は、全身を撓らせ頭上高くに跳躍するや、渾身の蹴りで落下物をはね除けた。音もなくしなやかに着地する彼女。同時に、離れた場所で落下物が砕け散った。
「がお。だいじょうぶ? けが、ない?」
「うむ、みんな無事じゃ。助かった」
 負傷者達が、軽く手を掲げて感謝を示す。パラダリスはちょっと誇らしげな笑みを浮かべ、すぐにナーガの方へと向き直った。
 そのナーガは、立ちはだかる2つの影と対峙していた。
「話には聞いてたが、ホントにデカいな」
 見上げて呆れるカイゼリオン(ja1906)。テスターゼロ(ja1668)は手にしたアンコールビールをくいっと飲み干し、ふう、と満足げな息を吐いた。
「あら? ちょっと怖くなっちゃった?」
「はっ! 仕留めなきゃ話にならねぇ相手なら、怖気づいてても始まらねぇ。訳の分からねぇ化け蛇女め、とっとと片付けてやるぜ!!」
「あはは、そう来なくっちゃ! だーいじょーぶ。相手が蛇女なら、私もうわばみと呼ばれる女、引けは取らないわよー」
 何とも明るい良い酒だ。追い詰められていたジャスティス達に、余裕が戻っていた。美しい眉を不快の形に歪めたアスールが、鞭を手に進み出る。と、その前に、デスペラード(ja0136)が立ちはだかった。
「邪魔をしないで下さい。欲しいのは、あなた方の命ではありません。遺跡ひとつを諦めれば誰も傷つかずに済むというのに、どうして愚かな真似をするのですか」
「何とでも言うがいい。俺はおやっさんも、仲間も、遺跡も守り、奪われた物を取り戻して予言を手に入れる。ひとつだって諦める気は無いんだ」
 彼の小型ロボ[ナース]と[オペレーター]が、有口と負傷者達のもとに向かっていた。対ナーガの支援に、カプセル星獣[レクサス][マクラス][ナインガー]も解き放つ。
「‥‥欲張りなのね」
「ああ、そうさ」
 拳を構えるデスペラードを、冷たい目で見つめるアスール。唸る鞭を擦り抜け肉薄した黄金の獅子に怯みもせず、その目は彼を見据えていた。PKバリアーに阻まれた拳が、青白い火花を散らす。

 今にも噛みつきそうなパラダリスを前にして、片羽零(ja2168)は困り果てていた。
「この子なんとかしてよ。私達はジョーカーだけど、義によって助太刀に参上したのよ?」
「ほう、それは有り難い。早速戦いに加わってもらおうかのう」
 有口の言葉に、零は実に分かり易いビジネススマイルを浮かべた。
「それなんだけど。フリーのジョーカーに世間の風は冷たいの。今は姉弟二人で手を取り合って、怪と‥‥ま、色んなことをして生計を立てているけど、やっぱり苦しくて。そういう訳で、お爺ちゃん、幾ら出す?」
 いきなり世知辛い話になった。ふむ、と、有口は思案して。
「仮にもジャスティスの一員たるわしが、ジョーカーと取引などする訳にはいかんな。‥‥ただ、無事に食われたレリーフを取り戻せたら、嬉しさのあまり少々目が行き届かなくなるかもしれんのう」
 これまた分かり易く含みを持たせた返答に、零は満足げな笑みを浮かべた。
「いいわ、助けてあげる。行くよ一真!」
 ぼんやりと戦いを眺めていた片羽一真(ja1282)の目に、暗い興奮が宿る。変身し、セカンドゼロ、ダークゼリオンとなった彼らが参戦する様を、アスールは凍る様な視線で見つめていた。

 レリーフを囓り取られた地下伽藍は、その為に構造が不安定となり、ナーガが暴れワイルドカード達が大技を繰り出す度に歪みが生じ、時に崩れる。危険極まりない状態となっていた。
「美しい装飾に一風変わった支柱のデザイン、歴史的価値のありそうな碑文もあるが‥‥我が輩の求めるものは既に怪物の腹の中、であろうか?」
 密かに忍び込んだ松戸旦求(ja1103)は落胆していた。データ収集装置ミルミル君に、恐ろしく微弱な反応を見るまでは。削り取られて剥き出しになった、ただの土塊に反応している。何故だ? と首を捻った彼。
「‥‥ああ、そうか、レリーフが次々に姿を変えるには素材が必要‥‥土を取り込み、土に戻し‥‥それが残映の様に微かな記憶を残しているのであるな」
 あまりに微細な断片、そうでなくとも混沌は扱い辛いが、あるいは出来るかも知れないと、旦求が解析に取りかかったその矢先。
 環濠をたどり聖池に入ったテリー・河豚(ja1898)が、戦いの様子を眺め、ほくそ笑んでいた。
「どうやら、気付かれてはいませんね。ガルバ、ジャスティス、どちらも共倒れするといい。最後に勝つのはジョーカー、そしてこの私です」
 彼の戦闘褌[大和]がそそり立つ。相手が即座に反撃に及べない遠隔地より、一方的に打撃を与える。それこそが、大艦巨砲主義なのだ。
「てぇ!!」
 轟音と共に放たれた砲弾は戦うジャスティス達を巻き込み星獣をなぎ倒して、ナーガに直撃した。大きくよろめきながらも、持ち堪えたナーガ。しかし、その動きは大きく鈍った。有口班はこの時点で、その機能を事実上失う。
「次から次へと‥‥」
 アスールが苛立ちを露わにする。そして、崩れかけていた伽藍にはこれが致命傷となった。
「動ける者は負傷者を助けて外に逃れるのじゃ!」
 治療に運搬にと忙しく働く小型ロボ。有口が叫ぶ声を遠くに聞き、旦求もやむなく脱出に踏み切った。自分が及ぼした功罪を知らぬまま、テリーは精魂尽き果てた体を引き摺って、静かに姿を消したのだった。

●マンチェスターの夜

 マンチェスター旧市街。夜になっても絶えることの無い大通りの喧噪が遠くに聞こえる裏路地で、数人の男女が声を潜め話し合っていた。鋭く冷たい目つきの彼らが落ち着かなげに辺りを伺っている姿は、何処か哀れで、滑稽だ。
「一体どうなっているんだ、何処の組織の攻撃だ!?」
「敵はひとりだとか、ふたりだったとか‥‥。そんな訳があるか、何の冗談だ!」
「ジャスティスまで乗り出して来て、あちこち嗅ぎ回っているというぞ。面倒なことになった‥‥」
「くそ、ダメだ! ヨークストリートのアジトとも連絡がつかない!」
 アーゲント(jz0125)の攻撃が、じわじわと彼らを追い詰めつつあった。焼けるような焦りに苛まれながら、何一つ打つ手が見つからない。交わす情報もすぐに尽きて、重苦しい沈黙が彼らを包んだ。
「やれやれ、こんなところで井戸端会議とは。歴史ある秘密結社もいよいよヤキが回ったと見える」
 突然の声に、銃に手を掛け振り返った彼ら。戯ける様に両手を小さく挙げながら現れたのは、ひとりの怪しげな紳士だった。
「貴様は‥‥モローアッチ!?」
「犯罪紳士を名乗るイカレ野郎か!」
 いきり立つ彼らに、わしのことを知っているとは感心感心、と満足げなモローアッチ教授(ja2284)。銃口を向けられても、まあ待て、と逃げる素振りさえ見せず諭しに掛かる。
「慌てるな。わしはおまえ達を助けてやろうと言っているのだ」
 普段なら有無をいわさず弾を撃ち込むのだろうが、切羽詰まった状況が彼らを迷わせた。モローアッチが、口元を笑みの形に歪める。

 そんな彼らの様子を、遠くから見つめる影があった。
(‥‥これは、妙なところに出くわしたものです)
 銀河刑事ゼダン(ja2165)はディメンションソナーを調整しながら、彼らの会話に聞き耳を立てる。互いを探り合う様な会話は、暫くの間続いた。
(こんな怪しい申し出を、そう簡単に信用するとも思えませんが‥‥)
 しかし予想とは裏腹に、彼らは連れだって、何処かへと移動を始めた。何も確証は持てなかったが、ゼダンは意を決し、密かに彼らの後を追う。

 その頃。ヨークストリートの古びた商店では。
「彼らは身を挺してこの男を逃がそうとしました。つまり、組織の中で重要な地位を占めているということでしょう。それだけ、情報にも通じているのでは」
 盾となって倒れた者達を前に、腰が抜けたか、座り込んで喘ぐばかりの男。その姿を眺めながら、B・B(ja2138)がアーゲントに助言する。
「では、記憶喰いに喰わせてみるとしよう」
「ひっ」
 カプセルを取り出す動作に男は悲鳴を上げ、まるで子供の様に震えながら頭を抱えた。喰うの喰わせるのという言葉が、よほどオドロドロしく聞こえたのだろうか。
「わ、分かった、話す、何でも話すから命だけは助けてくれ!!」
「あらあら、随分とご立派な幹部様だこと」
 Mヴァイオレット(ja1908)が呆れ顔。沈黙を守って斃れた部下達の前で、男は組織の最重要機密である予言の織機の在処を、本当に洗いざらい吐いてしまった。
「‥‥驚いたわね、ビィ」
「木は森に隠せと言いますから。ジャスティスに嗅ぎつけられると面倒です。アーゲント様、急いで向かいましょう」
 頷くと、アーゲントは男を一瞥した。ゴミを見る様な冷めた目で。
「約束だ、命だけは助ける」
 吐き捨て、去って行く。その姿を見えなくなるまで見送ってから、男はようやく引きつった笑みを浮かべ、よたよたとその場を逃れに掛かった。だが、すぐに笑みは凍り付く。彼が最後に見たのは、血まみれの部下が怒りに震えながら向けた銃口だった。
「アーゲント様は、意地悪なのですね」
 くすりと笑うB・Bに、アーゲントは知らぬ顔だ。密かに彼らを追うプロフェッサーA2(ja1071)とクロームカウント(ja0698)の存在には、気付いているのか、いないのか。

 織機の在処が漏れたことは、生き残りの連絡により結社の者達の知るところとなる。ゼダンが追っていた集団にも他集団や幹部が合流し、慌ただしく方々と連絡を取り始めていた。
(織機の場所を知られた。残った者を集め、何としても織機を守り抜くのだ。場所は科学産業博物館だ。敵は間近に迫っている、即座に動け。何? 即座にと言った筈だ。そうだ、これは全てに優先する)
(こうなったからには、あんたにも働いて貰うぞ)
(くく、わしは最初からそうしてやると言っているではないか)
 彼ら自身、確かにその場所を目指している。何より緊張した声音が、切迫した状況を物語っていた。ゼダンは急ぎ、仲間にこのことを報告する。
「ロゼリオンか、今──」
「ゼダン!? キミ、何処で油売ってるんだよ!!」
 耳への一撃に目眩を覚えながら、報告が疎かになっていたことに思い至る。状況を伝えると一転、ロゼリオン(ja1019)の声にも緊張が走った。
「‥‥分かった。私達もすぐに向かうから、ひとりで手を出さないでね」
「アーゲントが既に向かっている様です。急いで下さい」
 短い連絡を終える間に、目的地に到着する。大通りに面した博物館の前を、張り詰めた空気を漂わせた者達が巡回していた。辺りは異様な雰囲気に包まれている。

●予言の葉

 インドのジャスティス拠点。
「体調がおかしいときとかは、遠慮無く言いなよ。子どもの病気とかってのは、親としちゃ心配だろうしね」
 基地内ではララやランがドクトル・ゼピュロス(ja2127)の診察を受けていた。
 同時にララは警護に当たっているマーク・ネルソン(ja1600)らから、現在の状況についての説明を受けていた。
「おや、それは?」
 その際、霞沢賢一(ja1794)はララの持つ『くすんだ色の塊』に気付き、問いかける。
「これですか?」
 それを慎重に受け取り、データベースと照合すると、それも予言の葉であることがわかった。
 後に届けられた解読結果により、それが卵から生まれた子の未来を予言する葉であることが判明したが、肝心な部分は朽ち果てていた。



●水面下の争い

「ボコは元々良い子の友達として作られたレツ、赤ちゃんのお世話も頑張るレツ〜♪」
「ランちゃんですネ〜。可愛いネー。コワガラナクイイヨ」
 一足先に診察を終えたランはオムレッツ(ja2035)やメカレッカマン(ja2039)と遊んでいた。人造人間である彼らは子守りをしながら様々なセンサー類を駆使して不審者の接近に気付くことが出来る。
 子守唄を歌っている涼村ミク(ja2101)もそうした存在の一人だ。インド基地の全職員とWCのデータを増員分も含めて全てAIに登録している。変装もしないで接近するものがいれば、すぐに気付くことが出来る。生半可な変装であってもそれは同様だ。
 そこに至るまでにもマークらの厳重なチェックにより、ララ達親子に接する者達は例え顔見知りの存在であっても何度も確認が行われている。ほんの少しの間目を放している間に入れ替わっている危険もあるということで場合によっては日に何十回もチェックされているものもいた。散発的なジョーカーの侵入は続いていたが、厳重なチェックを破れるものは今のところ現れてはいなかった。
「何度挑んでも見抜かれていたのはあなたが原因でしたか」
 その中でも特に挑戦回数の多かった百面鬼アルゴス(ja2295)はその理由の一つと対峙していた。
「ジョーカー同士なら必ず味方というのは有り得ない。利害が違えば食い合う、当然だ」
 G=ヒドラ(ja1823)の言うようにジョーカー同士の関係は協力的なものではない。
 利害が一致しないが故に情報をリークする者は他にもいる。他者の成功を妬む者やジャスティスの正義には賛同できなかったがためにジョーカーとなった者など、その理由は様々だが、今は一致団結して協力していた。
「ですが、こちらも易々と諦めるわけには行かないのです」
 アルゴスがそう告げると同時にインド基地の機能が何者かの影響で物理的にもプログラム的にも麻痺した。

●記憶喰らい

 北米の平原。
「情報提供に来てくれて、ありがとう」
 そんな声に振り返れば、いつの間に姿を見せたのか、ロッソが記憶喰らいをつれて見下ろすように立っていた。
「選り取りみどりってところね。誰が情報をくれるのかしら?」
 ロッソは店で衣服を選ぶような気軽さで一人一人に視線を送る。一見すると隙だらけだが、動こうとした時に限ってロッソ‥‥あるいは記憶喰らいの視線が突き刺さる。
「私が喰われた所で彼女達が求めるような重要なデータなどは持っていない訳ですが‥‥」
「そう。なら一度喰われてみるといいわ」
 そう告げたドロシーに向かって、記憶喰らいが駆け出した。
「赤頭巾ちゃんの気持ちを生きたまま味わえるのなら、それはそれで面白そうですわ」
 喰われるかもしれないというのにドロシーの胸中に不思議と不安は無い。喰われるのは記憶だけ。それに助けられることが決まっている童話の主人公が不安に怯える必要などはないのだ。ドロシーは自らを飲み込もうとするその口に攻撃を叩き込む。
(今喰われるのはごめんだな)
 ごんぶと(ja0744)は記憶喰らいから距離を取った。下手に記憶を引き出されて、こちらの考えている作戦がばれては困る。だが、敵の情報は多いに越したことはない。戦場から離れることだけは避けなければいけなかった。
 下手に記憶喰らいに向かえばロッソが動くのは目に見えている。そんな状況下でマリアベル・ロマネコンティ(ja0398)は真っ先にロッソに向かって行った。
 バーニングランスによる先制。だが、ロッソはたやすくそれをかわす。ロッソが反撃すると同時に記憶喰らいも襲いかかる。
 遠距離からのロッソの投擲を避けながら、接近する記憶喰らいに飲まれぬように回避行動を続けることは不可能に近い。
 オーバードライブ状態で何とか凌ぎ続けるが、遠近同時攻撃を前に接近することすら適わない。
「?!」
 その背中に誰かがぶつかった。振り返って確認すれば、それは先ほどから記憶喰らいと戦っていたドロシーだった。ロッソの攻撃を避けるのに夢中で気付かなかった‥‥というよりは明らかに狙いを持って誘導されていた。
「さあ、大人しく喰われなさい」
 ロッソが大きな動作で無数のダーツを空中に投げ放つ。それはドロシーやマリアベルを直接狙うものではなく、二人をその場から動かさないためのもの。
 動けばそれを受け、動かねば記憶喰らいに飲まれる。その状況で二人が取った選択は真逆のものだった。
 マリアベルは決死の覚悟を持ってロッソに向かい、ドロシーは喰われる覚悟で記憶喰らいと向き合う。だが、二人とも考えていることはそれほど違うわけでもない。
 ドロシーは記憶喰らいに飲まれながらも全力で攻撃を叩き込む。余りにも接近しすぎている状況での攻撃は自らの身体をも傷つけていた。
 マリアベルはロッソに一矢酬いるべく距離を詰める。徐々に縮まる距離。絶好の一撃を叩き込むに相応しい距離に近づいたところでマリアベルの動きが止まった。
「残念でした」
 それはどちらに向けての言葉だったのだろうか。
 ドロシーは記憶喰らいに飲まれ、マリアベルはロッソにとっても絶好の距離で完全に動きを封じられていた。
 戦闘力そのものは無いとは言え、記憶喰らいはその特製上、ゼロ距離射撃を受けたとしても倒れるほど柔ではない。ロッソも飛び込んでくる相手が今までの長い時間の中で相手をした経験が無いわけでもない。
 ロッソが張り巡らせておいた糸にマリアベルは自ら飛び込んでいたのだ。
「さあ、アナタも食われなさい」
 ロッソはそう言ってマリアベルに死なない程度に痛烈な一撃を叩き込み、記憶喰らいの中へと放り込んだ。

●見込み違い

「さぁ。いい子ね。私に教えて頂戴」
 ロッソは二匹の記憶喰らいの頭をひと撫で。二匹の眸を見つめた。
 流れ込んで来る大量の記憶。そのアクセスの様は、膨大なテキストファイルを画面で読むのに似て、根気の要る作業。単調な刺激に、いつしか効率も落ちていた。
「ふう。少し頭が痛くなって来たわね」
 口に手を当て長いあくび。

「え?」
 ロッソは、あくびの途中で自分の失敗を悟る。虎視眈々と狙っていた連中に絶好のチャンスを与えて仕舞ったことを。
 だから、サンクチュアリに引き込まれたと悟るや否や、即座に戦闘態勢をとる。
「そこね!」
 視線の先には梟の魔女グラウクス(ja1494)を始めとするジャスティス達。
 ロッソは、ヴァンパイアである前に超能力者。そして、その前に暗殺者なのだ。

 見込み違いはロッソだけではない。
「あれ?」
 あっさり見破られただけではなく、二匹の記憶喰いが居ない。
(なんで、戦闘力のフィルターに引っかからないの?!)
 グラウクスは意外な結果に冷や汗タラリ。
 有効時間が切れた後、皆は元の場所に引き戻される。その間、外ではほんの一瞬だ。
「バカねぇ。戦闘モードになっていなければ、あの仔達って犬と大して変わらないのよ」
 つまり、戻った後も勝負が続く。時間内にロッソを何とかしなければ、敵の戦力を温存してやったのと同じだ。

●陽蔓救出隊

「こっちだ!」
 沢木陽蔓(jz0068)を呼ぶ声がした。躊躇いはあったが、覚えの有る声に陽蔓は従う。
 その横を一筋の光がかすめ、一瞬なりとも追撃者を止め。次の瞬間、
「きゃあ!」
 陽蔓の体が力強い腕で支えられ、宙に浮いた。
「陽蔓‥‥久しぶりだな。元気だったか? いや、今はそれどころではない、な。まずはこの場から離れるとする、か」
 頼もしげにヴォイス(ja1313)は征く。
「長老さんは‥‥」
 はっと陽蔓は問う。
 行く手を遮る影を蹴散らしつつ、ヴォイスは親指を右左に向けて、ピッピッピッと振る。
「‥‥魔夜様の‥‥命に‥‥より‥‥。参りました」
 右には、空を飛ぶスカイペットの上に横たわる長老。そして、その傍らで操縦するグラナート=ツヴァイ(ja2032)。
「キリ様ことD・ヴァルキリー様のご命令で、タヒチでの借りを返しにきました」
 左には、SwordOfSwordShipを振るい活路を開くイゼル・アイン(ja2027)の姿があった。
「ジャスティスとジョーカーが仲良く共同作戦なんて、奇妙な話よね。たまたま今回、陽蔓さんを護ると言う一点において、目的が一致したのよ」
 黒嵐(ja2264)はそう言って笑った。
 まだ、事態把握が済んでない陽蔓に釘を刺すように荒世(ja0626)が先の先。
「老師を見習いなさい、すべき事を速やかに把握し、最善の行動を取るのです」
「は、はい!」
 陽蔓は、荒世が心配したように飲み込まれた人達を助けるのだと抗いはしなかった。
 いやいや。他でもない赤井狐弥(ja0507)の相棒の言葉だ。理に合う以上、彼女にとって是非も無い。
 距離を稼ぎ、先ずは追っ手を振り切った。

 危急の際には是非も無いが、余裕が出て来ると意見の相違が問題点として浮かび上がる。
 ヴォイスは陽蔓をそっと地面に立たせるや、
「陽蔓はジャスティスが保護する」
 救出に協力したジョーカーに言い放つ。
「勝手ですねジャスティスは」
 魔導潜水地艦のハッチを開け、脱出の準備をして待っていたチキン(ja0527)と黒井・華麗(ja1430)が顔を覗かせた。
「ですが、今は陽蔓さんの安全が第一です」
 そして、彼の後ろから外に躍り出たごんぶとが、
「こいつで安全を確保できる場所まで、陽蔓さんを逃そう。さもないと、飲み込まれた人を助ける戦いは出来ない」
 と提案した。元より、ヴォイスの知る陽蔓は一般人。シューティングフォーメーションが出来、レガシーシップを操る能力を持ってはいるが一般人だ。
「うーん」
 陽蔓をジョーカー達に委ねるのは腹芸だが、彼女の安全には代えられない。そう思い、しぶしぶ賛意を示すヴォイス。されど、
「待ってください!」
 異議を唱えたのは当の陽蔓だった。
「老師の事なら先ず大丈夫です。彼の動きをみたでしょう」
 荒世が断言する。
「でしたら、長老さんも一緒に‥‥」
 ぐずる陽蔓にチキンが言った。
「定員オーバーです」
 意思決定を促す一言だった。
「ならば‥‥自分が‥‥行き‥‥ます‥‥陽蔓様は‥‥ここに‥‥残って‥‥下さい」
 グラナートが手を上げると、音も無く戦闘員ゾルダ達が現れた。彼らと博士と荒世を身の護りに置いて行くと言うのだ。
「お仕事を横取りする気はないけれど‥‥」
 ヴォイスをチラ見しつつ、黒嵐が身支度をする。
「どうします? ヴォイスさん」
 荒世が挑発的に言う。
「わたくし達は、陽蔓さんの願いの為に、護衛だけ残して救援に向かいます。ヴォイスさんもここに残りますか?」
 ヴォイスは計算を巡らせた。少なくとも陽蔓の身は安全だ。長老も石版の在り処くらいしか知らぬはず。ならば陽蔓の手前、手出しは出来ない。
(と、なるとだ)
 いかに仲間が救出に赴いているとは言え、ここは陽蔓の瞳が怖い。行かねば陽蔓に誤解が生まれる。
 彼らは、陽蔓に上手く言い含めるだろう。安全な2人を死守して、一刻を争うと思われる囚われの10数人を見捨てるのが、ジャスティスの流儀なのだと。
「悪党め。いいだろう、思惑通りに動いてやる」
 ジャスティスが、正義において疑いを持たれる事などあってはいけないのだ。
 こうして、ヴォイスとジョーカーの有志チームが、人質奪回の為に引き返した。

●忍ぶ伏兵

 やがて、サンクチュアリの時は過ぎた。
 梟の魔女グラウクスはスパイダーネットで動きを封じようと試みるが、失敗を悟り静かに怒りを燃やすロッソはたやすくそれをかわした。
「けど、あの仔達のことはともかく‥‥あたしを閉じ込めてくれたお礼はしないとね」
 ロッソが言い終わる前に身構えるグラウクスだったが‥‥言い終わったときにはロッソの姿を見失っていた。
(一体どこに‥‥?)
「上だ!」
 幻光戦士・織夢(ja1679)に言われ見上げればそこには無数の刃。グラウクスの眼前に迫っていたそれらを織夢は引き受ける。いくらかは受け流せるが、そのどれもが信じられない速度で迫る必殺の凶器。庇われているグラウクスさえも、防御に専念しなければ凌ぎきれない。
「まずは一人‥‥」
 囁くような声が耳元で聞こえたかと思うと、グラウクスの腹部に鈍い痛みが走った。
 そこから生えていたのはロッソの右腕。頭上に放り投げた刃を鋼糸で制御し、高速落下させている間に、ロッソ本人は悠々とグラウクスに接近していた。
 そのまま止めを刺そうと試みるロッソに迫る影が二つ。一つは先ほどから降り続いていた刃を受けていた織夢。グラウクスの状態に気付くと即座にロッソに迫る。
「超プリティキュートなNo1魔女っ娘、破壊天使プリンセス☆ユウ降臨♪ 不健康な化石少女も粉砕しちゃうぞ☆」
 もう一つはその隙にメタモルフォーゼしたプリンセス☆ユウ(ja1094)だった。
 ハンマーを振るい、格闘技術とパワーで挑む。だが、元々ロッソの技術は暗殺術に特化している。その真髄は敵の攻撃を受けず、必殺の一撃を叩き込むことにある。パワーで勝るユウには不用意に近づけないが、あしらい方くらいは心得ている。
 ハンマーの一撃を避けると同時にユウの腕を取り、ハンマーの重量を利用して後方へと投げ飛ばす。それにより自由を取り戻したグラウクスは織夢と共にロッソとの間合いを取った。
 痛む身体に鞭を打ちグラウクスは織夢と共にロッソの攻撃を受け流し続ける。
 幻影戦忍・影法師(ja1023)の援護で、漸く他の者と交替出来る有様だ。

 下手に単独で動けば確実に仕留められる事実からジャスティス達はまともに身動きを取ることも出来ず、翻弄され続けた。

 しかし、辛抱強く機を伺っていた伏兵が居た。
「祐殿らは、飲み込まれた者を助けるのがお役目。拙者らがどんなに苦戦しようとも、決して軽挙しなさるな。よし我らが全て斃れるとも、捨て置きにされよ。飲み込まれし者の奪還が肝要なれば」
 戦いに臨んで、影法師はしつっこく念を押していた。
「済まない皆」
 唇を噛み、じっと堪えるK=9(ja0289)。味方の苦戦に何度も飛び出しそうに為ったが、
「祐くんだめ!」
 ぎゅっとルミナスウィンディ(ja1511)が手を握って制止。
「大丈夫。みんなで力を合わせれば、出来ない事はないよ!」
 バスターバニー(ja1720)に諭されて、寸でのところで思い止まった。
 やがて、1号と2号がロッソから切り離されて孤立する。いかに翻弄されようとも、数で押す利が注意を逸らしたのだ。
「いまよ!」
 万能ビームガンで1号2号の足を止めるバスターバニーとルミナスウィンディ。
「行くぞ!」
 K=9は理力の剣を一閃。飲み込まれていた人々が姿を現した。
 こうして3人は協力し合って撤収に移った。そして注意を引くために戦っていた者達は、さらに執拗にロッソに食い下がってこれを助けたのである。

●孤立する者

 情報を失い、自分の状態の危うさに苛立つロッソ。岩陰に隠れ爪を噛む彼女の前に、ごんぶとが現れた。
「‥‥長老の居場所を教えると言うのですか?」
「ああ。俺の仲間が捕らえたからな」
 頭のてっぺんからつま先まで一通り目をくれると、ロッソは新たな記憶喰いのカプセルを取り出した。
「『あなたから直接情報を取り出す』という手もあるからね。1分で案内なさい」
 わがままなお姫様に肩をすくめつつ、仲間達から聞いた長老の放置場所へと足を向けた。
 荒世やチキン達の話によれば、ここから程ない場所へ置いてきたという。『ここならば安全だ、ここに隠れていろ』という安易な嘘を愚直に信じている事だろう。

 2体の記憶喰いから救出された人々の応急処置にジャスティス陣営はてんてこまい。それでもほとんど無傷だったのは幸いだ。『赤頭巾』ドロシーが言うには、腹の中は異空間になっていて実感が無く広さが認識出来ない。体は麻痺して動けないが、死んでしまう様なこともないだろう、との事。
「‥‥うぅ‥‥ちょ、長老様は‥‥?」
「え? いや、見てないけれど」
 意識を取り戻したトント老の弟子が漏らした言葉に、同じように応急処置を受ける織夢が無意識に即答する。‥‥そのやり取りに反応する者、数名。
「これお願い!」
 必要外の手荷物を近くの仲間に押し付け、走り出した。

「ここに隠れているはずだ」
 ごんぶとの声に気付いて姿を見せた長老は騙されていたことを悟った。
「へぇ‥‥嘘じゃなかったのね」
 それを見たロッソは隠し持っていた暗器から手を放した。情報の真偽を確かめるまでは誰も信用する気などなかったのだ。
「ここからはこっちでやるわ。下がってなさい」
 ロッソの命令にごんぶとは忠実に従う。取り出したカプセルからパクパク3号が現れ、長老を飲み込もうと口を開いた。
「危ない!」
 そこに長老を探しにきたドロシーが飛び込んできた。一足遅く長老はパクパク3号に飲み込まれたが、ドロシーは躊躇することなく自らその口の中へと飛び込んだ。

「面倒な手間を増やしてくれたわね」
 ロッソはそう吐き捨てながらも作業を始める。ドロシーの持ち込んだ物品からの余分な情報‥‥音楽や本に書かれた無用な情報が邪魔をしているが、そんなものは当たりの入っていることがわかっている状況では何の苦にもならない。
 いくつかのキーワードに絞り込み情報を練り上げると、その当たりにたどり着いた。
『自分が囚われたと知ればきっとトントは救いに来てしまうだろう。なんとしても逃げなくては』
 それは長老の思考だった。ようやく手に入れた情報を前にロッソの顔に笑みが浮かんだその時。
 一筋の雷がパクパク3号に突き刺さった。
「?!」
 ロッソが慌てて振り返れば、そこには探していたトント老師の姿があった。雷は、手にした光線銃のようなものから放たれた物のようだ。
「‥‥くっ、老いぼれの癖に!」
 情報は既に収集した。仕事が終われば記憶喰いなど単なるケダモノ。ロッソのセンスで見れば可愛らしく、使い捨てにするには少々惜しいが、自分の命と使命に代える事は出来ない。3体目の生贄を引き換えに、ロッソは踵を返しその場から逃げ出した。

 ロッソの後を追う形でごんぶとも走る。
 先ほどの騒動の最中、彼は仲間へ更なる情報を流していた。この位置から逃げるにはどのルートを辿るのが最善か。それは正に、今二人が駆けている道。そして、仲間が隠れ潜んでいる道であった。
 ざく、と音を立て土を踏み、姿を見せたのは海鮮(ja1650)。足を止めるロッソに向かってセントラルブラスターを撃ち込む。その攻撃を遮るように、ごんぶとが躊躇なく飛び込んだ。
「まだ死にたい奴がいたの‥‥めんどくさいわね」
 戦闘態勢を整えようとするロッソ。しかし反対に海鮮は自らの獲物を手放した。
「すみません、あなただとは思いませんでした」
「‥‥仲間だ。俺からも謝る、すまない」
 いぶかしげな顔を見せつつも、ロッソはスカートをはたく。青白い顔に疲労の色が見えた、気がした。ならば、今がチャンス。
「さすがに邪魔になるだろう? 俺が持とう」
 つい、とごんぶとが手を差し出した。コイツが心配なら絶対に渡さない、俺が最後まで責任を持つ、などと言いながら。
「‥‥そう? じゃあ、甘えちゃおうかな」
 見た目に似つかわしい可愛らしい動きで。ロッソは石版をごんぶとに向けて差し出した。
 腹の中の邪な笑みをおくびにも出さず、差し出されたものを受け取った。‥‥筈、だった。
 気がつけば、みぞおちを抉るように撃ち込まれた小さな拳。自らの手におさめた筈の石版は、欠片一つも見当たらない。先刻から大事そうに抱えていた石版は実は、ロッソ本人がが作り出した幻影。つまり全て読まれていたのだ。計画は失敗だ。
「お前のことを完全に信じていると思ったのか? 見かけによらず随分と純朴なのね」
 ロッソはそう言うとごんぶとの関節を決め、動きを封じる。
「まあ、情報は本物だったみたいだし‥‥命だけは助けてあげるわ」
 そう告げた瞬間ごんぶとの姿がその場から消え去った。作戦の失敗を知るや即時撤退したのだろう、海鮮の姿も既にない。
「次の作戦は‥‥と言いたいところだけど」
 周囲の気配を探れば、体勢を立て直して戻ってきた連中が徒党を組んで抵抗を始めようとしていた。
「少しは協力しようって奴はいないの!」
 明らかに全員が敵対的な反応を見せていることに対し、ロッソは苛立ちを隠そうともせず撤退した。

 トント老の姿を確認し、安堵するジャスティス達。バクバク3号の腹を割いて長老を助ける。
「長老様も老師様も、ご無事で何よりです」
「うむ。皆、感謝する」
 ジャスティス達に恭しく頭を下げるトント老。今度こそ本当にロッソを撃退できたようだ。最終的には老師の手を借りる事となってしまったが、これでひとまず安心といったところだろう。ほっとした空気に、再び緊張が走った。
「‥‥おい、もう一人がいないぞ?!」
 バクバク3号の割かれた腹には長老の姿しかなかったのだ。本来であればもう1つ、女の姿がなければいけないはずなのに。騒然となるジャスティス達。探さなければ、と動き始めようとした彼らの動きを遮ったのは、トントその人であった。
「ああ、あのお嬢さんか。勿論無事だ、安心して欲しい。すまないが少々お借りしている。仕事を一つ頼もうと思ってな」
 仕事‥‥? 首を傾げるものもいたが、トントが無事だというのであれば問題ないだろう。
「トント老師の元へ呼ばれているならば」
 長老はそう言った。ジャスティス達は一瞬あれっと思う。まるで彼がトントでは無いかのような言葉ではないか。
「ついでにもうひとり‥‥そうだ、そこの少年」
 視線を辿れば先にあるのはK=9の姿。自らを指差し確認する彼に、老師は微笑を浮かべたまま頷いた。
「ご足労願おうか」
 ふと気づけば、K=9の姿は消えていた。まるで先程までいた彼が幻であったかのように。薄く笑みを浮かべる老師の姿をした者は、
「大丈夫、心配するな」
 と言うだけで、何が起きたかを教えてくれるには到らなかった。

●ガニガニ勧誘合戦

 ナーガ、アスールとの戦いが熾烈を極める中、森の中に身を潜めその成り行きを密かに見守る怪人の姿があった。言わずと知れた放浪の摩訶混沌獣ガニガニ(jz0120)だ。
「むむむ、何だかいい調子ガニ。もしかしらたもしかするガニ? あのデカいのが倒されたら腹の中身を失敬して、混沌力をたっぷり補充してやるガニ!」
 ぶくぶくと泡を吹きながら、わくわくそわそわ。
「ガニ?」
 ガニガニが、何かに気付いた。
「ガニの心を擽るこの匂い‥‥まさか、そんな筈無いガニ‥‥」
 ふらりと木陰から出てウロウロと辺りを徘徊。と、近くでがさりと物音が。ガニガニは慌てて木にへばりつく。藪を掻き分けて現れ、辺りを見回しながら通り過ぎたのは、ヴァリアブル・ディザスター(ja1907)だった。しかし、ガニガニには気付かない様子。
(ふう、危なかったガニ。今は雌伏の時ガニ。易々と見つかる訳には行かないガニ)
 そんなガニガニの思いを弄ぶかの様に、突然足を止め、困った風に考え込む彼女。
「いませんね〜。そうだ、こんなに木がいっぱいあるから見つからないんです〜」
 現れたウンディーネが、彼女の肩にちょこんと座る。
「とりあえず、見晴らしを良くしてみましょうかね〜」
 翳した手から、猛烈な吹雪が吹き出した。
(さ、寒いガニ、でも耐えねばならんガニ!!)
 寒い暑いの話で終わっている辺りがさすがのガニガニだが、そんな彼の様子をちらちら見ながら笑いを堪えるヴァリアブル・ディザスターである。あんな目立つ怪人に、万が一にも気付かない筈なんて無いのであって。イタズラしたいお年頃、悪ノリして、焼き払った方が早いかも〜などと言いながらカプセルをまさぐっていると。
「はわっ!?」
 どーん、と突然の衝撃に、彼女は顔面から地面に突っ伏した。勢いよく地中から飛び出した魔導潜水地艦のハッチが開き、獣華機娘(ja2303)が顔を出す。
「あらら、ごめんなさいワルモン大佐、何か轢いちゃったみたい」
「安全運転を心がけて貰わねば困るのである。我が輩が手塩に掛けたワルモン2号ガニ工船バージョンに傷でもついたらどうするのであるか」
「いや、それよりもガニガニだ。確かにこの辺りで反応があったのだが」
「ガニガニよ、怖くないから出て来るのだ! とーとーとー、とーとーとー」
 どやどやと降りて来たのは、DS団の面々。ワルモン大佐(ja0999)、貧乏神博士(ja2240)、奈落大使(ja2243)は、口々にガニガニを呼びながら辺りを見回す。ヴァリアブル・ディザスターの抗議の声は聞こえないフリ。
 と、呼びかけに応えた訳でもあるまいに、隠れていたガニガニがひょっこりと顔を出した。ふらふらとガニ工船に近付き、船体に張り付いて頬ずりを。
「こ、これガニ、この香り堪らんガニ‥‥」
 説明しよう。ガニ工船は、ガニガニが大好きなブロン液の香りを辺り一面に放っているのだ。
「くくく、我が輩のワルモンメカはいつだって完璧なのである!」
 鼻高々のワルモン大佐。
「そういう方法でガニガニを独り占めするのは感心しないな」
 背後からの声に振り返ると、いつからいたのか、木にもたれ掛かり彼らの様子を窺うロシェ(ja0526)の姿があった。
「んん〜? 人聞きの悪いことを言う。我が輩達は腹を割って話をする為に、心からの持て成しをしているだけなのである」
 呵々と笑うワルモン大佐に、ロシェは肩を竦めた。
「あの様子じゃまともに話が出来るかどうか、怪しいものだけどね」
 うっとりと船体にへばりついて離れないガニガニ相手に、貧乏神博士と奈落大使が四苦八苦。久々のブロン液、少々刺激が強過ぎた様だ。

 暫く後。
「‥‥と、こうすれば会話出来る様になる。覚えた?」
 特殊通信機の使い方を説明するロシェに、気の無い返事を返すガニガニ。ガニ工船の装置を切って、やっと話が出来る状態になったものの、匂いだけ嗅がされてお預けを食らった彼はすごぶるご機嫌斜めだ。
「真面目にやらないと、いい加減僕も怒るよ」
「ぐりぐりするのは止めるガニ、そこは触覚ガニ!」
 ニコニコしているのに何だかだんだん怖くなるロシェに、渋々従うガニガニ。それでも指導が良かったのか、通信機は無事に繋がった。相手は、アリサ・エスクード・須藤(ja0567)である。
「ご無事で何よりですガニガニ様。ポーライ様のことは残念でした。しかし、決してお気落としの無きよう。仇を討つ術は、この胸の内に用意してあります」
「口だけなら何とでも言えるガニ。妙案があるなら聞かせるガニ」
 苦労のせいか虫の居所のせいなのか、少々疑り深くなっている様子。
「それを口にするのは時期尚早でしょう。何処から漏れないとも限りませんから。しかし、どうか信じて下さい。私達は共に、ポーライ様の為に働いた同志なのですよ? 力が足らないばかりにポーライ様をお助けすることが出来ず、ガニガニ様には合わせる顔もございませんが‥‥」
 切々と語るアリサに、ガニガニ、思わずしんみりする。と、そこに貧乏神博士がタコデーモンに変身し、割って入った。
「そうともガニガニ君、我々は君の味方だ。君がカニなら私はタコ、悪いようにはせぬよ」
 良く言えば親しげに、悪く言えば馴れ馴れしく、異物[蔦の盾]を見せながら歩み寄る。途端、ガニガニの硬い硬い大鋏で脳天を直撃され、ぶっ倒れるタコデーモン。
「気持ちがざらっとするいい盾ガニね。礼儀をわきまえた奴ガニ。いまどき感心ガニ」
 機嫌を損ねたかと思いきや、好感を得たのだろうか? とにもかくにも流れを掴んだ感触に、間髪入れず奈落大使が膝を詰める。
「二十年以上の長きに渡る雌伏の末、ガルバを出し抜き、悲願である大帝王ポーライの招聘を実現させたその功績は、大首領復活を望む我らの悲願に相通じるものがある。共に偉大な主を頂く身、ここは是非とも──」
「大帝王様より偉大なお方なんて存在しないガニ」
 ぐ、と頭に血が上る奈落大使だが、ここは我慢。
「ガニガニさんって今までひとりで戦い続けた歴戦の勇士なんですよね。そんな立派な怪人に味方になってもらえるとしたら、私、すごく心強いです!」
 きらきらした目でガニガニを見つめ、獣華機娘が持ち上げる。
「ん? ま、まあそうガニね。それほどでもあるガニが」
 ちやほやされて、まんざらでもない様子。気付けば、すっかりDS団のペースになっていた。状況が分からず困惑するマリアに通信機を通して説明するロシェだが、やはりこういう時、その場に居て顔を突き合わせていないというのは大きなハンデだ。
「実に見事、それでこそこちらも手を組む意味があるというもの」
 タコデーモン復活。だらだら体液が漏れているが、元気そうだし大丈夫なのだろう、きっと。
「我々は、ジャスティスとガルバという共通の敵を持っている。ここは我らDS団と摩訶混沌獣が手を取り合い助け合って、双方の目的を果たそうではないか!」
 色々滴らせながら、がっしと手を握るタコデーモンに、ちょっと迷惑そうなガニガニ。しかしタコデーモン、めげることなく耳元で囁いた。
「共に戦うと決断してくれるなら、最高級ブロン液飲み放題ということにしても良いのだがな‥‥」
 ガニガニの複眼が、ぴくりと反応。
「そ、そんな話には乗れないガニ。甘い罠ガニ」
「そうか、残念だ。こうして手付けも用意してあったのだが」
 獣華機娘がよっこらしょと運んできたダンボール箱を置く。開けると中には、ぎっしりブロン液が詰まっていた。ダコデーモン、それはいらなくなったから戻してくれと彼女に指示。獣華機娘、えー、と口を尖らせながら、再び箱を持ち上げる。と、その箱を、ガニガニががっしと掴んだ。引っ張っても放れない。揺さぶっても放さない。
「おまえ達の誠意は受け取ったガニ。善処するガニ」
 箱を引ったくり、いそいそと開封する姿を眺め、にやりと口元を歪めるタコデーモン。とにもかくにも、こうしてガニガニとDS団の同盟は成ったのである。
「なんだかゲンメツです〜」
 まだヒリヒリする顔を摩りながら、ヴァリアブル・ディザスターがぼそりと呟いた。
「う、うるさいガニ、高度な政治的判断ガニ」
「へー」
 棒読みの返事を返し、ガニガニの顔を覗き込む。
「仇を討つのもいいですけど、どうせなら混沌の王を目指す気は無いのですか〜?」
 ガニガニが言葉に窮した、その時だ。撃ち込まれたプラズマ熱線を、ジョーカー達は飛びずさって躱した。プラズマ熱線はガニガニを直撃したが、その硬い甲羅で事無きを得る。ダンボール箱は燃え上がり、その中身は沸騰しながら溢れ出していたけれども。
 飛び出して来たふたりのジャスティスが、大音声に啖呵を切った。
「待たんかいそこのガニ道楽! 道頓堀から引き上げられた有名おじさんが見逃しても、このわいは見逃さへんで!!」
 決まったで‥‥とばかりにポーズを決めるガンガンガジェット(ja0962)。プラズマガンシールドを構え直し、秘宝[自在剣]の切っ先をガニガニに向け、無言の警告を発するガイヴァリオン(ja2194)。
「き、貴様ら、一体何者ガニ‥‥」
 ふるふると小刻みに震えながら問うガニガニ。
「日本一のスーパーヒーロー(予定)ガンガンガジェット様や!」
「通りすがりの龍戦士だ、覚えておけ!」
 被った。バツ悪げに顔を見合わせるふたりを、DS団の面々が取り囲んだ。
「あー、あんさんらは巷で噂のWII団やな? こんな所で何しとるんや!」
「戯け者め、WIIではないわDSだ!!」
「そんなことはどうでもいいガニ! この恨み晴らさでおかないガニ!!」
 彼らの声は、耳を劈くけたたましい怪音によって掻き消された。急に辺りが影になり、何事かと見上げた彼ら。頭上に降って来たのは、ナーガの巨体だった。

●獅子は斃れぬ

 捨て身のカラミティ・バーストをまともに食らい、抉れた胸を掻き毟るナーガ。
「苦しいか? 苦しいか、そうか! もっと苦しめ!」
 その姿に、ダークゼリオンは天を仰ぎ、狂った様に笑った。時間を使い果たし、変身の解けたダークゼリオン=片羽一真は、怒りに任せた腕の一振りで弾き飛ばされる。
「うん、ナイス囮だわ一真」
 弟が狙われるその時間を、セカンドゼロは攻撃の溜めに充てた。グルートビームが、ナーガの片眼を焼き潰す。その死角から駆け込んだパラダリスが、アニマルクローで大きく膨れた腹を割いた。貫通した僅かな裂け目から覗く奇妙な空間‥‥その中に、蠢くレリーフが確かに見える。途端、ナーガの姿が少しづつ、崩れ始めた。
「逃がすものか!」
 巨体をくねらせ大跳躍したナーガに、カイゼリオンが追い縋った。頭部から襲い来る蛇達をテスターゼロが牽制する間に、スロットルを握り、バイク形態で最大加速。1、2、3‥‥とタイミングを計って、車体を倒しスピンしながら薙いだ尾の下を擦り抜けた。
「そう何度も食らって堪るか!!」
「そのまま行っけ──っ!!」
 キリンビームに撃ち抜かれ、吹き飛んだ最後の蛇が空を舞う。テスターゼロとカイゼリオンは、視線が合った、その一瞬で息を合わせた。速度、力、そして魂の猛りが極まった瞬間。バイク形態を解除したカイゼリオンは、その全てをアクセルブレードに込めて叩き込んだ。
「疾風剛断、カイザーダイナミック!!」
 蛇の下半身と人の上半身、その境目を刃は深く切り裂いた。悲鳴とも咆哮ともつかない怪音を発しながら、ぐらりと揺れるナーガの巨体。動揺し泳ぐその目は、テスターゼロの姿を捉え、見開かれる。向けられたビームランプ、レーザーガン、腕一体型プラズマショットに溢れる膨大なエネルギーに恐怖したのだ。
 必殺のコード・エビスに貫かれ、ナーガの巨体が倒れ行く。我と汝が力もて等しく滅びがどうのこうのという詠唱が聞こえたとか、ドラグなんとかいう掛け声が聞こえたとか、そんな証言もあるが、それは死闘が見せた幻に違いない。

 巨大な敵が倒れ、元の情けない姿に戻りつつある中。たったひとりで三鬼衆の一角を抑え続けたデスペラードは、満身創痍となっていた。
「まさか倒されるとは‥‥しかし、あの方々はもう力を使い果たした様ですね」
「それが、どうした!」
 荒い息を吐きつつ、デスペラードが吼える。電撃グローブを擦り合わせ、放った稲妻。それを目眩ましに肉薄した彼は、裂帛の気合いと共に五行連弾拳を叩き込んだ。バリアの守りを打ち砕く勢いに、滑る様に間合いを取ったアスール。間髪入れず放った波動弾。衝撃波が彼女を砕いたと思えたその瞬間、アスールの姿が忽然と消えた。逃げたか? という淡い期待は、湧き起こった怒号で掻き消された。
「や‥‥やめろアスール!!」
 デスペラードが叫ぶ。アスールは負傷者の中にいた。その血を啜って体力を取り戻すのだとすぐに察した。咄嗟に皆を守ろうとしたパラダリスの腕に、鞭が絡みつく。全身を貫いた電撃に、彼女は声もなく崩れ落ちた。怒りがデスペラードの全身を駆け巡る。猛然とアスールを追い、仲間を庇いながら戦う彼。しかし傷ついた仲間を巻き込むまいとするその躊躇を、アスールは見逃さなかった。
「全てを望む者は全てを失う。それが道理というものです」
 絡め取られ、電撃を受けたデスペラードが、遂に膝をついた。もはや彼も、戦える状態ではない。アスールは興味を失った様にジャスティス達に背を向け、記憶喰いの方へと向かった。ガルバの命令を果たす障害にならないのなら、どうでも良いということだろうか。
「好きな人、ガルバだけ、寂しい。優しい人間、たくさん、いる‥‥」
 パラダリスの消え入る様な呟きに、アスールは振り返った。そして、透き通る様な、美しくもおぞましい笑みを浮かべた。
「私は、あの方の御心以外、何も興味はないのです」
 それが、誇りであるかの様に。

 命を賭して預言の回収をと願う満身創痍のジャスティス達を前に、有口は作戦続行不能として、撤退を決した。

 この間、旦求とセカンドゼロはこっそりと、倒れた記憶喰いの腹の中を探ろうとしていた。
「これ、本当に内容を読み出せるの?」
「我が輩の理論ではそうなるのである。どちらにせよ、丸ごと担いで行けるものでもあるまい?」
 腹の中にセンサーを突っ込み、ついにアクセスできるかと思えた時。ミルミル君に鞭が絡まり、強烈な電撃一閃。哀れミルミル君は名誉の殉職を遂げ、ふたりは全速力で逃走を図ったのだった。

「ああっ、ガルバの手下に持って行かれてしまうガニ!!」
 飛びだそうとするガニガニを、タコデーモンが制止する。
「今は堪えたまえ。ガルバへの復讐の時は必ず来る。力を蓄えるチャンスがこれきりという訳でもあるまい」
「その通りガニ、心に染み入る助言ガニ」
 何やら通じ合った様で、肩を並べてワルモン2号に乗り込む彼ら。一目散に遁走するガニガニとジョーカー達を、ガイヴァリオンとガンガンガジェットは歯噛みしながら見送らざるを得なかった。
 ところで。
「どうして忘れていくかな‥‥」
 置きっぱなしの通信機に、がっくり落ち込むロシェ。DS団一本に絞るのかといえばそういう訳でもなく。実際の所ガニガニはひとつところには少しも居着かず、頻繁に回って来るブロン液代の請求書で時々の居場所を知るという有様。そして、底なしに増え続けるブロン液代に彼らは青ざめることになるのだが、それはまた別の話。

●からっぽ

 そうそう。無駄足覚悟で確認に行った者についても情報を纏める必要があるだろう。
 ジャベリガン(ja2256)は、伝説の魔獣の場所をもう一度調べに行った。だが既に中はもぬけの殻であった。
「世界を俺の手にするためには、強力な力が必要だ! ヘレルの長子、これで出てくるというならば、俺の野望に答えろ! 俺と世界を取ろうではないか!!」
 声が枯れるまで叫んでは見たが、自分の声が木霊するばかり。

 いま一人、DS団に協力を申し出た覇王将軍ラース(ja2180)も、駄目押しの調査。無論それは、彼なりの計算が有っての行動である。
  ラースが向かったのはエジプトのレガシーシップの場所だ。既に摩訶混沌界に冒されてボロボロになった当シップは、セントラルの除去円盤によって綺麗さっぱり撤去されていた。
「やはり無駄足か‥‥。ん?」
 何も無くなった洞窟の壁に、かすかに読める刻まれた絵文字。丸い枠で囲まれた二つの単語だけがかすかに読めた。
 仲間に送って古代文字と照らし合わせると、
「一人は、ファラオの印に、命の結び目・禿鷲・パン・ウズラのひな・把手付きの籠・葦の穂。そして口。もう一人は女神の印に、太陽を示す◎とさざ波のぎざぎざ‥‥なんのことだ」
 色々と調べたが、新しい発見はそれだけであった。
「素早く動くのが正しいか、時期を見計らうべきか、悩む所だな」
 ラースは意味深に呟いた。
 さて、偶々遺跡から出て来る彼の姿を目撃した者が、また死霊が甦ったと大騒ぎしたのだが、それ程大きな事件にはならなかった。ごく小さなニュースとして、地元に流れただけである。

●太陽の子

 混乱の中、貧乏神博士らによって写し取ったレリーフの写真。その映像がDS団の本部に転送されて来た。
 それを受け取った羅刹教授は3日間不眠不休で解析していたが
「よし。大体情報はまとまってきたぞ」
 漸く情報の一部が読み取れた。
 さらに、無駄足を承知でエジプトに行ったDS団メンバーからの極秘情報も入る。
「絵文字の読みは、ファラオたるアンク・ア・トゥ・キ・エル。女神たるラー・ン、あるいは『太陽のために』と呼ばれる女王。と言ったところか」
 また、レリーフの情報もこれを裏付けるものであった。日本語に訳すと、

 太陽の子は預言の目録。証すものは太陽と月。
 預言は太陽に伸びる蔓を伝いもたらされる。

「ではこの情報はアレクセイさまに‥‥」
 深井蓮華(ja1832)は言う。ここは直ぐに知らせるべきだと。
 契約うんぬんもあるが、元情報はELO経由。恐らくそちらでも解析が進んでいるはずだ。
 つまりここで情報を隠匿しても意味が無い。いや、下手をするとDS団は無能であると言う蔑みに発展しかねない。
 そうは言うものの。
「まてまて!! うちのメンバーに教えるのが先だぞ!! それに、エジプトの情報は私の一存では」
 羅刹は拘る。そうでなければ骨を折った甲斐が無い。
「‥‥ではこちらの情報は協議にまわしておきますか?」
「あぁ。そうするのである。やはりディ〜エス団にとって有力な‥‥」
 蓮華の言葉に羅刹は頷く。そこに鳴り響く警戒音。
「警報!? 敵ですか!?」
 蓮華ははっと立ち上がる。羅刹は身構えた。
「まさか。ジャ〜スティスの連中か!?」
 よもやと思うが、今この基地は出払っている。緊張が走った。

 基地の運営は大変で、下手に拡張すると防備が下がったり、防衛を上げるべく改造したら居住スペースが罠だらけになったり。あちらを建てればこちらが立たずと、費用と手間の掛かるものである。
 最近急激に有名になったが、基地自体それほど堅固なものでもない。
 おっとり刀で駆けつけてみると、別のジョーカー組織の者が解析の応援に駆けつけてきた所だった。
「やれやれ。大事が無くて良かった」
 と、羅刹が思ったのもつかの間。是非首領にご挨拶したいと言うのだ。
(確か、今メンテの真っ最中だったな‥‥)
「ピーッ。でーたーヲ消去シマシタ。音がいだんすニ従ッテ、再入力ヲシテクダサイ」
(あ゛〜。これは拙いです)
 連絡の為の回線を開くと、とても面会させられる状態ではない。
 蓮華と羅刹は、誤魔化すのに必死であった。この際、彼らがDS団に敵意を持ったとしてもやむを得ない。
 ジョーカー組織にとって、他組織の侮りは致命傷に為るからである。

●石の悲嘆

 その頃、マンチェスターでは。  結社の総力を挙げた阻止行動も、僅か数分で崩壊しようとしていた。騒動に気付いて止まった車が大渋滞を引き起こし、何事かと目を凝らす人々と規制する警察とで辺りは騒然となっている。サーチライトに照らし出されるアーゲント。その前に立ちはだかるのは2人のジャスティス。悪滅大聖エビルベイン(ja2151)と、ヴァルテ・シザー(ja0174)だ。
「随分と派手にやってくれるじゃないか」
 エビルベインはエッジウイングを広げ、アーゲントにドラゴンスレイヤーの切っ先を向ける。
「私としても不本意だ」
 アーゲントは短く答えると、銀の棍を静かに構えた。弾かれる様にシザーが動く。
「ここはお任せ下さい、アーゲント様はどうかお役目を──」
 身を挺してシザーを引きつけるB・B。それを躱す様に、エビルベインは低い態勢のまま、爆発的な速度で突進する。アーゲントを守る様に伸びる侵蝕の蔦。だがその瞬間、エビルベインとシザーの軌跡が交差した。br> 「エルダースマッシュ!!」
 虚を突かれ対応出来ぬまま、目にも止まらぬ一閃がB・Bを貫いた。意志を失った蔦を躱しアーゲントに襲いかかったシザーはしかし、衝撃波に弾かれ距離を詰められぬまま飛びずさる。>返す刀でアーゲントに向かうエビルベイン。だが、いつの間にか絡みついていた蔦が、彼を拘束した。
「行かせません。あなた達の相手は私と言った筈です」
 闘魂ドリンクを呷り立ち上がるB・B。その姿には、鬼気迫るものがあった。
「勝負しろアーゲント!」
 固めた拳を突き出し、戦いを要求するシザー。その背を、激しい衝撃が貫いた。倒れ込みながら振り返った彼が狙撃者の姿を捉えた時、2発目が襲い来る。ちりちりと痺れる様な感覚は、パラライズ光線に違いない。
「あら、新しいお客様? 今日は大繁盛ね」
 ジャスティスの応援が駆けつけるのを眺め、万能ビームガンを構えたまま、Mヴァイオレットが楽しげに微笑んだ。

 産業科学博物館。英国における産業機械発展の歴史を展示したこの博物館は、観光客も訪れるごくありふれた場所だ。結社の者達と共に入館したモローアッチは、一般観覧ルートをたどる内、いつの間にか見知らぬ展示室にたどり着いていた。展示物は、産業革命期の工業用自動織機。蒸気機関が煙を吐き、今この時も生地を織り続けている。
「まさか、預言の織機が一般展示されているとは‥‥」
 さすがのモローアッチも、これには驚いた。結社の者達は間近に迫る脅威に狼狽え、何としてもここで織機を守る、いやどうにかして運び出せないか、と揉めている。現代のものとは比べるべくもない貧弱な機械。だが、その動きに合わせ糸がうねり、走る様は優雅で美しく、波打ち際に踊る白泡を思わせる。暫しの間それを眺め、モローアッチはううむと唸った。
(分解すれば運べもするだろうが、それで預言の力を損なわないだろうか)
 分からない。しかし、どうにかして己の物としたい欲望が、むくむくと湧き起こる。
「そこまでです! 武器を捨てて投降しなさい!」
「織機から離れて。もう諦めて、自分の身の安全を考えるべきなんじゃないかな?」
 ゼダンとロゼリオンが突入し、制圧に掛かった時。天井が崩れ、目を回したザウラスが転がり落ちて来た。飛び込み様、左右に飛んで身をかわすシザーとエビルベイン。直後、叩き付けた棍の一撃に床が砕け飛び、もうもうたる粉塵が辺りを覆った。
「アーゲント様、織機はそこに!」
 B・Bが指し示し、その背を守る様にそっと寄り添う。アーゲントが放った記憶喰いが、張り詰めた現場をのそのそと歩いて行く。阻止しようと襲いかかった者達は、無慈悲な棍に薙ぎ払われ、為す術もなく倒れて行った。織機を挟み対峙する形となったモローアッチがアーゲントを見据え、身構える。
 と、その時。
「たっぷりと味わうがいいよ、僕の特製『納豆ストリーム』をね!!」
 満を持して飛び出したプロフェッサーA2。彼女の放った納豆ストリームが、強力な糸を引きながら渦巻いた。巻き込まれた結社の者達と記憶喰いは身動きも出来ず、ねばねばの中でもがくばかり。逃れた者達も、強烈な臭気にたまらず後ずさる。
「抜け出そうとしても無理だよ。自分で食べない限りはね」
 愉快げに笑うプロフェッサーA2だが、糸の一筋さえ絡んでいないアーゲントを見て舌打ちをする。これだからイケメン補正は嫌なんだ、などとブツブツと。しかも、記憶喰いはめげることなく口を大きく開き、納豆ごと織機を呑み込もうとしていた。
 アーゲントの足が止まる。彼が見たのは、織機の上に鎮座する、黒くて丸い古風な爆弾。導火線が火花を散らしながら、どんどん短くなって行く。慌てたのはプロフェッサーA2も同様だ。
「う、納豆が絡まって動かせない‥‥。ちょ、ちょっと待って、せめてサーチアイし終わるまで!」
「残念ながら、一度着火してしまったらわしでも消せんのだよ。これだけの美しい機械、わし以外の者が手に入れるなど許‥‥」
 モローアッチ、咳払い。
「いや、ガルバ一派に奪われるくらいなら、この世から消してしまった方がマシとは思わないかね?」
「‥‥今、本音が漏れたよね?」
「では諸君、また会おう〜」
 身を翻し、悠然と去って行くモローアッチ。プロフェッサーA2も、爆発に巻き込まれるのは御免とばかり、後を追ってその場を離れた。記憶喰いは織機を丸呑みにし、直後、粉砕バクダンが炸裂。ぼふ、と膨らんだ記憶喰い。耳、鼻、口、お尻の穴から煙を上げ、ぱたりと倒れた。その口から、粉々になった織機の破片が転がり出る。結社の者達から悲鳴が上がった。
 予想外の出来事に全員が硬直する中、最も早く思考を切り替えたのはロゼリオンだった。直前まで織機が織っていた預言の生地は、ロールに巻かれた状態でそこにある。
「よし、確保──」
 生地に手を掛けた彼女の腕に、アーゲントの棍が滑り込んだ。間髪入れず、鳩尾を抉る一撃。ロゼリオンが、たまらずその場に崩れ落ちる。と、ロールが台座から外れて床に落ち、転がって行った。結社の者達が我に返り、生地に向かう。
「手を出すな、逃げろ!」
 エビルベインが叫んだが、遅かった。衝撃波が彼らを人形の様に弾き飛ばす。
「外は警察に囲まれてるが‥‥死ぬよりはマシだろ、行け!」
 石のスカラベがアーゲントに纏わり付く間に、彼らを外へと誘導する。スカラベを砕き、生地に向かうアーゲントとB・B。立ちはだかったゼダンはCallingArmorを纏い、2人の猛攻を受け止める。
「ロゼリオン、今の内です!」
 アーマーに亀裂が走るも構わす、盾となり続けるゼダン。僅かな隙を突いて生地に向かうロゼリオン。同時、アーゲントに肉薄したエビルベインが、渾身の一撃を放った。
「冗談キツイな、おい‥‥」
 反撃を受けるのは想定の内。押し切れたのは上出来だ。だが‥‥裂帛の気合いと共に無数の斬撃を叩き込むエビルベイン必殺の電綱斬り。その技をもってしても、入ったのは僅か三太刀。その傷も、みるみる内に消えて行く。ヴァンパイアの能力を持ち、超人力の使い手でもあるアーゲント。尋常な技では、手傷を負わせることさえ難しいのだろうか。
「道を開けてもらおう」
 躱すべくもない横凪の一撃。それを受け止めたのは、何処からか現れたクロームカウントだった。
「良い格好だなジャスティス。敗者は尻尾を巻いて逃げるがいい、次は私の番だ」
 振り向きもせず言い放つ。
「何のつもりか知らないけど、感謝しておくよ」
「待ちなさい!」
 ロゼリオンはすかさず生地を確保すると、B・Bの蔦が届く寸前、S型円盤に自分達を回収させた。

「‥‥どういうつもりだ」
「言った筈だが? 我が名はクロームカウント。手合わせを願おう」
 任務の達成を目前で逃したアーゲントは、珍しく苛立ちを隠さなかった。
「そうか」
 言うや、クロームサーベルと銀の棍が噛み合い、耳障りな音と共に火花を散らした。
「アーゲント様!?」
 B・Bが思わず声を上げた。普段は如何な攻撃でも巧みに躱し防ぐアーゲントが、まるで自ら刃を浴びに行くが如き戦いぶり。異物[蔦の盾]が心の平常を奪っているのだ。だが、怒りに任せた攻撃は、凄まじいの一言に尽きた。B・Bが介入のきっかけを掴めない程に。
「くっ、まだだ、まだ行ける!!」
 腕が砕けるかと思える程の衝撃を盾で受け流しつつ滑り込んだクロームカウントは、何一つ遮る物が無い胴に向けて、真横一文字に刃を振るった。確かにそれは、アーゲントの脇腹を抉り‥‥しかし、棍の石突きに阻まれ、そこで止まっていた。アーゲントが体をかわしたと思う間も無く、真逆から跳ね上げる様に打ち込まれた一撃が体を抉る。打ち抜き様の衝撃波に彼は吹き飛ばされ、壁を二枚砕いてようやく止まった。
(まだだ、まだ‥‥)
 心は向かって行くのだが、体が悲鳴を上げていた。壁を這い出し、折れそうになる膝を、前に歩むことでどうにか誤魔化す。ふと、盾の文様が砕けていることに気付き、覗き込もうとして‥‥彼は、そのまま倒れた。
「その誇りに免じて、この場は見逃す。次は期待しないことだ」
 粉塵で白く汚れた服を軽く叩き、表情を曇らせるアーゲント。自らの失態に、忸怩たる思いがあったのだろう。B・Bは、脇腹の傷を確認する。思いの外、深傷である。
「私の血をお使い下さい」
 当然のことの様に申し出たB・Bの献身を、アーゲントは受け入れた。傷を負い、更に血を失った彼女は、眠るように意識を失う。
 現地のジャスティスが突入を開始した。Mヴァイオレットが牽制する中、アーゲントはB・Bを抱え、その場を退いた。

 帰還を果たしたジャスティス達は、預言の織物の解読に着手した。拘束された結社の読み手は、一連の騒動で毒気を抜かれたか、要請に応じ、素直に献身的に働いた様だ。
「機械で布を織ったとしても、そこには様々な変化が入り込みます。目が歪んだり、飛ばされたり、糸が切れたり‥‥。それをメッセージと捉え、読み取るのが我らの仕事。いえ、我々に特別な力はありません。預言を受信するのが織機、言葉は織物、我らはその翻訳を行うのみという訳です」
 彼らが黙々と細かな織目を探って行く姿は、何処か修行僧の様ではあった。やがて、導き出された言葉は‥‥。
――――――――――――――――――――――
 おお 石になるような悲嘆。
 彼女が引き裂かれて分かれるとき
――――――――――――――――――――――
「‥‥それだけ、ですか?」
 星光一が、呆気にとられて聞き返す。
「はい。まあ、この程度の長さでは意味を成さないことも多いので‥‥」
「この程度って、これ、何十メートルもあるんだぞ?」
 がっくりと肩を落とし、いてて、と傷を押さえる大十字生。もっと調べて見ないことには何とも言えないのだが、何となくくたびれれ儲けな気分で帰路につく彼らなのだった。

●君を確実に破滅させるなら

 インド。混乱の間隙を突いて、遂にジョーカーは目的の部屋に到る。
「可愛いな。名は何という?」
 ララの抱える赤子‥‥ランを見つめてエウメニデス(ja1724)は問うた。
「ランか。良い名だ」
 名を聞いたエウメニデスはランにその手をかざす。
「心配は要らない。表面思考を軽く撫ぜるだけだからな」
 心配そうなララにそう告げると思考を読み始める。
 それは無邪気な赤子となんら変わらぬ思考。いや、思考と呼ぶのもおこがましいような稚拙な意思。
「‥‥ただの赤子だというのか」
 その事実を前に落胆を隠せない。それも当然。
 ここまで至るのに相当の苦労を強いられていたのだ。ララが持っていた予言の葉も直前にジャスティスの監視下に置かれ、厳重に扱われている。つまり、犠牲だけが大きく、収穫が得られなかったのだ。
 これ以上長居してもいいことなどはない。エウメニデスは即座に撤退すべく意識の切り離しを試みる
(なんだ、これは?!)
 が、理解できない膨大な何かに襲われ、エウメニデスは自己の身体の制御すらおぼつかない状況に陥っていた。
 そこにやってきた陽月の介入でようやく解除されたが、その混乱を突いてジャスティス達に攻撃され、瀕死の重傷を負う。
 そのまま拘束されるかと思ったが、そこに意外な助けが現れた。
「俺の美学として『女子供』に手を出そうとする奴は気に食わないね」
 咄嗟に
「ダイナミックテンペスト!」
 必殺技を放とうとするヴァンゼリオン。だが、彼の勝利の確信は一転。
「霞沢さん!」
 救援者G=ヒドラの腕でもがく霞沢賢一。生きた盾にされている。
「シンジくん。気にするな‥‥。私ごと貫け!」
「ふん。健気なことだ」
 G=ヒドラは嘲う。だが、
「君を確実に破滅させることが出来れば、公共の利益のために、私は喜んで死を受け入れよう」
 続く霞沢の言葉を聞いて一転、凍りついた。
「くっ。ライヘンバッハの滝か!」
 にやりと笑う霞沢。その手にあるのはG=ヒドラのマイクロボム。
 閃光、そして轟爆音。
 寸前に気付いたG=ヒドラは致命傷だけは回避。しかし、生きた盾は失われ手傷を受けた。
「逃げるぞ!」
 エウメニデスを抱えると逃げに徹する。
 ジャスティス達は追撃よりも霞沢の命を優先したことは言うまでも無い。彼らすら陽動で無い保証は何も無いのだ。
「霞沢さん。なんて無茶を‥‥」
 駆けつけたドクトル・ゼピュロスが救急医療パック[赤箱]を駆使する。
「不意を突かれ、星獣[ソドム]を使う間も無かった。とんだ‥‥ホームズだな‥‥」
 言うとそのまま失神した。彼は、G=ヒドラのマイクロボムを操作して、諸共に自爆したのだ。

●倉庫へ向かえ

 その頃、魔女狩りの村では、
「すいませんねー。失礼しまーす」
 マリアン・リンドバーグ(ja2189)は、洗脳ガスアンプルを信者達に振りまきつつ群衆の中を移動していた。
 程なく群集の一部に目の下に隈が出来ると、マリアンは『正義を騙る悪魔が村を滅ぼしに来る。やっつけろ』と指示を出す。
 時同じくして、
「正義の名を借りて大勢の子供を抹殺しようとするとはなんたる低劣!! 裁きを受けるがよい!!」
 コスチューム薔薇と翼のサンダルで地区教会の屋根に立つのはエリーカ・ヘルナイト(ja2226)。
 洗脳された人々の過剰反応と相まって、既に暴徒化しつつあった群集は、混迷の度合いを深める。
 その大騒ぎを横目で見ながら、
「‥‥ちょっと目立ちすきじゃないのか? 救助が目的だったらもう少し‥‥」
 おいおいと冷や汗物の霧里まがや(ja1903)が零す。しかし すっかり人の居なくなった倉庫周辺。
「いやぁ。陽動としては大成功やでぇ。おかげでうちらが動きやすいわ」
「えっと。ピジョンがいるのはあそこの倉庫でいいのかな?」
 松戸大雅(ja1828)と香野けむり(ja0247)が簡単に歩を進めて行く。
「あまり大きな被害はだしたくないのだが‥‥。ん? 反対側の人々が落ち着いていくな?」
 寒来玲那(ja1555)が示す方。確かにあちら側が沈静化しつつあるではないか。
「あらら? もしかしてジャスティスの仕業でしょうか?」
 マリアンの声にまがやは言った。
「まずいな。先にピジョンと接触されてしまうとどうなるか‥‥」
「よし! あそこが手薄だ!! 今のうちに進入するぞ!!」
 一番乗りはエリーカだ。

●来てくれ

「あ‥‥。あそこ!! ほら、例の女の子だよ!!」
 夏岳は、群集に囲まれた女の子を発見。
「あの子を抑えることができれば、この事態も鎮圧できますかね?」
 まさごはエレンに尋ねると
「父親が傍にいるからねぇ。無理に接触を試みるのは‥‥」
 難しい顔。それでジャスティスが介入のタイミングを計っていると、
「ちょっとごめんなぁ。うち、あの子に用があるねん」
 割り込んでゆく者が居た。大雅だ。
「あれは‥‥ジョーカー!! なんとか抑えないと‥‥!!」
 思わず、シストリアンの手が止る。事態は動いた。ジョーカーに先を越されては為るまいと、
「‥‥俺はショウ。罪もない男の子が困った事になっている。彼を助ける為に手伝ってくれ」
 ショウが件の少女の前に現れ、思わず彼女がこくりと頷くや。ショウは速やかに為すべき行動に移る。
「ちょ、ちょっと!! ショウさん!!」
 まさごは余りの急展開に付いて行けない。いや、彼の行動は第三者視点で、白昼堂々の誘拐事件に映った。
「すまねぇ。俺の堪忍袋の緒は切れちまった!!」
 と言って、すぐさま後を追って行くテス男。
「あちゃぁ‥‥ジャスティスに先を越されてしもうたぁ。ここは予定を変更して親父さんを抑えるかねぇ」
 その余りの素早さに、大雅が臍を噛んだ位だ。
「聖少女がさらわれた!! みなのもの!! 少女を助け出すのだ!!」
 やっと我に帰った群集達が、ショウを追って行く。
「おやおや」
 呆れ顔でエレンは、
「やっちまったもんはしょうがない。逃げるよ」
 一旦退いて、建て直しを謀る。しかし、
「‥‥父親から真実を聞き出すのは難しそうです。ショウさんを信じてこの場はなんとか抑えていきましょう」
 シストリアンは留まって演奏を続ける。
「みなさん!! 落ち着いてください!! おちつ‥‥うわっ!!」
 夏岳はなんとか説得しようと試みたが、
「こいつらも仲間だ! 叩き殺せぇ!」
 群集は既に暴徒と化している。この場に残ったジャスティス達は、暴徒を相手に苦戦した。
 怪我をさせぬよう身を護るため、全くと言って身動きが取れない。事件の解決はショウ達に委ねられたのである。

●炎の脱出

「ピジョン!! 大丈夫!!」
 流石けむりがいち早く、倉庫の中で豆を啄ばむピジョンを発見した。
「くるっく〜♪ けむりさん、お久しぶりです〜」
 相変わらずピジョンはピジョン。確かに、たかが一般人の100人や200人。彼にとってどうってことは無いのは確かなのだが。
「まぁ生きていれば大丈夫です。件の少年は‥‥。ああっ! アイタッ」
 マリアンはぬるっとした物に足を取られて尻餅を突いた。
「ひやあ‥‥。これ、ピジョンがやったの?」
 倉庫の中で呻いている人影多数。
「あ、私の豆を奪おうとしたので‥‥」
 普通温和な彼であるが、豆が絡めば容赦ない。犠牲者はピジョンの爪に抉られて、下には血溜りが出来ていた。
「いちお〜。死なない程度にしておきました」
 急所は外しただろうが、このまま放置したら出血多量で死ぬかもしれない。だが、そんなことを気に掛けるのはジャスティスだけで充分。一向に気にしないピジョンであった。

 エリーカと玲那は、丁度ピジョンが通せん坊をする通路の向うで、縮こまって震える少年を見つけ
「‥‥大丈夫だ。私達はお前に危害を加えたりしない。チョコレート、食べるか?」
「教えてくれないか? 何故こんな事態になったのか」
 と、優しく訊ねる。
 泣きじゃくりながら語る少年。けむりは頭を撫でて、
「‥‥大変だったんだね。よしよし」
「ピジョンさんと無事に合流できた。ここに長居は無用だな‥‥」
 エリーカが、鉄格子の小さな窓から外の様子を伺うと、辺りは暴徒に取り囲まれていた。
 彼らは手に、最も穏便なものでも農具。過激なものは猟銃を手にしている。
「薪に灯油にガソリン、それにヒマシ油ですか。ここを焼き討ちにするつもりのようですね」
 玲那は改めて戦仕度。こんな場合、ジョーカーに躊躇いは無い。殺すつもりである以上、殺される覚悟くらい出来ている筈だ。
 間も無く、燃え盛る松明が投げられ、ガソリンと灯油とヒマシ油をたっぷり吸った薪の山は、紅蓮の炎で天を焦がす。
「なんて事を!」
 ショウと少女が駆けつけた時、倉庫は炎に包まれていた。
「燃えろ! 悪魔め! 燃えてしまえ!!」
 もう手が付けられない。
 ボキ! ショウは煽動する一人を殴り倒し、
「あなた方は、何をやっているんですか!!」
 聖少女と共に間に入る。
「あ、入口が‥‥」
 少女が悲痛な声を発した。焼け落ちて一つしかない出入口が崩れ落ちる。
「坊主。今、助けに行くぞ!!」
 テス男はテスゼリオンに変身。燃え盛る炎の中へと飛び込んで、崩れ落ちる天井を支える。
「うううっ」
 燃え盛る天井がテスゼリオンを苛む。
「おい! ジョーカーの怪人! 聞こえているか!」
 燃え盛る天井を支え仁王立ち。文字通り身を焦がしながら叫ぶテスゼリオン。
「悪魔だ! 悪魔だ! やっちまえ!」
 天井を支えて身動きの取れないテスゼリオンに容赦なく銃弾は見舞われる。
「聞こえているなら、子供を連れてここから逃げろ!!」
 その声は中に居た。ジョーカー達にも届いた。

「汐だな」
 エリーカは強行突破のために最後の武装点検。まがやは、
「‥‥今回は目的は果たした。例の豆、あるか?」
 とマリアンに聞く。豆とは、偶然出来た発明品【ポッポアップS】の謂いである。
「え? えぇ‥‥これですけど?」
 まがやは、マリアンからひったくるように取り上げると、
「ピジョン。食え」
 と放った。物が豆だけに迷わす飲み込むピジョン。
「‥‥ポッポー!!」
 蒸気機関車を思わせる白い息。まるでポパイのホウレン草だ。
 精力が付き過ぎて、体中の毛穴から噴出す血潮。当然それはピジョンを覆う真紅の鎧に忽ち変じ、
「うぉぉぉぉ!!」
 コンドルのように一直線。続くジョーカー達に護られた少年。これらが一塊に出口から飛び出した。
「うわっ!! な‥‥なんですかっ!?」
 桔梗は拾陸式白兵戦機イザヨイに変身。天井伝いに少年の救出に突入した直後にそれを見て、その勢いにびっくり。だが、
「あぶねー!」
 ダダダダダダーン!
 火を噴く数10丁のライフル。
 まがやが自分を顧みず、猛烈な銃撃を受けた少年の盾となり負傷したのを見て。彼らが子供を助けようとしていることだけは理解した。
「任せなさい」
 ポンと花丸煙玉を炸裂させ煙幕を形成。ここは少年を助けての逃亡に協力したほうが良い。さもなくば、戦う気満々のジョーカー達によって、死人の山が築かれるだろう。
「すまないな!! また今度会ったときにでも相手はしてやろう!!」
 エリーカは素直に感謝する。
「その代わり、村人に手出し無用ですよ」
 釘を刺すイザヨイ。
「一応救出の目的は果たせたわけだし。これでいいのかな?」
 少年救出を見て、ほっと一息つくアリンナに向かい、玲那は大声で呼ばわった。
「中に入り込んだ暴徒は任せました」
 何気に怖い事実。この後、ジャスティス達が彼らの救出に忙殺されたのは言うまでも無い。

●魔女狩りの結末

 ジャスティス作戦本部。
 新たな報告を受け取った霞沢賢作(ja1793)は、分析作業の手を止めて目を通し、その内容に意外そうな顔をした。
「聖痕の少女と悪魔少年の件、無事解決した様ですよ」
「今の時代に魔女狩りまがいの事件だったからな。丸く収まったなら結構なことだ」
 大門譲二(ja1603)が詳細を見ている間、賢作は関連情報を確認し、暫く考えていたものの、納得した様に全てを閉じた。
「少女の力は弱く、しかも今回の事件の精神的ショックにより失われた模様。聖痕も消失が確認された、ねぇ。じゃあ、弱いながら力は本物だったっていうこと? それなら、過去の預言は一応調べ‥‥ちょっと何よふたりとも、何で笑ってるのよ!」
 大門光(ja2298)は追求する。しかし、
「どちらにしても、私達が求めている情報とは関連が薄かったということでしょう」
「無粋なことは言うなってことだ」
 精査した賢作と譲二は、さらなる分析は不要と判断。
「情報分析者がそんないい加減な対応でいいの!? ちゃんと説明しなさいよ!」
 そそくさと別の仕事に移る彼らに、光は大いにご立腹なのだった。

●伝説の始まり

「ここは‥‥どこだ?」
 ロッソとの戦いで、異空間に飛ばされたはずのごんぶとは辺りを見渡す。この岩の裂け目、見覚えがある。
「ここは、あの入口か‥‥」
 トントの居ると言う聖地の洞窟だ。その岩壁に手を掛け、進み行こうとすると一つの影が立ち塞がった。
「驚いた。先日もそうだが、君のような無法者はそういない。なのに、なぜここに来れるのだ」
 ごんぶとの背後に姿を現したのはコンバットスーツの男。少なくとも彼にはそう見えた。
 マスクドジャスティス4号のように、顔の上半分を覆うヘルメット。そして胸に記された矢のエンブレム。
「お前が『雷の矢』か」
 そいつの存在は、魔夜達から聞いている。
 ごんぶとは太陽の盾と銀のロッドを構え、戦闘態勢を取った。
 先手を取ったのは『雷の矢』。無数の光がごんぶと目掛けて降り注ぐが、ごんぶとはそれらを可能な限り受け流しながら徐々に間合いを詰める。そして、十分詰めた間合いから連続で攻撃を仕掛ける。決して油断できる相手ではない。一撃に賭け、勝負することも出来なくはないが、それよりは相手のミスを待ち、確実にこの場を切り抜ける方法をごんぶとは選んだ。気付けば『雷の矢』のヘルメットに覆われていない下半分の表情が驚きの色に染まっていた。
(うっ!)
 流石のごんぶとも悲鳴を上げそうになった。疾風の如きパンチをブロックした時、猛烈な電撃ショックが彼を襲ったのだ。
(こいつ、侮れん)
 警戒しつつ、ごんぷとは攻撃に出る。戦闘能力は互角。いや、ここは相手が上手と見て隙を作らぬ事だ。
 ごんぶとと『雷の矢』の応酬は、数十に及んだ。そして、直前の攻撃をまともに受けたごんぶとが体制を崩したその時。
 直後、間合いを取った『雷の矢』は頭上で拳を撃ちあわせ、声高らかに叫んだ。
「電光スピア!」
 それと同時に光のランスがバチバチと激しく空気を焼きながら現れる。
 放たれた光のランスが、ごんぶとを襲い、同時に彼の意識が一瞬途絶えた。強力な電気ショックによる一時的な意識の喪失。だが、ごんぶとには覚悟があった。この攻撃に耐え切れば、必殺技の反動で大きな隙が出来る。そこをついて確実に仕留める覚悟が。
 果たして、ごんぶとは『雷の矢』の攻撃に耐え切った。だが、身体は思うように動かない。
 それでも相手の見せた隙に比べれば些細なもの。今まで付け込む隙を見せなかった『雷の矢』に、一瞬の隙が生じて居る。
 既に指呼の間合い。一瞬の差が生死を分ける。
(ここだ!)
 感覚のほとんど無い足を踏み出すごんぶとと、それを迎え撃つ『雷の矢』に声が聞こえた。
「よい。通せ」
「老師。宜しいのですか」
 その声に、さっと30mばかり斜め後方に飛び下がった『雷の矢』が問い返す。その問いに返事は無い。だが、それは肯定と同義だった。
「ならば、戦う意味も無い」
 矛を収めるごんぶと。雄敵との勝負に気を高揚させてはいても、彼の頭脳はクールであった。
 そのまま奥へと通されたごんぶとはそこでトント老師と顔を合わせる。
 ほぼ瞬時に交わされる意志と意志。
「委細承知。陽蔓のために立会人になろう」
 全てを伝えられたごんぶとが頷く。
「ここは‥‥」
 別の場所から現れたK=9とドロシーも、トントによって立会人に選ばれたようだ。
 彼も忽ちに状況を伝えられ、
「判った。立会人になるよ」
 と、快く承知した。
「陽蔓と繋がりし者達よ。見よ!」
 トントの声が響く。

 すると見よ。陽蔓がそこに現れた。トントは宣う。
「幸いなる者よ沢木陽蔓。お前は力を望むのか? 偉大なる祖霊達が、お前に力を貸そうと言っているが」
「祖霊達?」
「既に、資格は備わっている。お前のもう一人の父が施した訓練を覚えているか?」
 今の陽蔓には、それが何のことか判らなかったが、トントに、
「お前は護られたいのではなく、護りたいのであろう」
 と聞かれると、躊躇い無く、
「はい」
 と答えた。
「ならば、沢木陽蔓。お前の封印を解く」
 トントは命じる。
――――――――――――――――――――
 来よ。
 三人(みたり)の標を以ちて我は呼ぶ。

 来たれ。
 正しき者にして優しき者。
 K=9の如く勇敢なる者。

 来よ。
 まつろわぬ者にして猛き者。
 ごんぶとが如く忠実なる者。

 来よ。
 染まらぬ者にして無垢な者。
 ドロシーの如く賢く有る者。

 偉大なる祖先の霊よ。時は今。
 来たりて、ここに盟を結べ。
――――――――――――――――――――
「あぁぁぁぁぁ!」
 陽蔓の悲鳴が響き渡る。声が響いた。
「受諾した。拙者も主の力となろう」
 その声を合図に、ぽんと二刀を放る『雷の矢』。陽蔓はそれを受け取ると滑らかに抜き放った。
 陽蔓は軽々と、重い大小の刀を腕を交差させた腕組みに似た形で抜き、そのまま刃をX字に交差させる。
「これは素人の技じゃないぞ」
 驚くK=9。そして、彼女の後ろに立つ影のようなものを見た。
(銀河刑事?)
「なに? 何が起こっているの?」
 ドロシーは陽蔓の背後に6人が立って居るのを見、ぼそりと口にする。
「‥‥口寄せ?」
 今一人はまた別のものを見ていた。
「これが、ジャッカルが伝授した技なのか‥‥」
 自らの傷など忘れ、見入るごんぶと。と、彼は一瞬背後に見知った姿を垣間見、
「お前‥‥。死してなお‥‥」
 と口走るが、ごしごしと目を擦ると既に無い。
 二刀は鞘に納まり、陽蔓の愁いと希望の二つを帯びた顔がそこにあった。

 ことが済んで後、トントは言った。
「キモサベ。時は満ちた」
 トント老師はそう告げると、その手を開く。そこにあったのは10ばかりの銀の弾丸。それがゆっくりと宙に浮かび上がり、それぞれが思い思いの方向へと向いて静止する。 
「届け、選ばれし勇士の手に」
 その言葉と共に銀の弾丸は軌跡を残して、その場から消え去る。立会人の2人は、この出来事の目撃者ともなったのだ。そして、気が付くとK=9とごんぶとは、それぞれ一人で荒野に立っていた。

●教団を探れ

 ジャスティスの教団潜入から1週間。
「そろそろ頃合かな‥‥」
 KDが時間を見る。打ち合わせの集合場所に忠志が居た。そして、少し遅れて探りに行っていた白兎が帰還。
「あぁ。教団内部の警護はやはり手薄だ。警護武器の商談としてでも持ちかければ上手くいくと思う」
「では、僕は万一に備えて逃走経路を確保しておきますね‥‥」
 忠志が通路の一つを押さえに動く。

 さあ。仕掛けはKDだ。
「‥‥すいません。突然ですが私、教団には商談目的で入信していたのです」
「‥‥はい?」
 近くに居た下級幹部の信者に話し掛ける。
「この教団がどれぐらい警護をちゃんとやってるかと思ってな。いろいろと不安が多いのはわかった」
「武器販売会社『D.C.P.』と申します。よろしければ教祖様と商談をお願いしたいのですが」
 白兎とKDが、代わる代わる話をする。すると下級幹部は、
「‥‥そうですか。しばしお待ちください」
 と、慇懃に応じ、2人をその場に待たせて上の者に伺いに行く。
 待つ間、白兎とKDは、
「‥‥この前みたいに上手くいってくれればいいんだが」
「‥‥そうだねぇ。一応逃げる準備も‥‥」
 などと話していたが、程なく血相を変えた忠志が、
「‥‥急いで逃げて下さい!! 武装した連中がこっちに向かってきています!!」
 と駆け込んで来た。
「‥‥ちっ! やはり疑われていたか!! 逃げるぞ!!」
 おいおい白兎。ついさっきのセクハラも関係して無いか?
「あぁもう!! どこで情報が漏れたんだ?!」
 逃げつつKDはぼやいた。

 その頃。潜入したジョーカー達は、奥の一室で教団の儀礼的な食事の最中であった。
 スープにパンを浸したシーリィが、
「‥‥なんだか騒がしいね?」
 と耳をそばだてると、
「‥‥教団の連中がジャスティスを捕まえるために動き出したようだ。今がチャンスだ」
「‥‥では動き出すとするかのぅ。1週間も待ったかいがあったわい」
 無明大使とプリンセス・Gはほくそ笑んだ。

 別室に居たディアナも、この騒ぎに気付き、
「‥‥騒がしいですね。どうしたんですか?」
 と廊下を走る男に訊ねると、
「怪しい連中が教団内にいたんだ!! 教祖様をお守りせねば!!」
 ものすごい剣幕。武器を手に血相を変えている。
「なんですって! 私も行きます!!」
 ディアナも同行を希望。
「いや、気持ちは判るが、女性が武器を持つもんじゃない」
「では、何かお手伝いを! 怪我人が出るかも知れません」
 そこへ無明大使らが合流。手に角材を持っている。
 男はそれを見て、
「判った。付いて来い」
 首尾よくジョーカー達は同行することになった。

●健やかに病む

 教団の礼拝堂。
 会衆の中には、癒しの力を求めてすがり付くようにここを訪れた老婦人が居た。齢60位だろう。
ここ十数年、体が弱く、疲労激しく、ずっと絶える事無く激しい頭痛に悩まされ、夜も満足に眠れず、家事さえまま為らぬ者であった。
 教祖は彼女の前に進み、言った。
「あなたの重荷を取り去って上げます」
 その言葉を切っ掛けに、老婦人は積水を切った様に訴え始めた。
 治して貰おうと医者に行けば、袋一杯の薬を処方され、言われるままに飲んでみたけれども一向に良くならない。
 精神科を紹介され、そこで『うつ病』と診断された。もう5年も通っているけれども、ちっとも良くならない。
「お薬のおかげで眠れるようには成りました。でも、充分眠っているはずなのに昼も眠いのです。
頭が締め付けられるように痛んで、どんなお薬を飲んでも治らないのです。家事も出来なければ、遊ぶことも出来ません。
夫は、無理せずのんびりしていろと言ってくれるのですが、何もしていないにも関わらず、のんびりすることさえ出来ないのです‥‥」
 教祖は聞いた。
「あなたに聞きます。治りたいのですか?」
 老婦人は苦悶の表情で、
「はい」
 と答えると。教祖は老婦人の首筋に手を当て、
「あなたに命じます。治りなさい」
 光が教祖と婦人を包んだ。教祖の声に老婦人の表情は和らぎ。そして次ぎの瞬間。
「嘘‥‥。これは本当ですか?」
 忽ち、今までどんな薬を使っても治らなかった頭痛が消えた。
「あなたの咎は消えました。さあ安らかに眠りなさい。起きた時にはすっかり良くなっているでしょう」
 すると、薬の力によってしか眠ることが出来なかった老婦人は、遊び疲れた幼子(おさなご)のようにすうっと、ベンチにもたれ眠りに入った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 世の中には、何か得をするから病気になる。と言う人も居ます。
 普通は考えられませんね。
 でも、病気に苦しみ、こんなのは嫌だ治りたい。と思っているにも関わらず。
 これは本人も知らないことですが、同時に、実は得をするから病気になる
 と言う人や、治らない方が得だからいつまでも治らない。と言う人が居る。
 これも確かなことです。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ざわめく人々。
 全会衆を前に教祖のノーマ・クルーソーは解き明かす。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 今、彼女の全てを知りました。

 この人が病気になったのは、夫の定年が近づいてきた頃です。
 ずっと何十年もの間、夫に対する不満や怒りを堪えて来た婦人は、
 夫が家に居る週末に病気になることで、夫の世話を堂々と放棄できたのです。
 そして、夫に不便をもたらす事で、夫への復讐を果たしていたのです。
 同時にこれは、夫や姑に対する怒りを抱き続けていたと言う罪悪感が原因でした。
 彼女は病気になることで自分を責め苛み、その償いをしていたのです。

 意識の上では治りたいと願っても、彼女も知らない意識の中で治りたくない。
 二つの心の葛藤によって、いつまでも病に苦しめられていたのです。

 勿論世の中には心では避けられない病もあります。
 しかし、心が安らかであれば、そんな状況でも健やかに病むことが可能です。
 健やかに病む人とそうでない人では、医学の力の及び方も大きく異なるのです。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ざわめく会衆。最も疑い深い者でさえも、教祖の神秘的な力を否定することは出来なかった。

●極秘情報

 さて、教団の騒ぎはどうなったであろう。
 目に付くのは武器を手に教祖の下へ駆けつける信者。
「‥‥教祖様は奥の部屋だ、絶対この先には‥‥。ぐっ!!」
「‥‥案内ご苦労だったな」
 押し殺した笑いの無明大使。後ろから角材の不意打ちで気絶させた。
「酷いね‥‥どうする? このまま教祖様と面会するの?」
 シーリィが確認するとディアナが言った。
「いえ。先に機密情報を頂いてしまいましょう。今内部が騒がしいとあっては教祖の守りは堅いはずです」
 プリンセス・Gもそれが道理と頷き、重要拠点らしき物を探す。
「‥‥この部屋が怪しいのぅ」
 目聡く彼女が見つけた部屋こそ、当にどんぴしゃ。
「コンピュータルームか。教団、というには似つかわしくない部屋だな」
 無明大使は、教祖大事でもぬけの殻になっている部屋を眺める。
 3階分はある高い天井の、強過ぎる冷房で肌寒い部屋の中には、メインフレームではなく夥しい剥き出しのパソコンがケーブルで繋がれていた。そしてその1台1台に扇風機が置かれて冷たい風を吹き付けている。
「HDDの代わりに入ってるのは、RAMで構成された揮発性シリコンディスク。LANもサーバ仕様の非常に高速なものだ。なるほど、これは一種の分散型スーパーコンピュータだな」
 無明大使はディアナに向けて顎をしゃくる。
「判りました。私がハッキングを試みます。みなさんは警護、お願いします」
 ディアナはコンソールの前に座った。マシンテレパスで思考読破を掛けるので、その間全くの無防備になるのだ。
「いい度胸じゃな。妾の前で無防備を晒すとは」
 プリンセス・Gは言うが、シーリィは
「キミはそう言うけど、これでもジャッカルに引導渡した女なんだよね」
「まさかこやつが‥‥」
 ジャスティスもジョーカーも退去して行く中。一人セントラル本星に留まり、暴走するジャッカルを刺した女。黒き雌鳥の名はジョーカー達には知られていた。

 教団のコンピュータルーム。取り出されたデータを見て、ディアナは言った。
「全部、リスクの高い債権です。先物取引の情報もあります」
 それらのデータには、世間的な基本評価がS〜Gまで記されており、その後に4桁の数字が付けられて、複雑にグループ化されていた。
 無明大使は、
「良くわからんが、持ち帰ろう。きっとこれに秘密があるはずだ」
 言われるまでも無く、ディアナはそれらの一部を特殊通信機[bouken]のメモリーに記録した。

 突如シーリィが叫んだ。
「‥‥貴方は!?」
 見ると、武装集団を引き連れた教祖・ノーマ・クルーソーが立っている。
「そこまでです。これ以上教団内での不埒な行為はおやめ頂きたい」
 慌てるでもなくプリンセス・Gは、
「‥‥これはこれは。教祖様自らご登場とは。大したもんじゃのぅ」
「ここで得た物を置いてお帰りなさい。そうすれば『父』はあなた方を赦すでしょう」
 おいおい。それじゃ宗教家では無くジョーカーのセリフだ。やはりなと無明大使は、ディアナの盾に成る如く進み出て、言った。
「‥‥いやいや。アンタのやり方には私も尊敬していたんだ。その力を真実かどうか見極めたくてな」
 シーリィも強気に、
「貴方の予言能力。ホントなのかどうか知りたくてね」
 いきり立つ武装信者を制し、ノーマは、
「信じない方は信じなくともいいのです。私を信じる者のみに救いの手を差し伸べます。‥‥捕らえなさい!!」
「逃げますよ!!」
 メモリーの限界一杯にデータを詰め込んだディアナが、声を発し、頂くものは頂いたことを告げると、
「‥‥ちっ。もう少し見極めたかったが数が違いすぎるか。逃げろ!!」
 無明大使が殿(しんがり)を務める。
「追いなさい!! 殺してはなりません!!」
 ノーマは慈悲深い教祖の範疇で捕縛を命じた。
(ちっ。尻尾は出さないか)
 無明大使は舌打ち。ここで信者を殺したところで、殉教者となり教祖を利する。
 それゆえ彼らは、要らぬ殺戮よりも情報を邪魔の入らぬ内に持ち帰ることを優先した。

 ジョーカー達が逃げ出した直後。
「‥‥無事ですか、師よ!!」
 竜子が駆けつけ片膝を付く。
「‥‥私は大丈夫です。すぐに逃げたものを捕らえなさい」
「師よ、どちらへ」
「‥‥瞑想の時間です。これを怠るわけにはいきません」
 その言葉に竜子は素直に従い追いかける‥‥振りをして、途中で戻ってきた。
 通風孔に忍び、様子を伺うと、
(‥‥やっと出てきたみたいだね)

 教祖がタイプされたリストを持って部屋から出て来る。幹部の一人が恭しく受け取り、
「ノーマ様。これらの債権を手放すのですね」
「そうです。今は安定しているように見えますが、1ヶ月から3ヶ月の間には破綻するでしょう。今なら、市価の8割で即売します。直ちに売り払いなさい」

「ふむ。そう言う事か」
 男の声。自分と同じく忍んでいる者が居る。バッタのような怪人だ。
 竜子は身構え、
「あんたは‥‥あんたも教祖のことを探りにきてたの?」
「‥‥まぁな。他の連中は逃げたが俺だけ戻ってきた。あれは多分リーディングだろう。細かいカラクリは知らんが、予知能力を利用した大掛かりな事業が教団の財源のようだな。おっと、お前と戦う気は無いぞ」
 ダークスターはそう言うと大人しく撤収して行く。
(どうする? このままボディーガードで残ろうか?)
 竜子は自らに問うのであった。

●資金のカラクリ

 情報を集約分析している羅刹教授らの元に、ディアナの情報が転送されてきた。
 深井蓮華は不眠不休の分析で、教団資金のカラクリを看破。
「こいつは証券化よ!」
「証券化だと?」
 蓮華はそのカラクリを説明する。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1.それは、水の浄化に酷似している。
 浄水所で水を浄化する時、不純物をタンクの底の方に沈殿させる。
 水の分子は常に動いているから完全には安定しないが、
 これによって水質のレベルをいくつかの層に分けることが出来る。
 飲料水として供給できるのは、不純物の無い水であるが、
 沈殿によって多くの部分が飲料に適する真水になる。
 ここで、不純物を貸し倒れリスクと言い換えると、証券化の仕組みが解るだろう。

 例えば、債権を高配当高リスクのA・中配当中リスクのB・低配当低リスクのCと
 分けて販売し、債権に貸し倒れが出た場合、一定数までは全てAが蒙り、
 それで賄い切れない場合はB、Cに及んでゆくと言う仕組みである。

2.ここで問題なのは、リスクの及ばないAをどのくらいの割合作れるかと言う事だが、
 これはサイコロを振る確率論から導き出される。
 仮に5000の債権をひと纏めに扱うとしよう。この債権の返済不能率を5%とした場合、
 5000個の20面サイコロを振って1が出る数がいくつであるかを計算することにより
 導き出される。
 10個以上同時に出る確率、100個以上同時に出る確率と計算してゆくと、
 200個を越えた辺りから減って行き、250個以上同時に出るのは50%を割り、
 300個では実に0.07%にまで低下する。
 つまり、300件までの貸し倒れリスクをAとBに負担させると決めておけば、
 残りの4700件を引き受けるCのリスクは限りなく0に近く為る。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「一つ間違えば、簡単に破綻しますね」
 理論的には理解できるものの、アンネ=ローレンシュタインは複雑な顔。
 この仕組みを可能にするには莫大な原資が必要だし、緻密な計算を行い続ける設備も必要だ。そしてなにより、使われるサイコロが何面体であるのかを、事前に正確に割り出さなければ成らない。
 羅刹教授はうむと唸り。
「さらに濃縮されたリスクだけを、貸し倒れ前に吐き出すことが出来れば、こいつは無敵の錬金術だ」
「それをリーディングでやっている訳ですか」
 教祖は根っからの悪党だとアンネは思った。

●子供の名前

 ガルバの別荘。警護と称してジョーカー達が勝手に保養に使っている。
 実はここでアレクセイと落ち合う予定だ。
「ふぁ〜あ‥‥。退屈ですね」
 烏鳩は伸びをする。その傍らで、
「他の方々はいろいろ動いているので‥‥。いけないことをしているような気もしますが」
 なんだか申し訳なさそうなシュリーマティー・ヤクシャ(ja1100)。
「いえ、表向きはガルバ様の別荘警護ということにしておけばなんとでもなりますよ」
 烏鳩は実に堂々と、我が家の寝室のように寛いでいる。その徹底振りにシュリも、
「まぁ‥‥。理由としては大丈夫かもです」
 少しゆったりと構えようと言う気に為ってきた。
「そんなことより。せっかくですから、お屋敷の中をいろいろ見てまわりませんか?」
「‥‥それが本心ですか。まぁ‥‥。私も興味はありますしね」
 烏鳩に唆されて、シュリもその気に成って行く。既に盗聴器の類はチェック済みだ。
 その上で、ガルバに洩れても良い話に限定する。

「偶にはこんな時間も良いものだな」
 別荘の一部を覗いた時点で、アレクセイが真白と到着。
「お子様の名前、決まっているのですか?」
 シュリが問い掛け、烏鳩が
「まだお考えかもしれないですけど。『エール』という名前はどうですかね?」
 と、提案する。
「何か意味がおありなんですか?」
「ふふっ‥‥。深い意味はありませんわよ。シュリ様。生みの親として考えていらっしゃるでしょう」
 顔を向けるシュリに烏鳩は笑う。
「子供の名前はオリヴィエ様がお付けになると思いますが‥‥。シュリもセカンドネームでよろしければ‥‥。『サティア』と」
「そちらは何か意味のあるお名前なのですか?」
「インド神話の神の名前です。ジョーカーといえど誠実であって欲しいという思いを込めて」
「なるほど‥‥。素敵ですね」
「アレクセイ様もオリヴィエ様も忙しい身。シュリでよければ精一杯愛情を注いであげたいと思います」
「私も是非。両親のように素敵な方になって頂きたいですね」
 シュリと烏鳩で盛り上がって行く。
 真白は、兼ねてから伝えてあった名前と合わせて、
「それで、アレクセイさんはどれがいいの」
 と聞いてみた。
 アレクセイは少し苦笑し、
「折角だが、『アキラ』だけはちょっとなぁ‥‥」
「へ?」
 なぜ? と首を傾げる真白。
「とあるジャスティスの印象が、余りにも強すぎる」
「‥‥駄目! フンドシは絶対に駄目ぇ〜」
 アレクセイの言葉に、何のことかピンと来た真白は絶叫した。
 こうして、真白が選んだもう一つの名前をファーストネーム。シュリの選んだ名前をセカンドネーム。そして、烏鳩の選んだ名前を今一つの名として、嬰児は名付けられた。
「ふふふ。東洋では、本当の名前は忌み名と言って隠しておくものよ」
 それが烏鳩が別名を用意した所以である。所謂、字(あざな)と言う奴だ。なにせここはガルバの別荘である。摩訶混沌界の変な呪術が幼子に及ばぬ為の計らいであった。

●宇宙商人

「ん‥‥? 前方に小型円盤発見!! あれか?」
 漸く嘉和が目標を発見。
「‥‥とりあえず信号を出してみようかしら」
 恐る恐るの罠兎。
「攻撃は‥‥してこないな」
 発光信号を返して来る円盤に、終夜はほっと息を撫で下ろした。

 程なくあちらの円盤と隣接し、ドッキング。
「ランドウと申します。いやはや遠いところを良くお越しで。生憎、取引を済ませた空船で、碌な物もございませんが、ごゆるりと」
「‥‥これで情報を買いたいの。できるかしら?」
 と、罠兎は秘宝の数々を並べる。
 ランドウはつまらない物でも見る顔で、商談に応じた。
「内容にもよるなぁ。とりあえず何を聞きたいんだ?」
「まずは‥‥。天上界。についてなんだけど。何かわかるかしら?」
 罠兎の質問にランドウは、
「はぁ? そんなもん知るかよ。聞いたこともねー」
「おい。お前本当に商人か? いきなり何も知らないってことはないだろ?」
 食って掛かる終夜。嘉和は宥める様に、
「物が足りないのであれば俺からも提供はするが‥‥」
 ランドウは肩を竦め。
「情報屋と間違えてないか? いや。すまねぇなぁ。ホントに判らないんだわ。でまかせを売りつけたとあっちゃ。信用に関わるしな」
 それに対して霧華は、
「それを教えてもらえるのでしたら、レガシーシップの分離ユニットでも差し上げれましたのに。‥‥仕方ないですね。次の質問に移りましょう」
 とカマを掛けた。
「そいつは魅力的だが、知らないものは知らない」
 本当に知らないらしい。

「それじゃあ‥‥。月から持ち出されたロストシップ(セントラル本星)について何かわからないかしら?」
 罠兎が切り出すと、ランドウは、
「‥‥知らないわけじゃないんだがなぁ‥‥」
 と、思わせぶりな返事。
「なんだ? 今度こそ取引開始か?」
 嘉和は身を乗り出す。
「‥‥ちょっと!! あなた。どこを見ているんですか!?」
 視線に感づき、霧華が声を荒げた。

「あぁ‥‥。なるほどのぅ。そーいうことかい」
「おいおい。そーいうことってどういうことだよ?」
 岸田の呟きに終夜が小声。
「一口に商人といっても代価が物だけではないということじゃよ」
 岸田の説明に、男達の内緒話が始まった。
「おいおい。ということはまさかこいつが欲しいものって‥‥!?」
 嘉和は訊ねる。
 
「ええっと‥‥。どうすれば‥‥。もがっ!?」
「説明すると長くなるんじゃが‥‥。商人さんを褒めてあげて上手いこと情報を聞き出して欲しいんじゃよ」
 交渉を進めようとする罠兎の口を塞ぎ、岸田は耳打ち。
「かっこいいとか。素敵だとかいってくれればいいからよ」
「な‥‥。何故そんなことをしないといけないのですか?」
 霧華説得の担当は終夜だ。

「安心しろ‥‥。変なことされそうになったら全力で止める」
 請け負う嘉和に罠兎は、
「え‥‥。ええっと‥‥。カッコイイお兄さん。あたし、どーしても知りたいんですけど‥‥」
 ランドウに向かって愛想を振りまく。
「よくわからないけど‥‥。こんな感じでいいのかしら?」
 確認する声も聞こえぬくらい。
「か‥‥。かっこいい?」
 ランドウは舞い上がっている。
「ほれほれ。もう一押しじゃよ」
 罠兎を急かす岸田。
「え‥‥えぇ。すらっと伸びた背。かっこいい瞳。素敵な商人さんから素敵な情報を‥‥」
 罠兎の意図を読みかねる霧華は目を闇夜の仔猫のようにして、
「な‥‥。何をいってるんですか!? 貴方は!?」
 当惑状態。
(‥‥しかし効果はあるようだな。女性免疫がないのか? この商人は?)
 終夜はかなり同情気味。
 どぎまぎしながらランドウは、
「あ‥‥。お嬢ちゃんがそこまで言うなら。‥‥木星付近で破壊されてデブリに為ってるって話だ。なんのために持ち出されたかは知らない」
「ううむ‥‥どうも足りない情報が多いな。他で調べるしかないか」
 考え込む嘉和に霧華は突っ込む。
「既出の情報です。そのくらい誰でも知ってます」

 煽て、甘え、ぶりっ子。
 アイドル生活で培ったありとあらゆるハートをキャッチする手練手管を駆使する罠兎。
「それじゃあ最後に‥‥。犯罪者ジャッカルの情報を‥‥」
 又してもランドウは、
「んー‥‥。知らないわけじゃないんだがなぁ‥‥」
 苛立つ霧華が切り込んだ。
「‥‥何が望みなんですか?」
「こっちの用件を飲んでくれないか?」
 直接言うのは気が引けたらしく、終夜に向かって手招きするランドウ。
「‥‥なんだ? 言ってみろ?」
「‥‥(ぼそぼそぼそ)」
 酢でも飲んだような複雑な顔で終夜は
「‥‥2人の体型をスキャンさせて欲しいそーだ」
 と告げた。
「‥‥えぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「な‥‥。何をいってるんですかっ!? お断りしますっ!」
 罠兎と霧華は当然の反応。
 呆れ返った嘉和は、
「さすがにそれはないな‥‥。と言うか何の目的でそんなことを」
 ぼそぼそと告げるランドウ。
「‥‥2人のフィギュアを作ったら高く売れそうだから。だそーだ」
 取り次ぐ終夜。
 岸田はぽかんと口を開けて、
「‥‥褒められたせいか調子にのっておるのぅ」
 当事者の一人霧華に到っては、
「できるわけありませんっ!! 変態ですか!? 貴方は!?」
「へ‥‥。へんたい‥‥」
 がーんと揺れるランドウの背景。
 つんつんしながら嘉和は、
「‥‥落ち込んでしまったぞ。これでは情報を聞き出しづらいな」
「お‥‥落ち込まないでください。や‥‥やります。やりますから」
 仕方無しに罠兎が承諾の意を示す。
「おいおい。いいのか?」
 余りの思いっきりのよさに終夜が止めるが、
「よ、よくわないわよ。でも‥‥時間が惜しいし‥‥。ややこしいことになる前に‥‥」
 罠兎の意志は堅そうだ。すると、豹変とは当にこの事。
「ほ‥‥ホントか!? やったぁ!! お嬢ちゃんなら銀河で有名人になれるぜ!! ほら、いそいでいそいで!!」
「ちょ‥‥。ちょっと待って!! そんなに急がなくても‥‥!!」
「善は急げってね!! 宇宙のアイドルも夢じゃないぜ!! 早く早く!! あんただけに、取って置きの情報を教えるよ」
 まるで罠兎を女神様でも崇めるかのようランドウ。
(こ、これは拙いです。ここでジャスティス『だけ』が情報を掴むのは。‥‥こうなったら仕方ありません)
 意を決して、霧華が口を開いた。
「ま‥‥待ってください!!」
 岸田は訝しがり、
「‥‥おや? どーしたんぢゃ?」
 果たして霧華も、
「わ‥‥私も、やってあげなくもない‥‥ですよ!!」
「おいおい‥‥。何もアンタも‥‥」
 余りの変わり様に驚く嘉和。
「マジで!? よっしゃあ!! それじゃあ2人ともよろしく頼むぜ!!」
 ランドウは嬉々として準備取り掛かるのであった。

 そして1時間後。
「あたっ。何をするんです」
 ランドウを足蹴にし、母型を粉砕する霧華。
「実物と異なります」
「そ、そんなぁ! 全て完璧に採寸したんですよ」
「流通させる気ですよね」
 霧華は冷ややかな目。
 恥を忍んで作らせてやる等身大フィギュアである。不本意な物を出される訳には行かない。もっとウエストは細いし、バストラインも美しいとやり直しを命じる。

 やっと直して戻ってくると、今度は罠兎が
「私のも、修正して貰えないかな」
 と、作り直しを強請る。
 結局、ランドウは合計100回ほど母型を作りなおす羽目に。
「なんだか、もう情報なんてどうでも良くなってるな」
 終夜は周りに問い掛けたが、他の男達は待ちくたびれて床の上で眠りに就いていた。

●パズル完成

「なるほどね」
 マリアベルがジグソーパズルをやるように、注意深く預言の情報を突き合わせて行く。別アプローチで解析をしている馳河三郎(ja1487)と競うように。
 篭ること3日。漸くトントのリーディングと石版のメッセージは、互いに補完し合うかのように結合した。
――――――――――――――――――――――――――――――
 聞け、公義の子ら。
 見よ、一人の王が立つ。

 牛の冠(かんむり)獅子の兜、山を掴む大きな腕。
 豺狼の目を持つ荒ぶる裁き司。
 王の王にして領主の領主。力の君にして混沌の敵。
 汝を滅ぼす仇なるぞ。

 聞け、公義の子ら。
 見よ、汝の仇が汝を弼く。

 一つの下僕(しもべ)は剣(つるぎ)なり。
 一つの下僕(しもべ)は隠れ潜む。
 最後の下僕(しもべ)は鎧なり。

 仇が3つの下僕(しもべ)蘇りし時、道は開かれぬ。
――――――――――――――――――――――――――――――
「あたし達の敵があたし達を助けてくれる? どういう意味だろう」
 生憎、まだトント老師と対話を持てなかったが、石版が示す意味は‥‥。
「マリアベル殿。公義の子をジャスティスとすると、王とはジャッカルに相違ない。少なくとも、レガシーシップの事では無き事が、ハッキリしましたぞ。王のいでたちが、ジャッカルその物ではありませぬか。拙者にはそうとしか思えませぬ」
 房陰嘉和は、軍記物を読み解くように絵に記した。
「でも、ジャッカルは間違いなく死んだんだしぃ」
 それが甦って来る? しかも味方として‥‥。
 マリアベルには、俄かに信じられない話であった。



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■プレイング(MVP)


■ja0136 デスペラード/ユキノシタ・マサカズ

エ:アンコールワットの地下伽藍
A:有口と調査
B:アスールと戦う 
D:預言の取得
プレイングのスタンス:【挑戦】

応援を受けて、変身して仲間達と緊急出動。
おやっさんも遺跡も守り仲間達と連携を取って敵と戦い
奪われた物を取り戻して預言を手に入れる。
可能なら、ジョーカーと折り合いを付けて共闘する。
ジョーカーとの共闘が不成立だったら、ジョーカーとも戦います。

敵と味方の動きを見逃さず、戦況を読んで冷静に状況を把握して
隙を作らないように動く。

星獣を召喚してナーガと戦う仲間の援護をさせ、小型ロボにはおやっさんを
守らせます。

ナーガと戦う仲間を妨害させない為、アスールと対決します。
距離が開いたら電撃を放出や、棒手裏剣[白木]を投擲して攻撃する。
接近戦では格闘で、超能力攻撃や吸血を警戒しつつ攻防戦を繰り広げます。
必殺技は五行連弾拳、波動弾と止めにブレイクアウトを叩き込みます。

預言の確保も、忘れずにしっかりします。



■ja0398 マリアベル/マリアベル・ロマネコンティ
○目的
イF:トントとのコンタクト

○動機
不確定要素を除外したい

○手段
【仇が3つの下僕蘇りし時、道は開かれぬ】
何をリーディングした内容なのか。
3つの下僕(剣、隠れ潜む、鎧)とは特徴なのか、それとも姿そのものか。
世界に仇なす存在か。
誰が蘇らせ、その理由は。
「道」とは何か。どこへ繋がるのか。開く、開かれぬとは何か。
一応、ジャッカル四天王の写真も持って行く。

情報検索対象がダウジンの必要性があるなら実行する。

ロッソを退ける事がトントと接触する一番の近道ならそれも実行。
退いたと見せかけたロッソが、トントとの遭遇後に不意打ちしてくることに注意。
陽蔓は守るに動くWCが多いからそちらを信頼しておく。

○戦闘
まず変身。
攻撃手段はバーニングランス。
ロッソが相手なら格闘(必殺技含む)で手堅く攻める。
必要ならばオーバードライブ。
よほど切羽が詰まった状況なら海蛇の杖を機動。カードリッジ使用。
遠近合わせて素早く攻めていく。



■ja1332 紫微たる紫水晶/破軍魔夜
★行動
コ:その他(ELOの組織改善)
【挑戦】
Joker全体として長期的に考え、ELOを組織を内部から改善する予定です。
主にやるのは将来的にオリヴィエさんの子に継がれる時に障害になりそうな者の排除と組織的には現状維持の路線のままの予定ですが。
組織については現状維持のまま触れません。予算を不正に蓄財してる者の更迭や粛清を主とします。ただ、不正に蓄財していると言っても私利私欲に使っていないのであれば見逃します。
そして、その組織改善を名目として、アレクセイさん、そしてその子にELO代表が受け継がれる時、障害になるであろう人物も一緒に排除する予定です。
罪が無いなら、創れば良い。そこで出来た資金はELOの裏資金としてプールしておけばよいでしょうからね。
オリヴィエさんにはジョーカーになりたての頃に色々借りがありますから、この件で全て返すつもりで事に挑む予定なのですよ。



■ja1338 エースの竜/獅子戸竜子
選択肢:ケ

新興宗教ってのはいつも胡散臭いね。
でも、もし教祖の預言能力ってのが本物なら、最近の事件傾向からしてガルバに狙われたりする可能性もあったりするんかも。

調査よりも、思い切って用心棒として売り込んでみる。
「何かと物騒な世の中になってるわけだし、教祖様のボディガードとして雇ってみないかい?」
その辺は、教団に結構寄付、と言うか宝くじみたいなのに金つぎ込んでる有力信者にでもどっかのコネ拾えれば、そこから繋げるのが手っ取り早いや。
「女教祖様に男のボディガードってわけにもいかないでしょ?」
格闘の腕前は素人に毛が生えた程度だが、ちょっと裏社会の人間っぽく相棒の45口径の腕前でも披露しちゃおうかね。
名は売れてないけど髪を下ろしてサングラス掛けて変装しとく。

上手く潜り込めりゃ御の字ってことで。
まぁ、全くのハズレって線もあるだろうけど。
ヤバくなったら内ポケットに隠した22口径も駆使して威嚇射撃してトンズラ。



■ja1374 兎月真珠/武曲罠兎
♪行動
キ:宇宙商人と接触
【安全】

とりあえず、護衛として鵜月さんと房陰さんの息子さんが来てくれると言うから護衛に来てもらって、S型円盤で宇宙商人と接触をするわ。
得るのは情報、こちらから出すのは私が持っている(装備している)秘宝全部よ。
とりあえず、交渉については技能に長じてる訳でも無いし、多少不利でも構わないわ。
ただ、足元見られてぼったくられるレベルにならなければ構わないとの方針よ。

・得る情報
1:天上界についての情報
2:月から持ち出されたロストシップ「セントラル本星」についての情報
3:犯罪者ジャッカルについての情報

この三点についての情報を買うつもりよ。…全部、今更感が出てる情報だけど、新しい切り口が出てくる可能性もありそうだからね。
足りなければ、番号の大きい方から切ってくつもり。
余裕があったなら、他の人の情報分で足りないのに上乗せと言う形を取りたいけど…。



■ja1494 梟の魔女グラウクス/夜木菟葵
【イCD】老師達が狙われてると危険ですもの

●行動 ・援護
胡蝶さん(ja1679)と共に行動

・捜索
聖地へ行き、異変が起きてたら捜索。ガルバ一味やJokerに狙われてる可能性が高いから。
仲間と本部に連絡を取り合うわ。

・戦闘
ロッソ戦ではロッソの幻想力を封じた方が有利と判断したら、皆に連絡を入れサンクチュアリ使用。
ピンチの時、皆に目を伏せる様に連絡を入れてから【閃光花火】をロッソorJokerに向かって使用。
Jokerにはスパイダーネットや万能ビームガンで援護。

・怪我人には
小型ロボ[ナース]で応急手当。

・発明プレ
名称:閃光花火
形状:ロケット花火
効果:着弾すると凄まじい閃光で眩暈と吐き気を催す。
一発限り。敵味方識別機能は無い。

【イAE】
・石版と老師
ロッソ等から護り、石版の内容(預言?)を取得

【イF】
・トント老師に
陽月さんはララの娘(ランちゃん)が見たものを感じたみたいなの。
銀色の光を帯びた古びたガンベルトに心当たりが無いか尋ねる。



■ja1794 霞沢賢一/霞沢賢一
【アC(流れに応じてA〜B)ナ挑u
日本で厄介な噂になっている「新興宗教」が、インドにまで手を
伸ばしていないか一応調査
回収された預言の葉は出来る限り正確にスキャンし、本部にデータ転送
各地の情報と併せ、迅速な解析を依頼

私自身も各種ツールでの分析を試みるが、本部や他の研究者の意見も
無論重視
今回の場合、セントラル=陽月くんが指摘したように先入観や偏見の無い
眼の方が正しい何かを見抜いてくれるかも知れない、それに期待

回収した葉の取り扱いは慎重に、後で元の場所に返却しないと
いけないからね

「おや、それは?」
ララ女史が持っている?「くすんだ色の塊」も、話題にのぼれば
お借りして調査を…他の預言の葉とは別に管理し、本部とも内容に
ついて協議
地元基地と、本部双方の研究設備で解析を行い結果の照合を

Jokerの襲撃があれば、星獣[ソドム]を立ち向かわせ、銃撃で応戦
ララ母子の安全は勿論重視、武装ヘリその他で迅速な脱出の手筈を



■ja2167 クロスライダー/十文字ショウ
オ/A.B.C 

【動機】
正義のヒーローは子供の味方ってね。

【行動】
「アトラン」を頼りに来てみれば、なんとも魔女狩りを彷彿とさせるこの状況。
お仲間が鎮圧に来ているようだが、未所属の俺は独自に動かせてもらいましょ。
まずはクロスライダーに変身し、目にも留まらぬ速さで、聖刻の少女の下に直行。
「俺はクロスライダー。罪も無い男の子が困った事になっている。彼を助ける為に手伝ってくれ」と頼み、有無を言わさず引っ張り出す。
秘宝[イシスの翼]で上空から舞い降りて見せりゃ、迷信深い連中は天使と間違えてくれたりしてな。
ともかく聖女様に解散するよう行って貰いますか。

大方、インチキの種を見られた親父が口封じに扇動したってのが真相だろうが、公にすると女の子の身が危険なので秘密にしおくとしても、性悪親父は懲らしめないとな。

さて、居合わせたジョーカーらは、ここは穏便に引き揚げてくれない物かね。こっちに戦う理由は無いんだが。



■ja2260 グレムラクサー/羅刹教授
ク:作戦本部にて情報収集と分析、連絡拠点の維持

(口調)
DS団→ディ〜エス団、Justice→ジャ〜スティス と発音

(なりゆきで小生も手伝いに駆り出されてしまったが、アレクセイめ…
【猫】どころか、すました顔をしてかなりの【狸】やも知れんな)
という内心は表には出さず、電子頭脳の活動をフルにするために
グレムラクサーに変身して電算業務にあたろう

各地より集まってくる種々雑多な情報を取捨し、ときには兼ね合わせ、
暗黒星雲で身につけた全ての知識と狂気を総動員して分析

情報の分別こそしないが、我がDS団にとって有益な情報は逐一
チェックの上で持ち帰らせていただくとする

全世界を恐怖のどん底に叩き込めるのならば
今はキマイランズと手を結ぶのも致し方あるまい
いずれは我らが覇を唱えることになるだろうがな



■ja2284 モローアッチ教授/ジェームズ・モローアッチ
ウ/A 織機の確保
行動:
●今回は古巣の英国で予言の機械の奪取を行おう。未来を知るなどヤボだが、道具としては役に立つからな。具体的には、織機を持つ秘密結社に護衛として強引に潜り込んで(この結社の事は昔から知っているし、わしの悪名なども最大限に活用して潜り込むぞ)織機に近づき、ガルバやJusticeの連中の戦いの隙をついて奪うぞ。その際丸ごとが難しかったら、中心部分だけもっていくぞ。
●もし織機がガルバの手に渡りそうになれば、粉砕バクダンで織機を破壊して撤退するぞ。連中に予言の機械なんぞ渡ったらさらに手がつけられなくなるからな。
●前もって逃走経路は確認しておくぞ。逃げ道は忘れずに。これは悪の鉄則だからな。では諸君、また会おう〜(逃走)。

博士プレイング:粉砕バクダン
ボーリングサイズのどくろが描かれた昔ながらのバクダン。対物破壊に特化しており、その名の通り対象物を粉砕する。導火線に火を付けると解除不能。



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