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■「GALVA INVASION」第2ターン 全体イベントシナリオ 後半パート リプレイ

●魔王の城の虜

 数多の戦士たちの活躍により、各地で魔王軍を退け、魔王の城を包む嵐の結界も破られて魔王城への道はついに開かれた。
 今まさに王国の戦士たちが勇者を先頭に攻め込まれようとしている魔王城だが、籠城戦を待ち構える準備をする城の慌ただしさとは無縁の静けさであった。
 そんな城の中央城郭の一室に、1人の少女が入って行った。片手に料理の乗った盆を持ったその少女の名は烏鳩(ja0226)、魔王軍に捕えられた村娘だった。
「さあ、妖精さん食事のお時間ですよ」
 そう言って、大型の鳥かごに囚われた妖精シフールに小さなスプーンに掬ったスープを差し出す。
「ねえねえ、ここから出してよ〜。あたしはみんなに知らせなきゃならないことがあるんだから〜」
 シフールは、烏鳩が世話係としてつけられてから繰り返してきた主張をする。
「私も出してあげたいけど、籠には魔法の鍵がかけられているし、この城自体が閉ざされた大きな檻みたいなものだから連れだせないの」
 烏鳩は最初のうち何回か試してみた結果を告げるが、シフールは何度も繰り返した説明を全く覚えておらず、また同じことを繰り返していた。一見造りの華奢な鳥籠にしか見えないが、烏鳩がどれほど必死に開けようとしても鳥籠の口は開くことなく、壊そうと箒やモップで叩いてみてもフレームひとつ曲がることはなかった。
 毎日食事や着替えの世話をする度に繰り返し、何度目になるか数えるのもとうに放棄した説明をしてやるとようやく状況を思い出したのかシフールは騒ぐのをやめた。
「そうだったね。お姉さまから伝言を忘れないように魔法をかけられてるから、他の事みんな忘れちゃうんだ」
 そう言って片手で頭をかきながらばつが悪そうに笑うシフール。そのお腹がきゅるると甲高い音で鳴った。
「お腹すいちゃった、ご飯ちょうだい」
 烏鳩はくすりと笑って小さなスプーンでスープを飲ませ、小さく千切ったパンを渡してやる。身長50cm足らずの小さなシフールはその小さな体のわりに大量の食糧をたいらげるとようやく満足した笑みを浮かべた。
「どうしてこんなことになっちゃったのかな〜?」
 シフールの何気ないつぶやきを耳にした烏鳩はやさしく尋ねた?
「何がこんなことなの?」
 普通に考えれば、平和だったバルティカ王国に魔王軍が攻めて来て、世界が大変な状態になった事を指すのだろうが、シフールの言葉は一介の村娘の理解を超えていた。
「みんなに大事なお話を伝える為に、お姉さまたちが頑張って夢の世界に招待したはずなのに〜。なんで摩訶混沌界が入ってくるのよ〜」
 村娘には理解できなったシフールの叫びも記憶の片隅に残り、烏鳩はその意味を後に知ることになるのだった。

●出陣前夜の宴

 魔王城攻略部隊が出陣する前夜、勇者たちの手で救出されたバルティカ王国の聖王女二人、ヒヅル姫(jz0068)とヒヅキ姫(jz0089)が精霊の声に導かれし数多の勇者・戦士が集う王都キャピタルの酒場「銀の鈴亭」へと訪れた。
 まだ早い時間だったため客の少なかった酒場に居た最強村人甲斐・仁志(ja1236)の見守る前で、宮廷料理人が腕をふるった様々なごちそうが大量に酒場に運び込まれた。銀の鈴亭の接客を支配するバイトという名の支配者アリサ・エスクード・須藤(ja0567)は、酒場の料理が出なくなる事に頭を痛めたが、すぐに気持ちを切り替え料理目当てに訪れる客にしっかりと酒やその他の飲み物を販売する事で元を取る為、手はずを整えた。
 日が暮れ人が増えてきたところを見計らい、再び酒場を訪れた二人の王女。
「や、こんばんは」
 妹のヒヅキ姫が気さくで明るい挨拶をすると。
「こんばんは、皆さん」
 姉のヒヅル姫は物腰穏やかに丁寧なお辞儀をする。
 二人の姿を認めた偽勇者涼村シンジ(ja0931)は、先ほどから肉料理ばかり食べ続けていた手を止め、恭しく挨拶をする。
 武道家胡蝶・亜都真(ja1679)が体調を心配して問いかけるとヒヅキ姫が心配をぬぐうように明るく答えた。
「もう元気元気、閉じ込められて運動不足になってただけだから」
 その言葉に酒場に居た客はもちろん、従業員にも安堵の色が広がっていく。
「魔王が探しているという何かの名前は聞きましたか?」
 魔王が王女達に尋問していたという探しものについてシンジが尋ねた。
「たしか‥‥、ヘルとかヘレとかいってましたが、聞いた事のない言葉だったのでよく分かりません」
 その問いにヒヅル姫が申し訳なさそうに答える。
「ヘルにヘレですか、うーんなんでしょうねえ? 大魔王の名前かなにかでしょうか?」
 亜都真が口にした大魔王という言葉に酒場は騒然とする。答えを持たないヒヅル姫が申し訳なさそうに答える。
「ちょっと分かりません」
 その後に続いてヒヅキ姫が続ける。
「なんとかの子とか言ってたような気がするけど、良く覚えてないな〜」
 そんな会話が続く中、王女救出に活躍した勇者織部・真白(ja0650)と漆原祐(ja0289)が続いて酒場の扉をくぐってきた。口々に心配を口にする二人の勇者に対して姫は元気だと答える。
「魔王の次は大魔王か‥‥何としてでも阻止しないとな」
「もし魔王が何か企んでいてもぶち壊してみせるよ!」
 勇者たちの勇敢な言葉が人々を勇気づけ、魔王軍討伐に向けて集う戦士たちの意気は高まる。そして、夜中まで宴は盛り上がり、やがて来るべき戦いのため、戦士たちは休息についた。

●城門の攻防

 その日、諸外国の支援も得たバルティカ王国の総力を挙げ、魔王城への攻略作戦が開始された。

 城門に迫る討伐軍の前に立ちふさがる黒い影が一つあった。
「さぁ、人間どもよ。我が斧の錆になりたい者から掛かって来るが良い」
 暗黒鎧に身を包み、巨大な斧を構えた暗黒騎士バスティラ(ja1544)が吠える。魔王に魅入られ魔王軍に身を落とした暗黒騎士は、魔力で閉ざされた城門の前に立ちふさがる。魔王城を守るという余人には信じられない目的の為に。
 魔王軍に与するという狂ったとしか思えない行動をとる暗黒騎士であったが、その堂々とした態度には武人の矜持が感じられ、多勢で押しつぶす事は躊躇われた。
「しゃあねえな、魔王は手前等に譲ってやる、俺はコイツで我慢するとしよう」
 その男気に感じざるを得ないものが居た、一対一の戦いを生業とする決闘者・波佐見稔雅(ja0174)だ。稔雅は背負ったクレイモアを抜き放つと間合いを詰める。巨大な剣の威力は侮りがたい物を持っているが、重厚な鎧の前に小手先の技は通じない。バスティラも斧を構えて必殺の間合いを測る。
 攻撃の間合いは僅かにクレイモアが勝る。だが、安易な攻撃では重厚な鎧ごとバスティラの戦意を断ち切ることはできない。一撃で仕留め損なえば重い斧をかわす事もできず致命の一撃をくらうことになるだろう。相手の動きを見据えながら、間合いを詰めていた両者だが。稔雅が足をとめた。
 僅かにクレイモアの間合いには遠い。稔雅の剣が動くのを見て、この間合いでは浅い攻撃しかできないと踏んだバスティラが一歩踏み込み体重をぶつけて斧を振るう。

 グシャッ!

 重い斬撃音が響き鮮血が迸った。
 黒い戦斧が地面に食い込んでいた。
「ふぅ、肝を冷やしたぜ」
 稔雅が鎧の肩口に深々と食い込んでいたクレイモアを一気に引き抜くと、バスティラの肩口からはとめどもなく血が溢れ出す。浅い間合いで必殺の気迫を籠めた一刀を繰り出し鎧だのみで反撃にかけたバスティラを誘った稔雅は、始動した剣を一瞬止めてバスティラを呼び込み、斧が届く前に剣を打ち込んだのだ。魔王軍との戦いを始める前の稔雅であれば、及ばなかっただろう。だが、巨大なドラゴンにも勝利した竜殺しの決闘者の胆力が僅差で暗黒騎士に勝っていたのだ。
 城門に立ちふさがる暗黒騎士はその使命を終え、事切れた。

「行くよー、せぇーのっ!」
 東方の神秘の武術を使う力士・結城夏岳(ja0126)がしなやかなその腰よりも太い丸太を抱え、身体を伸びあがらせるように加速をつけ城門に丸太を打ち付けた。派手な轟音とともに魔王城の城門が吹き飛び、討伐軍の軍勢がなだれ込んでいく。魔力によって閉ざされ魔法を阻む城門も、東洋の神秘の武術を使う美女のパワーにはかならなかった。力士夏岳、決して食糧窮乏が懸念される折に夜毎大量の食糧を平らげていた訳ではなかった。
 さらに前方から突進してくる3mを超す身長に体重は5倍以上はあろうかという巨体を持つオーガ(食人鬼)を、低く落とした姿勢から伸びあがるように顎に掌を食いこませ、巨体を浮き上がらせると倒れる鬼の腹にしなやかな脚を突き入れとどめをさす。
 城門の内側には、無数のモンスターの群れが犇めいていた。巨大な一つ目を持つ巨人サイクロプス、再生能力を持つ剛腕のトロール、食人鬼オーガといった大柄な鬼族が、それこそ無数のゴブリンやオークを従え、否、恐怖によって駆り立て襲いかかってくる。
 迫りくる小鬼どもを蹴散らし、巨大な鬼へとひた走るのは、重厚なプレートメイルに身を包んだ剛腕の戦士牛尾・力山(ja1697)だ。
「遠からん者は音に聞け。近くば寄って目にも見よ! 我こそは戦士、牛尾・力山なりっっ!! 誰の挑戦でも受けるぞ!!!!」
 左右の手にした杖と剣をふるい敵雑魚を薙ぎ払うとトロールの巨体に痛烈な一撃を打ち込んだ。

 城門を突破した魔王討伐軍の一行は、四方へと散らばっていく。魔王の城を閉ざす結界を打ち破る為、結界に魔力を供給する源を有する四方の塔へと。そして、魔王の城に囚われているという妖精の救出と魔王自身を討ち果たす為、中央の城郭へと突き進んでいく。
 討伐軍の目指す先は分かれているが、外界と魔王の城をつなぐ場所はこの城門一つ。万が一にも魔王軍の反撃にこの城門を奪還されてしまえば、突入した部隊は外界との連絡を絶たれ各個撃破を受けることになるだろう。突入部隊を援護する為にも、援軍を送る為にもこの城門を守りぬかねばならなかった。

「私は‥‥俺は! あの悲劇を、屈辱を―2度と繰り返させはしない! 今度こそこの国を、この場を護り徹す!」
 魔王軍の進攻により守るべき国を奪われた亡国の騎士ジャグルス・ディセンバー(ja1174)は、卓越した才を持つ守護魔法に全力を集中し城門一帯を強力な守護の結界で包み込みながら吠えた。その言葉の先には、口をついて出ていない「たとえ俺の命に代えようとも」という決意があった。
 強力な結界は、力のない雑魚モンスターを全く寄せ付けず、強敵モンスターの接近を阻む。数多の戦士たちは結界を盾に隊伍を組み魔王軍のモンスターを攻め立てた。
「おら、まだ倒れるには早いぜ! 戦いはまだ終わってないんだ!」
 騎士中島・俊介(ja1018)も迫るサイクロプスの隻眼をランスで貫きつつ、戦士たちを鼓舞する。
「皆様、生きて帰るまでが魔王討伐です。死して名を残そうなどという愚かな考えの方がいらっしゃいましたら、先に申告して下さいませ。回復魔法の無駄ですから」
 聖なる槍を操る吸血鬼退治を生業とする僧侶村正誉(ja1045)がその端正な顔立ちに似合った丁寧な口調で、その姿に似合わぬ辛辣な言葉を紡ぐ。そういいながらも、彼女はキマイラの牙に掛かり傷ついた戦士を癒している。これも、いつ果てるともわからぬ魔王軍の攻撃に心折れそうになる戦士たちを鼓舞し、生きて帰る意欲を想い出させる為であろう。

「敵はモンスターだ、前後左右から来るとは限らんぞ。油断するな!」
 周囲に警告を飛ばしながら率先して鉄拳を振るっているのは、騎士マーク・ネルソン(ja1600)だ。その言葉の通り上空から襲ってきたグリフォンの鋭い爪を盾で受け止めると剛腕で押し返す。結界の外に出たマークの足元から、全長10mはあろうかというジャイアントワームが地面を割り這い出してくる。体勢を崩しよけることも受けることもできないマークを突き飛ばし代わりにその牙に掛かったのは、守護者ラッセル・ソール(ja1276)だ。
「やっとわかった気がするぜ、親父。『守護者たる者自らのために戦うべからず』って言葉の意味」
 騎士や貴族といった連中を嫌っていたはずのラッセルだったが、目の前でともに闘う仲間が窮地に陥ったその時、それが騎士のマークである事等関係なく身体が動きかばっていたのだ。
「やりなさい、ラッ君!」
 召喚師の如月・卯月(ja1611)が自らのパートナーである白銀のドラゴンラッキースターに攻撃を命じる。まだ幼い竜ではあるが、竜とワームではモンスターの格が違う。鋭い爪に切り裂かれ、強靭な顎に噛みつかれたワームは飲み込みかけていたラッセルを取り落とす。
「守るんなら、最後まで守り通せ。休むのは、それからだ」
 駆け寄った俊介が、ラッセルに回復魔法を施す。
「はいはい、そこ油断しないの」
 稲妻の騎士の異名をとる旅の騎士アンネ=ローレンシュタイン(ja1345)が倒れたラッセルと治療を施す俊介に迫るサイクロプスの一つ目を疾風の剣で貫いた。

●南の塔〜炎の鳳〜

 城門を抜けモンスターの群れを潜り抜けた一団は5方向に分かれてそれぞれの目的地を目指した。
 その一群が来たのは城門から近い城の南にそびえる尖塔だ。魔力による探査で火の魔力が満ちており、そこから中央の城郭を守る結界へとエネルギーが送られている事が分かっている。
 火の塔への先陣を切るのは、黒騎士・黒田嶺司(ja0698)だ。水の魔力を剣に込め冷気の剣を振るう力を持つ黒騎士を先頭に塔の中に切り込んでいく。
 魔王の魔力に操られたサラマンダーやウィル・オ・ウィスプ等炎のモンスターが行く手をふさぐが、精霊使いの連(ja1840)の呼びだした水の竜がその牙で食い破っていく。
「火事が怖くて海賊ができるかー!」
 そんな叫びをあげ海賊の河原まさご(ja1691)も水の魔力で身を守り槍と盾を手にモンスターを打ち破っていく。その後ろには仔猫天使・霧島萌(ja0683)も魔法の杖と魔法の箒を手についてくる。
 襲いかかる火のモンスターとそれを倒して進む仲間をしり目に哀しげな瞳を見せるのは、巫女の寒来・玲那(ja1555)だ。モンスター達と仲良くしたいと思っている玲那にとって問答無用で襲いかかってくるモンスターを倒すしかない状況はつらかった。それだけに、その状況を生み出した元凶である魔王ガルバへの怒りが高まる。
 火の主に対して魔力を温存しながらついてくるのは賢者・破軍魔夜(ja1332)だ。男性が苦手な魔夜は先陣を切る嶺司から距離をとる為に最後尾についている。

 強い水の加護を持つ一行は次々と塔の途中の守りを破りついに最上階にたどり着いた。
「凄い熱気だね」
 水の魔力に護られたまさごでさえも辛い程の熱気が立ち込めたその部屋は中央の淀んだ赤のクリスタルから迸る炎に照らされ、熱気に焙られていた。
「水の魔力で皆さんをお守りします」
 賢者魔夜が呪文を唱え、全員に水の守護を与えると守りの技を持ってなかった玲那も呼吸が楽になる。そのままでいれば、数分で熱気に喉をやられ全身に火傷を負っていたかもしれない。
 魔力の源になっている赤いクリスタルを止めようと嶺司が手を伸ばした瞬間、クリスタルからわきあがった炎がひときわ大きな火の鳥、否、炎の鳳を形作ると羽ばたきで熱風を送り込んできた。
 水の守りの上からでも肌をひり付かせる強力な熱風に、いったん距離をとる嶺司。強大な炎の力に気押されかけた一行を勇気づけたのは、萌の言葉だった。
「仔猫天使プシィエンジェル参上! 城砦への道、開けてもらうよっ☆」
 高い魔力を持つものの、いたいけな少女に過ぎない萌の勇気と意志の強さを感じさせる言葉に皆が奮い立つ。炎の鳳が口から炎の渦を吐き出すと、萌は水流弾を正面からぶつけ対抗する。炎の魔力そのものである炎の鳳が放つ強力な炎の渦は相性の悪い水の魔力相手にも引けは取らない。それだけに拮抗した水と炎の力が中央で弾け、蒸発した水流弾の水がもうもうと立ち込める湯気を生み出し、視界を遮った。全体に満ちた水の魔力が、じわじわと体力を奪う熱気を和らげ皆の身体を動きやすくする。
「ちょうど良い舞台が整いましたね。受けてごらんなさい、賢者・破軍魔夜の魔法を」
 魔夜が長い呪文の詠唱を終え、風と水の魔力を込めた霧の竜巻を生み出し炎の鳳の身を捕える。
「今だ!」
 連の掛け声とともに、連、玲那、萌が呼びだした3匹の水の龍が身体を絡めあい炎の鳳に迫る。その背には、まさごの姿がある。
「ええい!」
 龍の背からまさごが跳び上がると三匹の龍はそれぞれ炎の鳳の両翼と胴を締めあげ動きを拘束する。三匹の水の龍の締めあげに苦しげに開いた嘴にめがけて落下してきたまさごの槍が全体重を乗せて突き刺さる。
「魔力の中枢は胸の中央です」
 魔力の源を見抜いた賢者魔夜の言葉を受け、嶺司が奔る。
「任せろ」
 持てる魔力のすべてを冷気に変え剣に宿した嶺司の一刀が、極限の冷気を宿して炎の鳳の胸元に深々と突き刺さった。
 炎の鳳は苦悶の声をあげると炎の勢いを失い描き消えていった。魔王の注ぎ込んだ邪悪な魔力を絶たれた火のクリスタルは黒い影が消え明るく暖かい赤色にその輝きを変え、塔の中で荒れ狂っていた火の魔力は収束した。
「今度生まれる時は、普通のモンスターに生まれてこい」
 玲那は消えゆく炎の鳳にそっと呟いた。

 王城から、戦いの様子を占っていた占い師の深井・蓮華(ja1832)は、大きな魔力の変化を感じ取った。
「禍々しい火の魔力が途切れ、清浄なる火の力が戻りました。中央の城郭を閉ざす魔法の結界も弱まり、2階と3階の間が通行可能になったようです」
 占い師の言葉を持って、鳩面の伝書士ブラッドピジョンは東へ飛んだ。
 情報を受け取ったのは魔王城攻略軍の後方支援活動として情報の収拾を行っていたギルド長・松戸旦求(ja1103)だ。
「伝令ご苦労、だが2階と3階の間では無理に情報を伝える時にはまだ早いであるな。時が来れば突入組に伝えるので、ピジョン君は続報を運べるように城に戻っておいてほしいである」
 塔の一角が落ちた事は、城門内でモンスター軍と戦うメンバーには伝えられその士気がひときわ高まった。

●西の塔〜地の霊亀〜

 一方、西側にある地の塔にもそれを攻略するべく戦士たちが突入しようとしていた。
 先陣を切るのは、勇者・草加ムサシ(ja1906)だ。くじ引きで町を代表して勇者に選ばれたというムサシは本来気弱な性格なのだが、魔法使いの南大社・ハミュン(ja1907)が調合した精神高揚剤が効きすぎて、自己暗示と重なり超強気・超やる気の前向きな勇者そのものという性格に変容していた。魔法の鎧をまとい竜殺しの魔剣を手に突き進むムサシをフォローするのは、紅蓮剣士の獅子堂・炎(ja1806)炎の魔法と剣を操る戦士だ。
「待つ、敵居る」
 優れた嗅覚と野生の勘で一行を導くのは蛮族出身の戦士ファナ・コウサカ(ja1764)だ。ファナのブーメランが弧を描き影に潜むモンスターを追い出した。
 姿を見せたのは石化の瞳を持つバジリスクだ。
「ここは拙者に任せてもらおう」
 そう言って進み出たのは、超一流の剣技を持つ侍・寒来刃夜斗(ja1056)だ。俺がやるとノープランで叫んでいる勇者ムサシは、酔拳使いの武道家・涼村レイ(ja1668)に首根っこを押さえられ白い手に目を塞がれている。
 目を閉じた刃夜斗がバジリスクと対峙する。他のものはバジリスクの目をみない為に視線を逸らしており、見守るものはない。視線を合わせない刃夜斗に業を煮やしたバジリスクは噛みつこうと迫る。しかし、熟練の侍である刃夜斗にとって単純な獣の動きを足音や空気の流れから読み取る事等容易いことだった。
 キンッと甲高い音をたて、腰にさした魔剣天空の剣が鞘に納められる。それと同時に、真っ二つに割れるバジリスク。神速の抜刀術で抜き手も見せずにバジリスクを一刀両断したうえで剣を納めていたのだ。
「敵来る、弱いけど、多い」
 ファナの警告とともに、大地の魔コボルトが群れをなして襲いかかってくる。一体一体の戦力は決して高くはない。大地の魔力を持っていることを除けばゴブリンなどの下級モンスターとは変わらないが、あまりにも数が多い。
 身構えるムサシ、炎、ファナ、刃夜斗、レイの前に進み出たのは火の魔法を得意とする魔法使いカルロス・フェルディナント(ja1559)とその護衛である少女戦士ディス(ja1560)。ディスの手にはフライパンが武器として握られている。
「時間を掛けさせる狙いの雑魚に時間をかけてやる必要はない」
 そう言って手をかざした男装の女性魔法使いの手から放たれた炎の球がコボルトの群れの中心で炸裂し、一気に数十体の群れを消し飛ばした。相性が良い事を差し引いても強大な魔力である。こちらに近づいていたおかげで火の球に巻き込まれずに済んだ1体のコボルトが飛びかかってくるが、カルロスを守るディスのフライパンを顔面に直撃され撃墜された。
「うわ〜、凄いねみんな。これならこの塔の親玉も楽勝だね」
 そう言って場を賑やかすのは、旅芸人・霧原艶樹(ja1456)だ。旅芸人といっても炎の魔法の使い手でもある。
 続いて現れたのは、大地の巨人だ。剛腕を振るい襲いかかる。階段を塞ぐように立ちふさがる巨体に邪魔され先に進む事ができない。倒して先に進もうと身構える一行に酒瓶の最後の一滴を飲み干したレイが声をかける。
「ありゃ、あたしはここまでみたいだから、先に行って。大丈夫、任せて」
 そう言いながら千鳥足で巨人に迫るレイ。巨人の拳が端正な顔面に吸い込まれそうになるが、足をからませつんのめったレイの頭上をむなしく通り過ぎる。巨人の木の幹のような脚がレイの長い脚を薙ごうとするが、レイは巨人の脚の上を転がってやり過ごす。
 のらりくらりと攻撃をかわすレイに腹を立てた巨人が渾身の拳をレイの豊かな胸元に打ち込む。それをふらふらと千鳥足でかわしざま、両手を巨人の腕に巻き付けると全体重を預けながら巻き込むようにして巨人を投げた。
「さっさと行ってね〜、こいつはあたしが倒すから」
 レイがそう言って階段へ走れと促すが、仲間たちは階段から振り返って心配そうな視線を向ける。
「ひっく、大丈夫、終わったらちゃんと行くから、ムサシのお嫁に〜」
 本気なのか酔っ払いの戯言なのか分からない台詞だが、命がけの戦いの中だけに妙に信憑性がある言葉だった。精神高揚剤で興奮状態にあった勇者ムサシだが何か重い物が自分の肩の上に乗ったような気がした。

 一行はレイの献身もあり、塔の守りを破り最上階にたどり着いた。中央に位置するのは黒い地のクリスタルしかし、魔王のガルバの闇の魔力に侵されたそれは禍々しい色合いを帯びていた。
「身体が重いんだけど‥‥」
 最初に不調を訴えたのは一行で最も体力ない艶樹だ。地の魔力の暴走でこの場は通常より大きな重力場に包まれいてた。
「たしかに剣が重いな」
 重い竜殺しの魔剣を持つムサシもうなづく。
 緊張が高まる中、クリスタルから染み出した気が凝縮して身長5mはあろうかという直立した陸亀が現れた。亀が現れると同時に一行を縛る重力の重圧が増大する。
 動きの鈍った一行に向かい霊亀は黒い球を吐き出した。さほど速いとは思えないスピードで飛んでくる黒い魔力弾だが身体が重くなった面々にはかわすのが難しい。魔力弾はムサシ・炎・刃夜斗の身体を貫いて壁に当たる。見た目には穴があいたりはしていないが、重いパンチを受けたような衝撃と引きちぎられるような感触を受けた。実体のない重力弾のダメージだった。
「さっさと決めるしかない」
 ムサシが叫ぶ。時間が掛かれば重力結界で体力が奪われるだけだろう。ムサシ、炎、刃夜斗が一斉に斬り掛かり、ファナが飛びかかり、ディスもフライパンを振り下ろす。
 鈍重な霊亀はまともに三人の剣を食らい、ファナに飛びつかれて引っ掻かれ、噛まれる、そしてディスのフライパンを受ける。
「堅い」
「剣が弾かれる」
「拙者の剣が通らぬ」
「堅くて噛めない」
「手がしびれました」
 重力場が動きを鈍らせているといっても、これだけの攻撃を撥ね返す防御力は非常識だ。
「時間を稼いでくれ」
 カルロスがそう言って極大魔法の詠唱を始める。
「こんなのはどうかな〜」
 艶樹が怪しげなステップを踏み、奇妙なリズムに乗って踊り始めた。二人が何かを仕掛けている間、4人は必死に霊亀のすきを探る為に剣とフライパンを振るう。
「駄目だ、甲羅の隙間も手足の付け根も変な魔力で守られてやがる」
 炎の悲痛な叫びが響く。
「だが、身体が軽くなってきたようでござるな」
 たしかに身体に掛かる重圧がだんだん弱くなっていた。
「へへへ、どうかな僕の不思議な踊り」
 踊りを得意とする艶樹の不思議な踊りが霊亀の魔力を吸い取り重力結界の効果を弱めていたのだ。
「魔力の防壁も弱くなってきている。今がチャンスだ!」
 ムサシが叫ぶ。
 カルロスが頷き、極大魔法の詠唱を完成させようとしたそこへ、霊亀の重力弾が発射される。
「カルロスさま!」
 表情の乏しい少女戦士ディスが必死な声をあげ、身体を重力弾とカルロスの間に飛び込ませカルロスを重力弾から逃がす。ディスの身が弾け跳び倒れる、その姿をみたカルロスの怒りが炎の魔法にさらなる熱量を加える。
「侍、寒来刃夜斗推して参る!」
 三刀を抜き放った刃夜斗が剣撃を一点に炸裂させ魔力防壁を打ち破る。
「その炎、俺によこせ!」
 右手にした剣に炎をまとわせた炎が叫び、カルロスは極大の火焔魔法を炎の剣に向けて飛ばす。
「我が炎に耐えられるのは一瞬だぞ」
 カルロスの炎をまとわせて巨大な炎の剣となった炎の剣が刃夜斗の作った魔力防壁の切れ目に突き入れられる。強大な魔力に耐えきれなかった剣が砕けながらも炎の刃が強靭な霊亀の甲羅を突き破り焼き砕き霊亀の魔力中枢を露出させた。
「行くぜ。ドラゴンも倒した俺の必殺技‥‥カイザーダイナミック!!」
 ムサシの剣が霊亀の魔力中枢を切り裂き霊亀を清浄な地の魔力へと還元させる。

「地の魔力も正常化されました。これで1階と2階の通路も開きました。伝令をお願いします」
 蓮華の遠見の結果を持って伝書士ブラッドピジョンが討伐軍の陣に飛ぶ。それを受け取った旦求は、城郭に突入した精鋭部隊への伝令を決断した。
「これを城郭に突入したメンバーに届けてくれ」
 伝令文を託されたのは、韋駄天の異名を持つ飛脚・猫目斑尾(ja0397)だ。これまでの魔王軍との戦いでも危険な場所への重要な伝令や物資輸送を成功させた危険な場所に早く情報を届けるという点では最も信頼できる伝達者だ。
「任せな、超特急でいってやるぜ」
 そう言って、城門を超え、モンスターと城門防衛隊の戦う隙間を駆け抜けて城郭に突入した。

●支える者たちの戦い

 城門の攻防は、個々の戦闘だけを見ればこれまでの魔王軍との戦いで経験を積み力をつけて来た討伐軍の優勢で進んでいた。雑魚モンスターは、剣の一薙ぎごとに倒れ、魔法使いの魔法で一網打尽に倒されていく。
 更にトロールやグリフォン、サイクロプスといった強豪モンスターもジャグルスの結界を破れず、夏岳、力山、俊介、アンネらの攻撃に次々と破られていく。

「さて‥‥こうも敵だらけだと逃げたくなるなぁ」
 剣技でヒポグリフを葬った侍・霧里まがや(ja1903)がついそんなつぶやきを漏らす。皆すでに何体の雑魚を含めれば何十体のモンスターを倒したかもわからない程だ。しかし、次々湧いてくるモンスターは打ち止めになる気配すらない。まがやの思いは、城門を死守する者たち共通した思いだった。
 精神的な疲れが溜まり、勢いが止まりかけたその時、満を持して魔王軍は最強のモンスタードラゴンを投入してきた。
 大空を自由に舞い、口から炎や雷、吹雪を放ち、鋭い爪と牙は優れた魔剣以上の切れ味を持ち、強靭な鱗はどんな鎧にも劣らぬ防御力を持つ。疲労の極みにある者たちにとって、ドラゴン軍団の襲来は荷が勝ちすぎるものであった。
 空から来るドラゴンに備える為いったんジャグルスの張る結界まで下がる城門守備隊。その上から炎が吹雪が雷が雨霰と降り注ぎ結界が軋む。
「やらせるものかよ」
 必死に魔力を振り絞り持ちこたえるジャグルスだが限界は近い。
「全て私の前に平伏し靴を舐めなさい、そうすれば命だけは許してあげますわよ、オ〜ッホッホッホ」
 そんな高笑いとともにあらわれたのは、巨大なゴーレムの肩に乗った人形使いの出間獲・乙蝶(ja1374)だった。ゴーレムの拳で空を飛ぶドラゴンをたたき落とした。
 ゴーレムの巨体にドラゴンの注意が引かれている間に、体勢を立て直す。

 疲れの見えた城門守備隊の面々を勇気づける歌を歌うは、吟遊詩人・武曲罠兎(ja1374)。美しいハープの音色とともに力強く歌われるその歌声が、人々の生き抜こうという意志を奮い立たせる。
「その怪我人はこちらに」
 藪医者と称する草薙・蘭子(ja0860)が傷ついた少年兵士の治療に取り掛かる。その向こうでは、僧侶のケベック・ラーゲルレーヴ(ja1673)が治癒魔法を施しているが、チョコレートで買収され重傷者より先に軽いケガの人間を治療している。
「ま、死ぬ前に直すから少し待て。治療するまで死なないから安心しろ」
 医者の手を煩わせるまでもない軽傷者手当を施しているのは、旅芸人の司葵(ja0954)。旅暮らしの芸人一座を率いる彼女にとって軽いけがの治療等は手慣れたものだ。手当を受けて笑顔で元気づけられ者は立ち上がり再び戦線に加わっていく。
「よっと、こいつも頼むぜ」
 迫るゴブリンを魔銃で背中越しに打ち抜きながら、重傷者に肩を貸して連れて来たのはガンナーのクライズ・ルーレル(ja0954)だ。クライズは救護の手伝いをしながら、野戦病院状態の城門前陣地を守ってる。この場に守りたい相手がいるからだ。
「(この)世界の歯車の1つになる事自体気に入りませんが、いたし方ありません。現状をじっくり楽しむといたしましょう」
 救援物資の割り振りを管理しているのは、忙しい酒場を仕切っていたバイトのアリサだ。若い娘でありながら、人を動かすこと、物資の管理をすることに妙に手慣れていた。

「丁度この私も今に飽き飽きしていた所なのだよ。存分に世界の変わり目を、味わうとしようではないか。なあ諸君」
 そううそぶくのは狂科学者のJ・J(ja0954)だ。落ち着いて怪我人の治療もできんなとぼやきつつ独自の錬金科学で生み出した「時限爆破式硫酸・火炎弾」を手近にいた力士の夏岳に投げさせる。空中で炸裂した円筒から飛びだした酸と炎が空飛ぶドラゴン達を地に落とした。
「これで治療に専念できるな」
 そう言ってJ・Jも怪我人の治療に専念する。
 地面に降りてくれば、巨大なドラゴンといえども、歴戦のつわものたちの敵ではない。
 力山・アンネの剣が、俊介・誉の槍が、ドラゴンの急所を貫きとどめを刺していく。尽きることないように見えていた魔王軍のモンスターの攻勢も目に見えてその勢いが衰えて来た。

●東の塔〜疾風の巨人〜

 東の塔にも5人の勇士が集っていた。先陣を切るのは二人の騎士、橘・華奈(ja1818)とシュリーマティー・ヤクシャ(ja1100)。
「紅薔薇の騎士の名の下に貴方を倒し、勇者達が進む道を開きます!」
 銀の矢を放つ華奈が、風の精霊カマイタチを射抜いていく。
 続くは聖銃士・黒岩薫(ja1019)と魔法使いのヘイゼル(ja1735)とエミネ・プルーフ(ja1573)。
 普段はドラゴンを使役している騎乗を得意とするシュリーマティーだが、狭い塔の中では巨大なドラゴンを呼ぶことはできずエミネの魔力で呼び出された土人形の馬を駆って塔を駆け上がっていく。
 現れた雷獣をシュリーマティーの氷の魔力弾と薫の聖銃が撃ち抜きその身を粉々に粉砕する。
 エミネの操る土人形が壁役を果たすことで傷つくことなく一行は最上階まで駆け上がった。
 最上階は閉ざされた部屋にも関わらず風が吹き荒れておりその中央に黒く濁った緑のクリスタルがあった。
「あれが風の魔力の源か?」
 薫が疑問の声をあげたと同時に雷を迸らせながらクリスタルから3mを超す人型の影が姿を見せる。その巨人が手をかざすと強烈な突風が吹き荒れる。スクラムを組んだ土人形によって守られたヘイゼルとその腕に抱きかかえられたエミネ以外の3人は風に飛ばされ壁に叩きつけられる。
 いち早く体制を整えたヘイゼルが、エミネに向かって告げる。
「最大の魔法を使う、詠唱の間守りは任せた」
 ヘイゼルの得意とするのは水と氷の魔法。水の精霊は風の精霊に相性が悪い。相性の悪い風の塔にあえて挑んだヘイゼルにはそれだけの自信があるのだろう。だが、その絶対の自信を持つヘイゼルの水魔法といえど、半端な魔法を打ち込んでも風の魔力の塊には通用しない。それゆえに最大最強の魔力を込めて最強の魔法を放つ必要があった。
「お任せください、ヘイゼル様。この命はヘイゼル様の為にあります」
 そう言って頷くエミネの頬はかすかに朱に染まっていた。エミネは土人形に指示を与えヘイゼルを守らせる。
 その間に立ちあがったシュリーマーティと華奈、二人の騎士が疾風の巨人に向けて攻撃を開始する。シュリーマーティの光の魔法弾は風の結界をものともせず巨人の身体を捉えるが魔力のフィールドに包まれた巨人には決定打足り得ない。しかし華奈の矢は風の結界に流され、巨人の身体に届く事がなかった。
「風は敵ではない、たとえ相手が風の主だとしても」
 薔薇の花束を風の巨人に投げつける。強力な旋風が一瞬で花を散らし花弁を風に乗せて舞わせる。その薔薇の花弁が華奈の目に風の流れを見せる。
「見えた!」
 巨人から離れた場所を目がけ華奈が矢を射る。矢は旋風の渦に乗って加速しつつ巨人の身体に突き立つ。続けざまに放たれた矢は次々と巨人の身体に突き立っていく。有効な攻撃を与えた華奈だったが、その矢は尽きた。
「私が切り開きます、後の事はお願いします」
 弓を捨てた華奈は旋風の壁に抗い巨人へと迫る。旋風が生み出すカマイタチが、華奈の身体を次々に切り裂いていく。しかし、どれほど傷ついても華奈はひるまず進む。シュリーマティーも懸命に華奈を援護する。
 華奈が体中から出血しながら巨人の前までたどり着くと、懐からとりだしたローズダーツを投げつけた。華奈の渾身のローズダーツは巨人の胸にある魔力中枢に突き立っていた。限界を超え命を燃やしつくした華奈は、満足げな笑みを浮かべながらその場に崩れ落ちる。
「華奈の思い、無駄にはしない」
 聖銃士薫が華奈の思いをくみ取り、聖なる魔力を秘めた聖銃[GunOfLightning]の引き金を引き絞り、渾身の閃光をローズダーツの突き刺さった魔力の中枢へと立て続けに撃ち込んだ。
 苦しみもだえる巨人が荒れ狂う烈風を放ち薫をシュリーマティーを吹き飛ばす。今までにない強烈な風がエミネの土人形も砕き、ヘイゼルをも吹き飛ばそうとしていた。その烈風を身体を張って受け止めたエミネ。必死にヘイゼルの身を守るが烈風の生み出す風の刃がエミネの身体を切り裂いていく。
「詠唱は終わった、よくやったぞエミネ」
 その言葉に力が抜けたエミネを片手に抱きながら、最大の魔力を込め極大に強化された水の龍が風を切り裂き突き進んでいく。気分屋でムラのあるヘイゼルだったが、この時の一撃は過去一度も出したことない程強い魔力が込められていた。それはヘイゼルだけの力が生み出したものではない、エミネの華奈のシュリーマティーの薫の思いも載せた水の龍だった。
 水龍は烈風を引き裂き、巨人の身体を包む旋風に乗り勢いを増すとその牙を巨人の魔力中枢に突きたてた。

「風の魔力も途絶え、3階と4階も結ばれました」
 蓮華の遠見の結果は、前線にまで伝えられる。

●解放された妖精

「上の階層に上がる道が開いたってよ」
 飛脚の斑尾が伝令を伝えに駆け込んできた。その伝令を受け、城郭内に配置されたアンデッド軍団と戦っていた突入部隊の意気が上がる。今まで、結界が邪魔をしており上の階に上ることができなかったのだ。
 一階のゾンビを蹴散らし、二階のスケルトンとグールの混成軍を一蹴し、三階のマミーも倒して四階まで一気に駆け上がる。四階のフロアには多数のヴァンパイアが待ち構えている。
「助けて〜、早く助けに来てよ〜」
 四階に上がった一行に、甲高い声が響く。囚われた妖精の声だった。
 助けを求める声に反応する勇者真白と狙撃手アリンナ・ブラントン(ja1874)が反応する。
「助けを求めてる。助けなくちゃ」
 真白が声をあげ、上に上る階段から逸れる。
「おいおい、魔王は目の前だぜ、今は先を急ぐべきじゃないか?」
 盗賊の房陰・嘉和(ja1023)が問いかける。
「先に行っていて、助けを求める声を無視できないもの」
 真白の言葉に頷いた幾人かがその後を追う。
「じゃあ、先に行って魔王を倒してるから、ゆっくり来ればいいよ」
 勇者様ロシェ(ja0526)がそう答え、上に進む階段に向けてヴァンパイアを倒しに掛かる。勇者ユキノシタ・マサカズ(ja0136)らもそちらに向かう。

「僕が囮になってひきつけるから、その間に助けてあげてよ」
 冒険者のツナ(ja1420)が囮役を引き受け、ヴァンパイア達を連れて走っていく。
「さ、今のうちに行こうぜ」
 盗賊の夜野星冶(ja1305)が先を促し、斥候の黒井・華麗(ja1430)、忍者・片羽一真(ja1282)と手分けして仕掛けられたつり天井や槍衾等の罠を無力化していく。
 厳重な鍵の掛けられた扉を開いて中に飛び込むとそこに居たのは1人の少女だった。
「いらっしゃいませ、お客様なんて珍しい。今、お茶をお出ししますね」
 少女の名は烏鳩、魔王軍に囚われて妖精の世話をさせられていたのだという。今、魔王軍の討伐の為に、王国の総力を挙げて攻撃をしている最中だと伝えると、「それで騒がしかったんですね」とずれた答えを返してきた、この少女かなりの大物か、さもなくば頭のネジが飛んでるのかも知れない。
「助けの声なら、その奥の妖精さんですね」
 そう言って奥の扉を指差す烏鳩。それを聞いてまっすぐに手を伸ばす真白だったが扉から放たれた電撃に跳ね飛ばされた。
「あ、決まった時間以外に無理に開けようとすると電撃が来ると言おうと思った所だったんですが‥‥」
 烏鳩の言葉だったが、一足遅かったようだ。
「じゃあ、ここは僕に任せてよ」
 魔法と盗みの技術を使いこなす怪盗サリスが雷の魔法で電撃を相殺しながら、伝家の宝刀ハリガネで扉の鍵を開けてのける。
「ふふっボクは怪盗サリス、妖精さん貴方を‥‥盗みにきましたっ」
 そう言って中に入ったサリスを待ち受けていたのは、妖精の笑顔ではなく警備のデュラハンが振るう剣の一閃だった。紙一重で剣をかわして部屋に転がり込んだサリスの目前には吊るされた鳥かごに閉じ込められたシフールと剣・槍・斧をそれぞれに持った三体のデュラハンだった。
 サリスの後を追って入ってきた真白、一真、アリンナらも武器を構えるが、武器を使った格闘においては最強のアンデッドともいわれるデュラハンの息のあった攻撃に翻弄される。
 獣使い・東郷一良(ja0703)が呼びだしたグリフォンも参戦するが、不死の魔力を持つデュラハンの前に、決定打を与えられずにいた。
「助太刀するぜ!」
「助けに来ました」
 そこに、天馬ペガサスに乗った勇者祐と妖精騎士・野々宮彩輝(ja1511)が窓から飛び込んできた。結界が邪魔して中に入れなかったのがようやく入り込む事ができたのだ。
 彩輝の放った聖別された銀十字の矢がデュラハンの肩口に刺さり剣を逸らす。聖なる槍と聖剣を振るう祐が剣のデュラハンを相手取り、長い間合いの蛇腹剣を使う真白が槍のデュラハンを翻弄する。彩輝のボーガンが、アリアンナの魔銃が斧のデュラハンをひるませそのすきに一良の呼んだグリフォンが伸しかかる。
 勇者たちがデュラハンと戦っているうちにと星治、華麗、サリスの三人はシフールの捕えられた鳥籠を奪取した。大魔導師ディアナ・ターリオン(ja1408)が鳥かごに掛けられた魔力の封印を解きに掛かる。魔王と大魔導師の魔力が激しくぶつかり合い閃光とともにその封が解かれた。
 その魔力の光がデュラハンを怯ませた隙を、勇者たちは見逃さなかった。聖なる剣が聖なる槍がデュラハンのゆがんだ生を断ち切り安らかな死を再び与える。
「ありがと〜♪ 助けに来てくれると思ってたよ」
 満面の笑みを浮かべて感謝の言葉を述べるシフールに、ディアナは尋ねた。
「何故、捕えられていたんですか‥‥?」
 ディアナの論理的な問い掛けと、彩輝の優しい言葉を受けシフールは語った。託されていた言葉を。
「この世界は、みんなに大切な事を伝える為に作られた世界だったの。夢の中でゆっくり休んでもらいながら、大切な事を伝える為に」
 夢の中の造られた世界という言葉は、話を聞いている一同の理解を超えていたが、このシフールは嘘を言ってはいないと直感していた。
「でも、魔王が来てめちゃくちゃになっちゃったの。メッセージを伝える役目のあたしも捕まっちゃったし。世界に込められていた皆を元気にするエネルギーも横取りされちゃったの」
「魔王は何を狙ってるのですか‥‥?」
 ディアナの問いは皆が聞きたいものだった。
「魔王は、何かを探してたの。凄く悪い力を持ったものみたいだけど、何の事か全然分からないの。でも大変なの、まかこんとんのとびらが開きそうなの、まかこんとんの扉が開いたらこの前みたいな大変なことが起きちゃうんだよ」
 ディアナが次の質問をしようとしたところを遮り真白が問う。
「私たちはどうすればいい、どうしてほしいか教えて」
「助けた以上、最後まで助けないと後味が悪いもんな」
 祐も頷いてシフールに力強い言葉をかける。
「魔王をやっつけて。魔王が居なくなったら、この世界は平和になってえんでぃんぐを迎えるの、そしたらここの事をみんな忘れるけど、大切なことだけは心の奥に残るから。その大切な気持ちを大切な言葉を忘れないで」
 シフールはそこまで言うと疲れたのか彩輝の腕の中で眠り始めた。
「じゃあ、妖精さんとの約束の為に私たちは行くね」
「魔王を倒してくるから、妖精のこと頼んだぜ」
 真白と祐はさらに上に、魔王の元に向かうことを決断した。華麗、一真もともに上に向かう。彩輝とアリアンナは一良の呼びだしたグリフォンで、シフールと烏鳩を連れて一足先に脱出する。シフールの衰弱はかなりのものだった。ディアナと星治は囮を務めるツナと合流して脱出することにした。

●北の塔〜水の大蛇〜

 城門から一番遠い北の塔には7人の勇士が集まっていた。前衛を務めるは武道家の胡蝶・亜都真(ja1679)と侍・霞沢絵梨(ja1309)、侍・鳴井霞槌(ja1576)。途中のしかけを見破り援護を行うくのいち松戸大雅(ja1828)、錬金術士アニエスエース(ja1071)に、魔法使い・霧原双樹(ja1277)と大きな稲妻の旗印を背負った少年魔法使い遠藤遥香(ja0656)。
 全体にひんやりとして湿度の高い水の塔の中に踏み込んだ一行を迎えたのは、ケルピーと呼ばれる下半身が魚になった馬のよう水の精霊だった。足元を水で埋め尽くしたケルピー達は、潜れる深さなどない筈の水中にもぐり水中から飛び出して襲いかかってくる。
「なんや、むちゃくちゃな攻撃してくるな」
 亜都真、絵梨、霞槌が懸命に食い止めるが、水妖ケルピーが水に潜ると姿も気配も溶け込んで飛び出してくるまで対応が難しい。熟練の侍や武闘家にも荷の重い戦いだった。
「何とかなりませんか?」
 絵梨が振り返り、アニエスエースに尋ねるが、首を振ってこたえる。
「ボクのは、用意に時間がかかるし1回しか使えないから、ここじゃ無理だよ〜」
 その答えを聞いた遥香が元気に答えた。
「僕が何とかするから、みんな水から離れて」
 そういった遥香は両手に雷の魔力を貯めていく、水に電撃を流すつもりだ。それを察知した大雅はアニエスを抱えて壁にぶら下がる。双樹に見つめられた霞槌が仕方がないと双樹を抱えると突き立てた槍の上に身体を保持する。絵梨の手を取った亜都真が頷いたのを見た遥香が雷撃を水に解き放つ。それと入れ替わりに、絵梨を抱きあげた亜都真が水底を蹴って空中に身を躍らせた。亜都真が壁を蹴って三角蹴りの要領で空中に身を保つ内に電撃は水の中を存分に荒れ狂いすべてのケルピーを倒した。
 更に、現れた虎の顔を持つシャチのごとき水精アドゥールが姿を現す。
「我は唯の鬼―雷を宿せし真白き鬼よ!」
 霞槌が進み出て、その魔槍を振るいアドゥールを攻め立てる。アドゥールの吐き出す吹雪を槍を回転させて生み出した旋風で撥ね返すと、アドゥールの口内に槍を突き入れる。
「ここは任せて先に行け、後から必ず合流する」
 そう言って霞槌は雷の魔力を槍からアドゥールに送り込むが、水精の生命力は強く一筋縄ではいかない。霞槌とアドゥールの戦いが続く中6人は最上階にたどり着いた。
「うわっ、寒っ!」
 大雅が寒さに驚きの声を上げる。最上階は壁一面が氷に覆われた銀世界だった。中央には黒く濁った青いクリスタルが浮かんでいる。
「あれが、魔力の源みたいだね。艶樹も似たようなのを見たって」
 双樹が双子ならではの共感力で艶樹から聞いた情報を伝える。それと同時に3首を持ったの水の大蛇がクリスタルから飛び出してくる。
「ボクは切り札を仕掛けるから時間稼いでね」
 そう言って、アニエスは何やらしかけを組み立て始めた。
「私たちは‥‥私たちに出来る精一杯の務めを」
「絵梨さん、皆、油断するなよ!」
 絵梨と亜都真が決意を固め前にでる。絵梨の矢が水の大蛇を捉えるが、聞いてるのかどうかは定かではない。亜都真の拳が蹴りが蛇を打つが決定打には程遠い。大雅も必死に大蛇の周辺を飛び回り攻撃を仕掛けている。遥香と双樹が雷とカマイタチで攻撃し、手ごたえは感じるものの強大な水の大蛇に焼け石に水の効果しかないようだ。
 しかし5人の奮闘が十分な時間を稼ぎ、アニエスの仕込んでいた巨大な風車が組み上がり出力全開で稼働し始めた。
「みんな伏せて〜、危ないよ〜」
 風車からは周囲から集めた風の魔力で造られた真空刃を無数に放たれている。相性の良い風の魔力で次々と削られ、強靭だった水の大蛇の体力もみるみるに低下していくのが分かる。
 だが、攻撃を受けた水の大蛇は強烈な水流を吐き出し、風車を粉砕した。
「あちゃ〜、もう少しだったのに」
 その間何やら耳打ちしていた双樹に、遥香が頷き二人は立ち上がると、手を合わせて踊るように魔力を込めると二人の魔力を一点に集中した強力な電撃を放った。
 その集中放電は、アニエスの真空刃で弱った水の大蛇の腹を貫き魔力中枢を撃ち抜いた。
 水の大蛇は掻き消え、済んだ青い光がクリスタルに戻った。

「最後の魔力も解かれ、最上階の道が開きました」
 蓮華の言葉に王宮にいた皆は喜びの表情を浮かべる。もう王宮から伝令する事もないだろう。魔王を倒すと信じ凱旋を迎える用意をするだけだ。


●魔王が求めし者

「皆の者、我に続けー!」
 先頭に立って5階へ、魔王の間へ駆け込んだのは、褌王子・火群焔羅(ja0763)だ。その傍らには、脱衣姫と呼ばれる神楽坂・あやめ(ja1080)の姿があった。
「‥‥ついに決戦だ、行くぜっ!!」
 勇者マサカズが魔王に叫ぶ。
 魔王は、玉座に悠然と座し、ワイングラスに満たされた鮮やかな赤い液体で喉を潤していた。
「遠路はるばるようこそ、歓迎の宴は気に入って頂けたかな」
 その言葉に答えたのは、賢者・黒薔薇霧華(ja1035)だ。
「世界を手に入れようとするのはいいのですが、殺さないと人間を支配できない程度の器では、従う気になりません」
 霧華の言葉を笑いながら答える。
「支配? 世界など支配することに何の意味がある? 永き閑を紛らす座興にしかならない定命の者など」
 ガルバの狙いが、世界の支配にないと知らされる。その真意は容易に窺い知ることはできなかった。
「世界が欲しい訳でもないし、だからと言って本気でもない。‥‥所で、探し物は見つけた?」
 次に問うたのは勇者様ロシェだ。
「どうかな、答えが知りたくば、実力で問えばいい」
 魔王は、挑発するように答える。それに応じるのはふんど士・天風・ラウ・怒(ja0744)。
「穴の空いたマント着た貧乏人が粋がってみてもダッセ〜な」
 そういう天風の恰好は目に見えない褌とマントとベルトだけの妙な姿をした禿げ男だった。相棒のふん導士テリー・河豚(ja1898)も囃したてるが、魔王は全く意に介した様子はない。
 ただゆったりと掌を天に向け人差し指で招くのみ。

「魔王め、みんなの怒りを受けてみろ」
 マサカズが怒りの一刀を繰り出す。それに合わせて、焔羅が、あやめが稔雅が、甲斐・仁志が、元勇者の鳳凰院無明(ja0770)が王騎士の如月・達哉(ja1314)が各々の攻撃を繰り出す。
 その攻撃をかざした掌に生み出した障壁一つで受け止め、美貌に微かな笑みを浮かべて告げる。
「いい憤怒の感情だ、傲慢に、怨嗟の情も含まれているな。これで不足を補うことができた、礼を言おう」
 手首の返し一つで、受け止めた攻撃のエネルギーを各々に跳ね返した。
「せっかくここまで来たのだ、諸君らも見て行くがいい。諸君らの心から生み出した大いなる悪を」
 ガルバは手の中に残ったエネルギーを握りこみ結晶化すると小さなどす黒い結晶が生み出される。左手で床を指さすと妖しく光る魔法陣が浮かび上がる。右手に摘まんだ、小さな結晶を魔法陣の中央に投げ入れると魔法陣の中から茶褐色をした蔦状の物体が伸びだしてきた。
 伸びあがった蔦はねじくれた角を持った獣の頭部を、力強い両の腕を、コウモリのような翼を形作り、獣毛に覆われた2本の足と先のとがった尻尾を持った数十mの巨体となった。
 巨大な魔は地獄の底から響くような咆哮をあげると目を赤く爛々と輝かせると暴れ始める。
「これが諸君らの思い描く悪の姿か」
 そう感想を漏らした、魔王ガルバは、唐突に魔に向かって飛び上がると、美しく整った手を無造作に突き出した、その腕はやすやすと巨大な魔の赤く輝く左目を抉る。何がしたいのか理解しがたい光景にあっけにとられる一同。巨大な魔は向けられた攻撃に反応して剣より鋭い爪をはやし人の胴程もある指でガルバにつかみかかろうとするが、その爪先にガルバの掌が触れた所で止まっている。
「所詮は、紛い物か。だが、ここではこれ以上のものは造れぬな。やはり奇祭を利用するか」
 魔王を討伐に集まった勇者、戦士たちを無視して独り言をつぶやいた。そこに天井裏から声が降ってくる。
「これは魔王殿。どちらに行かれるのかな?」
 怪盗ファントムを名乗る盗賊ギュンター・ニコラシカ2世(ja1810)が、天井裏から姿を見せる。
「流石、魔王殿噂にたがわぬ美丈夫ぶり、できれば一夜を共にと言いたい所ですが、お取り込み中のようですね」
 ギュンターが魔王に物怖じすることなく語りかけるが、魔王の眼中には入っていないようだ。
「もはやこの夢に用はない。今度は現実で見えよう。タヒチでお待ちしている」
 それだけ言うと、魔王ガルバはマントで身を包みその姿を完全に消した。後には、魔王を討伐に来た一行と巨大な魔、そして理解しがたかったガルバの言葉だけを残して。
「待て、魔王!」
 マサカズが声をかけるがガルバの姿はない。
「これは、大魔王というものじゃろうか?」
 元勇者の無明がつぶやく。巨大な魔、大魔王はそれに気付いたのか、無明に巨大な腕を振り下ろす。
「ボサっとするな死んじまうぞ」
 稔雅が乱暴に無明を蹴り飛ばし拳の軌道から逃す。城は激しく鳴動し、あちこちで崩壊が起き始めている。
 圧倒的に強大な大魔王の姿に気押されるばかりの一同に、焔羅が吠える。
「命ある限り戦う‥‥それが勇者ってもんだろ!」
 そう言って褌王子の秘蔵の褌「小夜啼鳥」を飛ばして攻撃する。褌のパーツが分離して標的に光弾を飛ばすという褌だが、パーツが飛び出した事で褌王子の股間は丸出しになっている。流石に恋人が丸出しでいるのが恥ずかしいのか、脱衣姫が王子の前に立つことで大事なところを隠している。
 反撃の口火を切った褌王子だが、自慢の「小夜啼鳥」の攻撃は大魔王の表面で弾かれ全く効き目がない。だが、真っ先に切り込んだ褌王子の攻撃が、あっけにとられていた皆に気を取り直させた。
 勇者様ロシェと偽勇者シンジが魔弓シリウスと光の魔剣の連携攻撃で、大魔王の向う脛を激しく打ち付ける。
「みんなしっかり、最後のひと踏ん張りよ」
 僧侶の都府楼・南(ja1812)が守備の魔法を施す。王騎士達哉が光の銃を撃ち放つ。
 そこへ妖精を解放した勇者真白、勇者祐達も合流する。
「これは何?」
 魔王のかわりに存在する大魔王の巨体にあっけにとられる真白に、武道家・灰簾(ja1195)が叫ぶ。
「話は後だ、今はこのデカ物を倒すんだ。生きて帰る為にな」
 各々が逃げ回りながら精いっぱいの反撃をするが、圧倒的な巨体の前に効き目があるのかないのか定かではない。逆に相手の攻撃を一発でも受ければ即座にあの世行きだろう。
「こうなったら、しかたありません。奥の手を使います」
 賢者・霧華が奥の手である龍化魔法で全長でなら、大魔王の身長にに引けを取らない龍に変身する。その巨体で勢いをつけて伸しかかり、大魔王を押し倒す。口から炎を吐いて攻撃するが、大魔王の障壁の前に致命傷を与えられない。
「ちまちま、やってもらちが明かねえ、一斉にでかい攻撃行くぞ! あやめ姫!」
 褌王子が音頭をとる。
「もちろんよ、あなた」
 褌王子の剣と脱衣姫の魔銃が一体となり愛のパワーを破壊力に変える巨大な魔力砲へと姿を変える。
「「いっけーっ!」」
 二人の愛のパワーが一筋の光条となって大魔王の右目を貫いた。両の目をつぶされた大魔王はもだえ苦しむ。
「あたしも負けてられない。あたしの全力、受けてみなさい!」
 魔弾銃士の宇佐美・観月(ja1720)が、全魔力を一斉に放つ必殺技バスターインフィニティを放つ。甲斐の拳が大魔王の脇腹に突き刺さる。灰簾の蹴りが大魔王の肉を抉る。達也の銃が腕を貫く。天風とテリーの連携攻撃が足をくじく。
 ロシェの弓が喉元に突き刺さり、シンジの剣が、マサカズの拳が大魔王の胸に打ち込まれる。真白の蛇腹剣が防壁を失った大魔王の胸に穴を開け、祐の聖なる槍が魔王の心臓に突き刺さりその鼓動を止めた。
 魔力を使い果たした霧華が人の姿に戻り、押さえつけるものが居なくなったが、大魔王は再び立ち上がることなく、その巨体は少しずつ光となて宙に溶けて行った。
 傷つき力を使い果たした仲間達に手を貸しながら、崩れ始めた魔王の城を抜け出す一行。それを迎え入れるのは、バックアップをしていた面々だ。
 怪我人は、J・J、蘭子、ケベックらの手で治療を施されていく。僧侶たちも皆回復の術を使い果たしているが、魔物の姿はなくこれ以上怪我をする心配はないだろう。

 凱旋した数多の勇士たちを国民は総出で迎え、怪我人には手厚い看護が施され、怪我の浅いもの達には勝利の宴へと招待された。魔の影が去ったバルティカ王国に平和が取り戻された。

「すべては皆さんのおかげです、本当にありがとうございました」
 ヒヅル姫の優しい感謝の言葉がかけられる。
「みんな本当にありがとうね、感謝してるよ」
 ヒヅキ姫の明るい声で感謝が告げられる。

「みんなごめんね、せっかくの夢がこんなになっちゃって。でももうお姉さま達も限界みたい。現実でも皆が勝利するように祈ってるよ。まかこんとんに気をつけてね」
 助けられたシフールの言葉を聞く頃には、戦いぬいた勇士達は皆眠りについており、次に目覚めるのは現実での事とだった。

●夢の終わり

 その日の長い夢から真っ先に目を覚ましたのはバスティラであった。それは悪夢からの目覚めだった。まるで触手か蔦に身体を締めあげられたような感触があり、目覚めてなお強い疲労感が残っていた。
 魔王軍との戦いに傷つき倒れた者たちも目を覚ました。僅かに寝たりないような軽い疲労感を感じていたが、途中まで良い夢を見ていたような感覚があった。だが、どんな夢かは霞が掛かったように思い出せなかった。

 そして、最後の戦いに勝ち残った者たちも目を覚ました。どんな夢だったかは記憶にはない。だが、胸中には何かをやり遂げた達成感と多くの人から歓迎された喜びが満ちていた。

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■プレイング(MVP)

■ja0126 ルシフェラーゼ/結城夏岳
【アC】
あたしは力士だから、それなりの所がいいよね。
本当は強化魔法をかけて貰って、一発ぶちかまして魔王城の門扉をぶち破る!
なんて事ができれば格好良いんだけど、いくらなんでもそれは難しいかな?(苦笑
それならば大きな丸太(もしくはゴーレムなど)を抱え揚げてそのまま門扉に叩きつけるようにして
何度もぶちかましを仕掛けて門をこじ開けるね?

門が開いたら勇者さん達には先に行って貰うよ。
あたしはその場に留まって、敵の掃討を担当するね?
後ろからの追撃を絶たない事には、皆安心して前に進めないもんね♪
門の前に陣取って一緒に残った仲間と連携しつつ
敵を一歩も先に進ませないよ。

戦闘の方法はいつもと同じ、主に素手で殴り飛ばすとか蹴り飛ばすとか。
囲まれそうになったらジャイアントスイングなりラリアートなりで弾き飛ばし、
とにかく囲まれないように戦いたいな。
残念だけど複雑な関節技は使えないね。
(首を捻って倒す等はやります)

■ja0650 白面のオリヴィエ/織部・真白
プレイング
ヒヅル姫達との約束
魔王を倒して無事に帰るって、ね

◆アB
魔王城に乗り込んだら、まずは祐おにーちゃん達と一緒に妖精さんを助けに行くよ
立ち塞がる魔物は星獣達を召喚して一点突破を図り

気になる事は魔王が求めているモノ
妖精さんを助けたらソレについて聞いてみるよ
但し此処は魔王の城
筒抜けかもだから魔王の探しモノについてだけ。
場所については今は言わないでいいからね

◆アA
妖精さんを逃がした後は魔王の元へ!
一人一人は小さな力かもだけど、皆と力を合わせて
魔王の野望を打ち砕いてみせるよ
好きなようになんかさせないから!

魔王が何かしようとしているなら全力で阻止
妖精さんから聞いて全部知ってるフリをして魔王の気を引きつつ
SOSを鞭状にして「天狐」「飯綱」で攻撃
魔王そのものより、企みに必要な物品等の破壊による妨害を優先

最後まで諦めないよ、勇者だもん
援護してくれる仲間を信じて、SOSに魔力を込めて

…私が此処に居る意味を果たすよ

■ja0698 クロームカウント/黒田嶺司
イ−C
火の力を操る主か……。
面白い。この黒騎士の剣で闇に染めるか。
それとも火の主の炎が、我が鎧を紅蓮に染めるか……。

面白い勝負となりそうだ。

他の仲間とともに南の塔へ斬り込み、主を斬り伏せてやろう。
道中の敵も火が得意な相手が多そうだ。
自身の剣に、水の魔法で冷気を纏わせ応戦。

敵の攻撃は盾で防ぎつつ、塔の柱等の地形を活かし攻撃の回避を図る。
隙あらば、冷気を纏った剣で連撃を叩き込む。

その程度の炎では、我が鎧を紅に染める事は出来んぞ!

敵陣深く進めば、火龍や火の精などの強敵も居よう。
そのような相手が居れば、自身の鎧に魔法で冷気を纏わせ、火の威力を抑えたいな。

あと、階段などを登るときに、上から奇襲されたり上下から挟撃されるやもしれん。
階段を登る前に、付近の敵を片付けたい。

主が現れたら、他の仲間と集中攻撃だ。
改めて剣と鎧に冷気を纏わせ応戦。

炎は柱等の遮蔽物を活かし回避。

貴様の炎、ここでかき消してくれん!

■ja0763 焔龍/火群焔羅
★アA:褌王子、魔王との直接対決に推参!秘宝褌の威力、思い知れ!
「皆の者、我に続けー!」
王子らしく白馬で登場だぜ!
士気を鼓舞しつつ城門から正面突破/中央突破/強行突破だ!
邪魔するヤツは指先一つでダウンだぜ!(マジか)
アイリス姫…危険な戦場だが、俺が必ず守る!共に剣を取って戦おう…!

寄せてくる敵は伝説の光の剣(レーザーブレード(笑)でなぎ倒しつつ、真の勇者達を先に進ませるべく道を切り開くぜ!
出来れば魔王と直接対決!我が褌王国に伝わる秘宝褌「小夜啼鳥」のパワー全開で魔王に一矢報いる!
可能ならその身粉々にしてやるぜ!
ちょっとイケメンだからっていい気になるなよ!

もし到達かなわないなら
「ここは俺に任せて先に行け!我が褌拳味わうがいい!」
とかなんとか言って仲間を魔王との最終決戦に送り出し、後から合流するぜ!
絶対に生きて帰ってやる!
「命ある限り戦う…それが勇者ってもんだろ!」(どっかで聞いたような)

■ja1035 Dヴァルキリー/黒薔薇霧華
ア:A

動機:勇者の伝記を残すため。

目的:魔王の討伐と、魔王の目的の確認。

思考:魔王の伝承から考え、二段変身、闇の守護者達、魔界への入口の登場などがありえると推測。

行動:勇者達と共に魔王の前に赴き、魔法で勇者達を援護。
魔王には、「世界を手に入れようとするのはいいのですが、殺さないと人間を支配できない程度の器では、従う気になりません」と宣言。

二段変身など魔王が奥の手を使おうとして、自分の魔力が尽きかけてきた場合は、究極魔法ド○ゴラム(闇王搭乗相当)で援護を行う。

魔王が魔界への扉を開こうとした場合は、それを祈りで止める。逆に魔王の目的が、魔王と対立する存在であるはずの神の居場所(天界)へ攻め込もうとしている場合は、天界との連絡のつけ方について、ガルバの方法を真似て神とコンタクトを取れるか、天界にいけるようにする。

■ja1195 タンザナイト/灰簾
選択肢:アA
心情:最強を目指す以上、魔王は避けて通れないでしょ★ま、俺は勇者じゃ無いし、それに孤児院の皆にお土産話持って帰るためにも死ねないから命懸けとまではいかないけどねー。だから狙うは魔王の側近とか中枢部に出るであろう強い魔物とか、そんな感じ?
行動:どうせ戦うしか能が無いんだし
・指示には従う
・危ないと思ったら無理せず引く
・間違っても強敵相手に一対一の勝負を挑まない
の方針で。特に3番目は絶対。世界は広いんだし魔王の一人や二人と戦えなくても問題無いって。どうせ向こうが素直に応じるはず無いんだし。

ここは俺に任せて先に行って!とかなるのは…かっこいいけど生きて帰れそうに無いからなー。でも、もしそんなシチュエーションになったら…多分、ううん、絶対命懸けで戦う。だって俺のせいで勇者様が挟み撃ちにあって負けたらやだし、そんな裏切りみたいなマネして生き延びるくらいなら、戦って死ぬ方が100倍マシだもん。

■ja1277 ソージュ/霧原双樹
◆イA:四方の塔を攻略する・北の塔〜水の魔力の主へ挑む
私、こう見えても風の魔法使いなんです。相克の関係で、何かのお役には立つはず。
双子の艶樹とは不思議なテレパシー(笑)で繋がっていますから、連携が必要なところでは連携します。
(例えば同時攻撃が必要だとか、まずい皆逃げろ!とか、そういうシチュエーションがあった時など)。
一人一人の力だけではきっと、水の魔力の主には勝てないと思います。小さな攻撃では弾かれてしまいそうですから。
ここは一斉に同時攻撃で、一気に畳み掛けるのがよろしいかと思います。
持てる魔力の全てを使って、一気に風の精霊の力を叩き込み、水の力を弱らせましょう。
攻撃に使えそうな風の魔術は
・カマイタチを起こして切り刻む
・竜巻を呼ぶ
防御に使えそうな魔術は
・風の渦を巻いて攻撃を弾き飛ばす
…といった感じでしょうか。

…別行動を取った艶樹が何かおかしなことをしでかさなければいいんですが……心配です。

■ja1408 黒き雌鳥/ディアナ・ターリオン
●アB

シフールは世界を支える精霊ですから、魔王の手にあるのはよろしくないですわね。
それにシフールに確認したいことがあるので…シフールの救出メンバーに加わりますわね。

シフールを救出した時はシフールに…
1.バルティカ王国を含むこの世界の成り立ち(世界を支える精霊ということは、この世界の仕組みを知っている可能性が高そうですから)
2.魔王がシフールに要求していたことは何か、そしてその欲した情報の答えもわかればそれも含めて。
3.最後にシフールがこの世界を守るために私達に願うこと・頼みたいことなどがあれば

…を尋ね、この世界で何が進行しているのか、私達がこれからすべきことを確認いたしますわ。

そうそう、シフールに話を聞く時は、シフールの好物かシフールが喜ぶものを用意しておきますわね。魔王の所では怖い思いばかりしたでしょうから。
シフールが落ち着いて話ができるようにいたしますわ。

■ja1735 ヘイゼル/ヘイゼル
イ:B
良いかエミネよ。この戦いは私の、しいては私の家の名を上げる絶好の機会だ
誰も文句を言えないだけの力を示してやる必要がある
そして私は水の魔法の使い手だ
分かるな?だからこの塔だ

属性上不利?上等だ。それを跳ね返してこそ価値がある
呪文詠唱は高らかに。魔法の発動は高笑いと共に

塔内の敵は水の槍で攻撃。防御されたらそれを貫けるだけ魔力を練り上げるだけだ
言ったろう、力を示さねば意味が無い!
数が多いなら敵の足元を凍結させてさっさと突破する
雑兵相手ではやる気が出難いな、撃ち漏らしは他の連中に任せよう

●対魔力の主
ただの吹雪や水は風なり電気なりで防がれるのだろう
だが私の魔法がただの水だと思うな!
エミネに防御を任せ、長くなるだろうが呪文詠唱を

我が意に応えて形を為せ!水の龍よ!
嵐だろうが竜巻だろうが食い破ってやれ!
雷の類には敵頭上で龍を氷結させて対抗
後は自由落下で押し潰す

通じなかった時は…屈辱的だが味方に任せよう

■ja1810 ファントム・of・G/ギュンター・ニコラシカ2世
プレイング
◆ウ:潜入工作。怪盗ファントム参上…さて、魔王拝顔に参ろうか?
魔王の城か…素晴らしいお宝が眠ってそうだ。怪盗としては興味深い。
それがどんな物だろうが、魔王が欲しがっているなら相当な物だろう。

4重結界が解けたのを見計らって、城にはありがちな隠し通路や天井裏などを上手く利用して、儀式の間、魔王の寝所(!)などを探ってみよう。
怪盗のカンを甘く見てはいけない。
察するに魔王は何らかの儀式を行うつもりに違いない。
となると儀式に使う道具なども高く売れそうだ。
加えて玉座の宝石なども上手く手に入ればいい金になるだろう。
ついでに、諸所に火薬弾(油瓶?)を仕掛けておき、いざという時発火して城を燃やすよう工作。
死に損ない共は火に弱いとも聞くからな。

実は魔王自身にも興味ある…噂に聞くに相当の美丈夫だとか。
是否一度お目通り願いたいものだ。
…私では役不足かな?
それとも少年少女でなければ食指が動かぬかね?(←挑発+罠!)

■ja1906 カイゼリオン/草加ムサシ
イD 西の塔の攻略

遂に最後の戦いの時が来たのか。
魔王の相手は他の勇者に任せたけど、魔王から逃げたんじゃない。
仲間が魔王の元に辿り着く為には、四つの塔を攻略しなくちゃならない。
その為の戦いに挑む為だ。
レイさんや仲間と共に必ず攻略してみせる。

地の魔力の持ち主…大地の獣ベヒーモスなのかな。
相手が何者でも、僕は負けない。仲間の道を切り開く為に、必ず勝って見せる…行くぜ、竜殺しの勇者がお前の相手だ!!

武器はドラゴンスレイヤーで、戦い方は距離を詰めての捨て身の滅多切り。
「行くぜ。ドラゴンも倒した俺の必殺技…カイザーダイナミック!!」
全身全霊を込めた剣術の技で、地の魔力の主を仕留めてやる。

魔王が倒されて平和が戻ったら、故郷に帰って道具屋に戻ります。
レイさんも一緒に来るというので…(テレ)。
僕が使った武器と防具は、欲しい人がいたら売却しちゃおうかな。
お店の陳列棚に並べて、格安の値段で売りに出しておきます。

■次回予告



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