◆コラム:青空市場

「ちょっとそこのお兄さん。見ていかないかい?」
 私服で街道を歩いて学園に向かう途中、大地の門の手前の辺りで声をかけられ振り返ると曲線だけで構成されているかのような笑い顔の商人が手揉みしながら反応を待っていた。
「これなんだけどね。きっとお兄さんみたいな人には必要だと思ってね」
 そう言いながら商人は靴や皮袋、木製の水筒といった道具をずらずらと並べ始める。
「本当ならこれ全部セットで銀貨100枚は下らないところだけど‥‥折角お兄さんが足を止めてくれたんだ。銀貨90枚にさせてもらいますよ」
 いつの間にか背後に回りこみ、手に取るように勧められる。実際に手にとって見ると、なるほど確かに品質は悪くはなさそうだ。
「ちょっと待ちなよ」
 購入する気になりかけていたところに声をかけられ、振り返ると学園の制服を着た女の子が立っていた。
「さっき街中の商店街を見て着たけど、全部セットで銀貨85枚くらいで売ってたわよ」
 その言葉に商人がどんな顔をするのかと思ってみて見ると‥‥。
「そうですかい。そりゃいい情報ありがとうございます」
 情報を貰ったことに素直に礼を述べるその顔はやはり笑い顔のままだった。
「それならこっちも負けてられませんね。銀貨80枚でどうです?」
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